【年25万円】「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」は誰に出る?会社負担を解説!

技術者を採りたいと考えて東京都の「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」に行き当たったものの、会社に何が戻り、何を負担するのかが読み取れないまま止まっていませんか。

本記事では、2026年10月時点の都の公表内容をもとに、公式HPの内容をかみ砕いてご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください!

この記事でわかること

  • どういうときに、誰の奨学金へいくら出る制度なのか
  • 会社が負担する額と、求人広告や採用サイトの費用の扱い
  • 応募が来ないままでは、この制度のお金も動かないこと

東京都には、採用に使える制度がほかにもあります。都の制度だけで23件、区市町村の制度まで含めると108件あるので、見比べたい方は自治体別に整理した記事からどうぞ。

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※本記事は各自治体公式ページの内容を元に、「より分かりやすく」を趣旨にまとめさせていただいたものです。記載の内容については、一切の責任を負いかねますので、必ず申請前には各自治体の担当窓口までご相談いただきますようお願いいたします。

中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業の概要

東京都の公式サイトにある「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」の報道発表ページ。登録企業募集の見出しの下に、対象企業を「建設・IT・ものづくり分野の中小企業等」とする記載と、奨学金貸与団体へ流れる事業スキームの図が並んでいる

出典: 東京都「令和8年度『中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業』 登録企業を募集します!」のページ(2026年10月時点)

「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」は、奨学金を借りている大学生等を技術者として採った都内の中小企業に使える制度です。在籍1年ごとに、会社と同じ額を都が負担し、本人の奨学金の返還に充てます。都が持つのは1人あたり年25万円までで、修士相当以上の学位を持つ人を採る枠では年37.5万円です。

補助金名 令和8年度 中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業
相談先 公益財団法人東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課(電話: 03-5211-1080)。事業説明は事務局(電話: 03-6698-5102)
補助対象 専用枠で採った技術者の奨学金の返還費用。財団が奨学金の貸与団体へ直接支払う
補助上限(補助率) 1人あたり年10万円・24万円・50万円から1つ(修士相当以上の学位を持つ人を採るときは年75万円も選べる)。会社と都が2分の1ずつ・最大3年・1社1年度3名まで
期限 会社の登録は令和8年12月17日(木)17時必着。学生の登録は採用日より前(令和9年3月12日17時必着まで)。専用枠での採用は令和9年4月1日まで

注意したいのは、求人広告や採用サイトなど、人を集めるための費用には使えないことです。お金が出る先は奨学金の返還だけで、都が負担する分も会社には入らず、財団から奨学金の貸与団体へ直接支払われます。

対象は建設・IT・ものづくりの都内中小企業

登録できるのは、本社か主たる事業所が都内にあり、採った人を都内の事業所で働かせる中小企業です。会社の業種と採る人の職種、この2つがそろって初めて対象になります。

業種は日本標準産業分類で決まり、建設業、製造業、情報通信業のうち情報サービス業とインターネット附随サービス業、技術サービス業のうち建築設計業と測量業です。いくつかの事業を営む会社は、主たる事業で判断します。

職種は厚生労働省編職業分類の「02 研究・技術の職業」で、開発技術者や製造技術者、建築・土木・測量技術者、情報処理・通信技術者などが当てはまります。製造業の会社でも、製造工や機械工などの職人として採る人は対象外です。

このほか、就業規則を作って労働基準監督署に届け出ていること(従業員10人未満の事業場は定めていれば足ります)、都税の滞納がないこと、過去5年間に重大な法令違反がないことなどが要件です。

中小企業者の条件は、都の事業の「よくあるご質問」に業種別の数字で載っています。資本金と従業員数のどちらか一方が収まっていれば中小企業者です。

業種分類 資本金の額または出資の総額/常時使用する従業員の数
建設業・製造業・インターネット附随サービス業 3億円以下/300名以下
情報サービス業・建築設計業・測量業 5,000万円以下/100名以下

小売や飲食、介護、運輸が本業の会社のように、業種や職種でこの制度から外れた方は、ほかの枠を探す前に、国の助成金と自治体の補助金の全体像を見ておくと探す範囲を絞れます。

参考記事:『【国と自治体】採用に使える助成金と補助金は?自社が対象かの見分け方を徹底解説!』

補助が出るのは技術者が1年在籍した場面だけ

この制度でお金が出るのは、専用枠で採った技術者が、採用日から1年続けて在籍したときだけです。2年、3年と在籍が続けば節目ごとにもう一度出て、最大3回です。専用枠とは、この支援の対象になることと採る人数を先に示して出す、本事業専用の正規雇用の技術者の求人です。

額は、1人あたりの年額を登録の申込時に選びます。採る人が修士相当以上の学位を持つときだけ、年75万円の枠も追加で選べます。会社と都が2分の1ずつ持つので、会社が出すのは選んだ額の半分です。

1人あたりの年額 会社の負担(年額)/3年間の助成額
年10万円 年5万円/30万円
年24万円 年12万円/72万円
年50万円 年25万円/150万円
年75万円(修士相当以上のみ) 年37.5万円/225万円

奨学金の返還残額が選んだ額より少ない年は、残額をもとに計算します。例えば年50万円を選んだ会社で、採った人の返還必要額が499,900円なら、千円未満を切り捨てた499,000円の2分の1、249,500円が、その年度に会社が財団へ払う額(制度では「出えん金」と呼びます)です。

お金の流れは次のとおりです。1年たつと社員本人が財団へ申請し、財団から会社へ出えん金の請求が届きます。会社が期日までに払うと、財団が同じ額を負担し、原則として繰上返還の形で奨学金の貸与団体へ直接支払います。

専用枠で採れるのは1社1年度3名までです。選んだ額は原則として変えられず、専用枠で採る人数も登録後は変えられません。選んだ額は、入社前に本人へ伝えて同意を得ておく必要があります。

途中で辞めるなどして要件を外れると、その時点で助成期間は終わります。社員本人による1回目の申請は、採用日から満1年を過ぎた日から翌々月の月末までで、期日を過ぎた場合もそこで終わります。

逆に、次の場面では出ません。

  • 正社員の募集で、求人媒体に広告を出した
  • 採用サイトや採用動画、パンフレットを作った
  • 採用活動の代行を外部に頼んだ
  • すでに入社している社員の奨学金を、会社が返した

この制度が支えているのは、採った技術者が辞めずに働き続けることです。外れる4つのうち3つは人を集める費用で、お金が出るのは在籍が1年、2年、3年と続いた節目だけです。都が出しているのは募集の費用ではなく、定着へのお金です。

登録は「採用日の前」・申請は「1年後」

順番は、採用日を境に前と後ろに分かれます。会社の登録も相手の学生の登録も、採用日より前に済ませておく必要があります。

会社の登録申込は令和8年12月17日(木)17時必着で、郵送かJグランツで出します。書類は5点です。登録が済むと専用枠で求人を出せるようになり、内定を出したら入社日の前までに財団へ内定報告を出します。

採用日から原則1か月以内に、採用報告と育成計画書を出します。専用枠で採れるのは令和9年4月1日までで、ここでいう採用日は初出勤日ではなく、入社日や雇用契約の開始日です。

相手の学生も、この事業に登録している必要があります。対象は日本学生支援機構の第一種・第二種奨学金などを借りている、大学(短大を除く)や大学院、高等専門学校の専攻科などの学生と卒業生です。卒業した人には年齢や卒業からの年数の条件があり、専修学校の学生と卒業生は登録できません。

登録した会社の企業情報と求人情報は、大学生等向けの専用ウェブサイトで無料で発信されます。奨学金を返していく学生から見れば、入社後の返還を会社と都が支えると最初から示された求人です。ただし事務局は、会社と学生の引き合わせまではしません。

内定を出す相手が登録済みかは、採用日より前に確かめる

採用日までにこの事業へ登録していない人は、入社後に条件がそろっても対象になりません。学生の登録受付は令和9年3月12日17時必着までで、期間を過ぎると申し込めなくなります。

品川区と世田谷区は会社の負担に上乗せがある

会社が財団へ払う出えん金には、区が助成を上乗せする例があります。品川区と世田谷区では、会社が払った負担分の一部が区から戻ります。

品川区の「品川区中小企業の人材確保に向けた奨学金返還支援助成金」は、会社の負担が年5万円なら2万円、年12万円なら6万円、年25万円なら12万円、年37.5万円なら18万円を、採った1名ごとに助成します。1年度あたり9名分までです。

区内に本社か主な事業所がある中小企業者が対象で、みなし大企業は外れます。出えん金を払い終えてから区へ申請する順番で、令和8年度は令和8年3月1日から令和9年2月26日までに払い終えた出えん金が対象です。申請は令和9年2月26日(金)午後5時必着までです。

世田谷区の「世田谷区中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業補助金」は、都の事業に登録している区内の中小企業に、会社の負担額の2分の1を補助します。1名につき1年で2.5万円から18万7千5百円までで、毎年度、区への申請が要ります。

世田谷区も出えん金を払ってから申請する順番で、受付は令和9年3月26日(金曜日)までです。申請受付順で、予算がなくなり次第終わります。自社の所在地の区市町村に同じような上乗せがあるかは、都の事業に登録する前に窓口で確かめておくと安心です。

まずは補助金活用の前に、「どう応募を獲得するか?」を考えよう!

奨学金の返還を会社と都で支えられると知って、求人の目玉にしようと考えている方もいると思います。会社も都も、お金を出すのは採った技術者が1年在籍してからです。

専用枠の求人を出しても応募が来なければ、年50万円の枠を選んでいても1円も動きません。額を選ぶより先に、どう応募を獲得するかは今から組み立てておけます。

採用活動は、もう「片手間」では回りません…

その「どう応募を獲得するか」は、いまは空いた時間で片付く話ではなくなっています。採れる人そのものが減って、残った人の取り合いになっているからです。

①若い人は都市部に集まり、取り合う相手が増える

東京圏に入ってくる20〜24歳は、2025年で8万443人です。いっぽうで15〜64歳の人口は7329万人で、1年に26万5千人減っています。近隣の会社だけでなく、東京圏に集まる会社どうしで同じ層を取り合います。

参考サイト:『総務省「人口推計」(2026年3月1日現在・確定値)』『総務省「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」(日本人移動者)』

②求人は求職者の2倍を超え、応募は取り合いになる

実際、東京都の新規求人倍率は2026年7月時点で2.09倍です。ひと月に新しく出てくる求人だけで、新たに仕事を探し始めた人1人あたり2件を超えます。取り合いに負ければ、人は入ってきません。

全国で正社員が足りないと答えた企業は51.3%です。建設では66.0%、運輸・倉庫では65.6%で、業種によっては3社のうち2社が足りないと答えています。同じ求人を同じように出していては、この取り合いからは抜けられません。

参考サイト:『厚生労働省「一般職業紹介状況」(2026年7月・季節調整値・就業地別。都道府県別はJILPT公表値)』『帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」』

③仕事はあっても人がいない、で終わってしまう

人手不足をたずねた調査では、たとえば「工事案件はあるが、原材料の高騰と人を集めることが困難で、受注したくてもできない状況」(土木建築サービス)という声が出ています。採れないことが、そのまま仕事の取りこぼしになります。

採れないあいだにも、いま居る人が辞めることはあります。「1人採れれば足りる」と構えると、辞めた分を埋めるだけで終わります。募集は、事業を続ける限り止まりません。採用は片手間の仕事ではなく、会社を続けるための経営戦略です。

参考サイト:『帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」』

支援から3か月で、応募が17人集まりました

地方採用ワークスでご支援した例を1つご紹介します。

岐阜県大野郡白川村の、従業員20名ほどの総合建設会社様では、支援開始から3か月で応募が17人、うち3人の内定に至りました。

足りないと答えた企業が66.0%に上る建設で、岐阜県内でも採用が厳しい立地です。同じ結果をお約束できるものではありませんが、募集の出し方から設計し直せば応募が動く例はあります。

地方採用ワークスは、都市部より母数が少ない地方の採用を専門に、数多くの企業様をご支援してきた会社です。地方の企業が中心ですが、都市部の企業様からのご依頼もいただいています。採用ブランディングの設計から採用サイトの制作、応募を獲得したあとの一次面接やフォローまでをご支援しています。

いまの状況をお聞かせいただければ、どう応募を獲得するかの設計から、ご一緒に整理します。まずはお気軽にご相談ください。

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