【全27件】「奈良県」で採用に使える補助金は?対象の費用と申請の条件をまとめて紹介!

求人広告の掲載料と人材紹介の手数料に、半分でも補助が出ないか。そう考えて奈良県のページを開き、市の商工の窓口へ電話をかける……という段階でしょうか。奈良県内でこの動き方をすると、「その方はいま何年目ですか」と聞かれる枠に何度もぶつかります。

制度が少ないからではありません。奈良県内の枠は、採用にかかった費用ではなく、採った人が残ったかどうかにお金を付ける形のものが多いからです。

以下は2026年8月時点で県と市町村が公表していた内容です。まず、何件あるのかから見ていきます。

この記事でわかること

  • 奈良県内で採用まわりの枠として内容を確認できたのは何件で、県と市町村にどう分かれるのか?
  • そのうち何件が、採用や賃上げから1年たった時点を交付の条件か返還の事由に置いているのか?
  • 市町村の枠の大半を占める企業立地の雇用奨励金は、人を採るだけで対象になるのか?
  • 採用の費用そのものに費目名がある枠は何件で、どの自治体にあるのか?
  • 求人広告を対象外と書いた枠は、どんな理由で外しているのか?

個々の申請の段取りは、制度ごとの記事のほうに置いています。書き手は株式会社リーピーが運営するメディア「地方採用ワークス」です。

県と市町村で拾えたのは27制度

県の産業部と福祉部局のページ、市町村の商工・雇用のページ、県が公開している市町村別の企業立地ガイドを順にたどりました。採用・人材確保に関わる枠として、2026年8月時点で内容を確認できたのは27件です。

区分 数と内訳
制度の合計 27件
県の枠(会社が受け取る) 7件
市町村の枠 18件(採用の費用に費目名がある3件と、企業立地に付く雇用の枠15件)
登録型(会社にお金は来ない) 2件
枠を確認できた市町村 16市町村
奈良県の市町村数 39市町村(12市15町12村)

27件のうち10件は、採用や賃上げから1年たった時点で初めて額が固まる枠です。この数え方が奈良の特徴で、記事の中盤はここを軸に進みます。

国の助成金は、この27件とは別の枠組みで動きます。窓口も、動ける時期の決まり方も重なりません。国の枠から先に見ておきたい方は、こちらからどうぞ。

参考記事:『採用で使える助成金と補助金

数えたのは会社が受け取る枠

数え方を先に断っておきます。1件と数えたのは、採用・人材確保・雇用の継続を目的か費目に持つ枠のうち、事業者・法人の側が関わるものに限りました。

市町村の雇用促進奨励金も、この数え方では27件の中に入ります。記事の後半に大和高田市や天理市の名前で出てくる枠のことです。対象になるきっかけは企業立地ですが、交付を受けるのは事業者で、交付の条件は雇った人が市町村内に住んで働き続けたかどうかです。

目的も費目も雇用に向いているので、外す理由がありません。同じ条例の中にある事業所設置や設備投資の枠は、雇用を見ていないので数えていません。市町村ごとに雇用の枠を1件と数えて、15件になりました。この結果、生駒市はこの記事の数え方で3件になります。

生駒市の3件は、採用の費用に費目名がある「人材確保等総合支援事業補助金」と「オフィス等開設支援事業補助金」、それに企業立地に付く雇用促進補助金です。

登録型の2件は、会社にお金が渡りません。「移住支援金支給対象法人」は、支援金を受け取るのが移住した本人です。県のページも「移住者に対しての支援金は国・県・市町村の負担となり、法人の費用負担はございません」と書いています。「地方就職支援金」も、面接の交通費16,000円が渡るのは学生の側です。

それでも数に入れたのは、移住支援金は会社が先に対象法人として登録しないと求職者の側が制度を使えず、地方就職支援金も勤務地や雇用条件など就業先の要件を満たす会社でなければ支給されないからです。会社の口座に入る枠を探しているなら、この2件は先に外して25件で読んでください。

県の7件を名前で並べる

県の枠は、所管する課も柱も違うところに散らばっています。名前で並べると次の7件です。

県の枠 何に出るか
中小企業等賃上げ促進事業給付金 賃上げを行った従業員1人あたり5万円
中小企業等のプロフェッショナル人材確保支援事業補助金 県のプロ拠点と提携する人材紹介会社に払った紹介手数料
中小企業等の副業・兼業プロフェッショナル人材活用促進事業補助金 初めて副業等人材を使う場合の紹介手数料と本人への報酬
奨学金返還支援事業補助金 会社が従業員へ支給または代理返還した奨学金の返還額
外国人材定着支援事業補助金 外国人材に行う日本語研修の講師謝金・旅費・外部委託費など
育児休業取得促進事業補助金 育児休業給付金への上乗せ支給(令和8年度をもって廃止)
中小企業賃上げ環境整備支援補助金 賃上げに向けた設備投資や広報費(求人広告は対象外)

7件のうち、この記事でまだ扱っていないのが「外国人材定着支援事業補助金」です。県内に事業所を持つ中小企業や監理団体・経済団体が、外国人材へ日本語研修を行う場合の枠で、補助率2分の1以内・1事業者あたり上限20万円。

対象経費は講師の謝金と旅費、消耗品費、日本語研修の外部委託費、研修会場の使用料です。総受講時間が20時間以上あること、受講生に費用を負担させないこと、入国後講習ではないことが要件に並びます。対象になる従業員の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」の3つです。

市町村の18件は16自治体に散る

市町村の側も、名前で並べておきます。県が公開している市町村別の企業立地ガイドと、各市の産業・企業立地のページから読み取れたのは、16市町村の18件でした。

市町村 事業者の側が関わる枠として確認できた制度
奈良市 サテライトオフィス等設置推進補助金
生駒市(3件) 人材確保等総合支援事業補助金/オフィス等開設支援事業補助金/雇用促進補助金
大和高田市 雇用促進奨励金
大和郡山市 雇用促進奨励金
天理市 雇用促進奨励金
橿原市 雇用促進奨励金
桜井市 雇用奨励金
五條市 雇用促進奨励金
御所市 雇用促進奨励金
香芝市 雇用促進補助金
宇陀市 雇用促進奨励金
川西町 雇用奨励金
三宅町 雇用促進奨励金
田原本町 雇用促進奨励金
明日香村 雇用促進奨励金
広陵町 雇用促進奨励金

ここに名前が出ていない23市町村については、雇用に関わる枠を確認できませんでした。確認できなかったのと、制度が無いのとは別です。

葛城市・山添村・平群町・安堵町・高取町・吉野町・大淀町・下市町・黒滝村・天川村・十津川村・下北山村・曽爾村は、固定資産税の優遇や制度融資、村内で起業する人への支援はあるものの、雇用に対して交付される枠は載っていませんでした。

三郷町・斑鳩町・御杖村・上牧町・王寺町・河合町・野迫川村・上北山村・川上村・東吉野村の10町村は、県のページにリンクそのものがありません。

県が並べる人材確保は8事業

県が自分でどう並べているかも見ておきます。県産業部の産業施策集は「奈良の成長に必要な8つの柱」の1番目に「時代に即した人材確保の展開」を置き、そこへ8つの事業を並べています。

事業名 県からの支援種別
中小企業等賃上げ促進事業 給付金
社員・シャイン職場づくり推進事業 企業PR
県内就労あっせん事業(プロフェッショナル人材戦略拠点) 人材確保支援、補助金
県内企業魅力発見事業 人材確保支援、企業PR
奨学金返還支援事業 補助金
奈良県就職支援サイト「ジョブならnet」 人材確保支援
ワークチャレンジ事業 人材確保・育成支援
ジェンダーギャップ解消等を通じた社会づくり事業 セミナー、ワークショップ

8事業のうち、会社にお金が渡る種別が付いているのは3事業です。残る5つは登録・PR・あっせん・研修・セミナーで、費用の補助ではありません。

前の表に並べた県の7件のうち、この柱に出てくるのは3件だけです。残る4件は副業・兼業、外国人材、育児休業、生産性向上と、別の柱や別の課の下にあります。人材確保の名前が付いたページから入るより、費用の名前(紹介手数料・求人広告・奨学金)から探すほうが早いはずです。

いま出せるのは8件で2件は閉じている

27件のうち、日付で受付が区切られているのは県の7件と市町村の3件です。2026年8月の時点で開いていたのは8件、今年度分が閉じていたのは2件でした。残る17件は、日付ではなく別の条件で開き閉じします。

2026年8月時点の受付
中小企業等賃上げ促進事業給付金 令和8年8月3日から10月31日まで
中小企業等のプロフェッショナル人材確保支援事業補助金 令和8年4月1日から先着順
中小企業等の副業・兼業プロフェッショナル人材活用促進事業補助金 同じく令和8年4月1日から先着順
奨学金返還支援事業補助金 令和9年3月25日まで
外国人材定着支援事業補助金 申請額が予算の上限に達した時点で終了
育児休業取得促進事業補助金 令和8年12月28日必着。令和8年度をもって廃止
生駒市人材確保等総合支援事業補助金 令和8年12月25日まで
奈良市サテライトオフィス等設置推進補助金 期間の区切りはない
中小企業賃上げ環境整備支援補助金 令和8年7月31日で受付終了
生駒市オフィス等開設支援事業補助金 令和8年7月24日で受付終了

予算に達した時点で閉じる枠がある

表の日付は、いちばん遅い日を示しているだけです。県の「プロフェッショナル人材確保支援事業補助金」は先着順で、予算上限に達した時点で募集が停止します。「奨学金返還支援事業補助金」も、募集企業数の欄に「予算上限に達し次第、募集を終了します」と書かれています。

外国人材定着支援事業補助金と生駒市の人材確保等総合支援事業補助金も同じ書き方です。

育児休業取得促進事業補助金に至っては、県のページが令和8年度をもって廃止する旨と、現在多くの申請をいただいており予算額に達し次第受付を終了する旨を並べて掲げています。日付より先に予算で閉じる枠のほうが、奈良では多数派です。

表の日付を締切だと思って年明けに動くと、その前に閉じている枠が出てきます。狙う枠が決まったら、受付がまだ続いているかを担当課へ先に聞いておかれるとよいでしょう。

申請の条件で先に外れる枠もある

受付が開いていても、申請の条件で外れる枠があります。先に3つ挙げておきます。

  • 「奈良市サテライトオフィス等設置推進補助金」は、県内に本社も事業所も無い県外のIT・クリエイティブ企業が対象です。県内の会社はこの条件を満たせません
  • 県のプロフェッショナル人材確保支援事業補助金は、県のプロ拠点と提携する人材紹介会社に払った手数料だけが対象です。自分で見つけた紹介会社に払った分は入りません
  • 市町村の雇用促進奨励金15件は、すべて企業立地が条件の起点です。新設・増設・移転と、数千万円から数億円規模の投下固定資産がセットになっています

この3つに当てはまらない会社が正面から狙えるのは、県の枠と生駒市の2件です。具体的には、県の「中小企業等賃上げ促進事業給付金」・プロフェッショナル人材確保支援事業補助金・奨学金返還支援事業補助金と、生駒市の人材確保等総合支援事業補助金・オフィス等開設支援事業補助金になります。

自社がこの3つのどれかに当たるなら、先を読み込むより、当たる5件だけに絞って時間を使うほうが回り道になりません。

会社にお金が来ない2件は別に置く

登録型の2件は、この受付の表に入れていません。移住支援金支給対象法人の登録も、地方就職支援金も、会社の口座に振り込まれるものがないからです。

登録そのものは随時できます。移住支援金の対象法人になると、県のマッチングサイト「ジョブならnet」へ企業情報と求人情報を掲載する側にまわり、登録も求人掲載も無料です。募集の費用を軽くする効果はありませんが、東京圏からの応募を増やすきっかけにはなります。

採用の費用に届くのは4制度

ここからは、採用の費用そのものに費目名がある枠を見ます。4件で、県が1件、生駒市が2件、奈良市が1件です。

制度 採用に関わる対象経費
中小企業等のプロフェッショナル人材確保支援事業補助金 県のプロ拠点と提携する人材紹介会社への紹介手数料
生駒市人材確保等総合支援事業補助金 求人広告・求人サイト等への掲載費用、人材紹介サービス利用費、採用代行サービス利用費、就職フェア等への出展費
令和8年度生駒市オフィス等開設支援事業補助金 求人活動費(人材情報サイト・雑誌・新聞等への求人広告掲載、職業紹介事業者への人材紹介依頼、求職者情報提供サービスの利用)
奈良市サテライトオフィス等設置推進補助金 求人活動費(人材情報サイト・雑誌・新聞等への求人広告掲載、職業紹介事業者への人材紹介依頼、求職者情報提供サービスの利用)

プロ人材の紹介手数料に70万円

県の中小企業等のプロフェッショナル人材確保支援事業補助金は、人材紹介の手数料に出る枠です。補助率は2分の1以内で、上限はプロ人材を雇用する場合に70万円、副業・兼業として活用する場合に15万円です。

対象になるのは、奈良県プロフェッショナル人材戦略拠点と提携する人材紹介会社に支払った手数料に限られます。副業・兼業の側には別枠もあり、初めて同拠点を通して副業人材を使う場合は、補助率8/10以内・上限50万円で、紹介手数料に加えて人材への報酬まで対象になります。

手続きで先に知っておきたいのは、申請書の入手方法です。県の案内ページは「申請にかかる様式は、ご相談いただいた際に提供します」と書いています。要綱と募集要領は誰でも読めますが、様式だけは公開されていません。書き始めるには、先に電話が要ります。

受付は令和8年4月1日からの先着順で、雇用または活用開始日の15日前までに申請します。使うと決めているなら、提携している紹介会社かどうかの確認と合わせて、一度かけておくほうが早いはずです。

生駒市は求人広告と紹介料に出る

生駒市の人材確保等総合支援事業補助金は、採用支援・育成支援・マッチング支援の3本立てで、採用活動に使えるのはこのうち採用支援補助金です。

対象経費として案内のQ&Aが挙げているのは、求人広告・求人サイト等への掲載費用、人材紹介サービスの利用費、採用代行サービスの利用費、就職フェア等への出展費(交通費・旅費等を除く)の4つです。補助率は2分の1以内、上限は50万円で、条件に該当すると100万円になります。

この枠には、県内の他のどこにも無い一文があります。市内の事業所で就業する人材の採用を目的とした活動であれば、実際に採用に至らなかった場合も対象になる、という書き方です。

上限を50万円から100万円へ引き上げるのは、市の実施要領の別表に並ぶ認証・登録制度の取得です。その21制度の中身と、4つの費目それぞれの読み方、電子申請と締切のずれまで確かめたい方は、この制度だけを扱った記事からどうぞ。

参考記事:『「生駒市人材確保等総合支援事業補助金」は採用に使える?対象の費目と申請の流れを解説!

もう1件の生駒市オフィス等開設支援事業補助金は、交付要綱の別表に「エ 求人活動費」という区分があります。人材情報サイト・雑誌・新聞等への求人広告の掲載費、職業紹介事業者に人材紹介を依頼して雇用関係を成立させるための費用、求職者情報提供サービスの利用料が並びます。補助率2分の1で最大100万円です。

ただし条件の起点は、市内にオフィス等を新設または増設することです。求人だけを出したい会社は、この枠の対象にはなれません。申請受付は令和8年5月18日から7月24日までで、すでに終了しています。先着順ではなく、申請期間の終了後に加点方式で採点し、合計点の高い順に交付を決める形です。

奈良市はサテライトオフィスに限る

奈良市のサテライトオフィス等設置推進補助金も、補助対象経費に求人活動費が入っています。中身は生駒市オフィス等開設支援事業補助金の別表とほぼ同じ文面です。補助率は2分の1、上限はオフィスの面積区分で30万円から500万円、本社を設置する場合は100万円が加算されて最大600万円になります。

ただし対象は、県内に本社も事業所も無い県外のIT・クリエイティブ企業に限られます。交付申請の時点で3年以上継続して事業を行い、従業員を5人以上雇用していることも要件です。同じ「求人活動費」でも、奈良市の枠は県内の会社には開いていません。

なお同市の産業政策課が出している人材確保支援事業とDX人材養成事業は、会社が申請する補助金ではなく、業務委託の受託事業者を募る公募です。

同じ「人材確保」の名前でも、会社が申請する側なのか受託する側なのかで意味が反転します。奈良市のページを開くときは、まず自社がどちらに立っているかを確かめる必要があります。

採用サイトの制作費に費目名は無い

一方で、27件のどこにも正面から出てこない費用があります。自社の採用サイトやホームページの制作費、採用動画やパンフレットの制作費です。

採用サイトの制作費に費目名を置いた枠は、確認できた範囲では県内にありませんでした。近いところにあるのは県の「中小企業賃上げ環境整備支援補助金」の広報費ですが、こちらは目的要件が商品・サービスの広報にあり、採用は入りません。詳しくは後半で見ます。

生駒市の採用支援補助金についても、要綱・実施要領・Q&A・チラシ・各様式のどこにも採用サイトの制作費の名前は出てきません。同時に、対象外として名指しもされていません。名前が無いものは、対象とも対象外とも書かれていない状態です。

制作を含む見積を取る前に交付要綱を開いて、商工観光課へ一度電話で確かめておくと安心です。

10制度は採ったあとの1年を見る

ここからが、奈良の枠に共通する形です。採用や賃上げの時点では額が決まらず、そのあと1年の状態を見てから固まる枠が10件あります。県に2件、市町村に8件です。

制度 1年で差が出る場面
プロフェッショナル人材確保支援事業補助金 雇用開始日から1年以内の離職・配置転換で返還の対象
中小企業等賃上げ促進事業給付金 賃上げ後1年間、賃金を引き下げずに雇用すること
市町村の雇用の枠8件(大和高田市・大和郡山市・天理市・五條市・宇陀市・川西町・三宅町・広陵町) 1年以上の継続雇用が交付の条件

市町村の8件は、企業立地の話とまとめて後半の章で扱います。ここでは県の2件と、会社にお金は来ないものの1年の状態で結果が変わる登録型2件を見ます。

プロ人材は1年以内の離職で返す

先ほどの紹介手数料の枠には、募集要領の対象経費の表に注記が付いています。プロ人材が雇用開始日から起算して1年以内に離職または配置転換された場合は、事業の廃止または補助金の返還の対象になる、という内容です。

ただし例外も定められていて、雇用開始日から6か月を経過した日以降に、明らかに従業員の責により解雇または自己都合により退職した場合は除かれます。半年を境に、会社が背負う側と背負わない側が分かれます。

配置転換が並んでいる点も見落としやすいところです。専門人材として採った人を、1年以内に別の部署へ動かすと、離職と同じ扱いになり得ます。紹介手数料の半分を県に見てもらうなら、最初の1年の配置まで含めて決めておく必要があります。

賃上げの給付金は1年下げられない

県の中小企業等賃上げ促進事業給付金は、賃上げを行った従業員1人あたり5万円を支給します。上限は1事業者あたり40人分で200万円です。要件は、令和8年3月の賃金と比べて、令和8年4月から9月までに3.9%以上増加させること。正規雇用は基本給、非正規雇用は時間給を引き上げます。

県のページには、支給要件のすぐ下に一文が添えられています。賃上げ後1年間は賃金を引き下げることなく雇用してください、という念押しです。

申請受付は令和8年8月3日から10月31日まで。先着順ではなく、締切後に審査を行い、支給決定は12月ごろからです。

県全体で20,000人が上限とも書かれています。県や国の認証・表彰を受けている事業者が優先されるとも書かれていて、例として県の社員・シャイン職場づくり推進企業登録や国のえるぼし認定が挙がっています。

給与の支給額そのものの負担を軽くする補助金を受けていると対象外になります。キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースや、生駒市賃上げ促進給付金が例に並びます。同じ賃上げでも、機械の導入や教育訓練を伴う助成金なら重ねられる、という区別の仕方です。

令和8年3月と、4月から9月の賃金台帳を並べて、3.9%以上の引き上げになっている従業員が何人いるかを数えれば、その場で見込み額が出ます。受付は10月31日まで開いていますから、台帳を先に開いておかれるとよいでしょう。

移住と就職の支援金は本人が返す

登録型の2件も1年経ったかどうかで扱いが決まりますが、返すのは会社ではなく採用された本人です。

移住支援金は、東京23区の在住者または通勤者が県内へ移住し、対象法人の求人に就業したときに支給されます。単身60万円、世帯100万円で、18歳未満を帯同する場合は加算があります。会社の費用負担はありません。

ところが県のページの留意事項に、受給者が申請日から1年以内に離職した場合や、5年以内に支給市町村から転出した場合には返還を求められる、と書かれています。

地方就職支援金のほうは、東京圏の大学等を卒業して県内に就職する学生へ、採用面接等の往復交通費を16,000円を上限に支給する枠です。返還の条件はこちらのほうが細かく、就業から1年以内に辞すと全額返還になります。

退職日から3か月以内に県内の別の企業へ就職する場合は除かれます。転入日から3年未満で転出した場合も全額、3年以上5年以内なら半額です。

この地方就職支援金を実施しているのは、39市町村のうち天理市・桜井市・五條市・生駒市・宇陀市の5市だけです。

会社の帳簿には出てこない話ですが、採った人が入社1年で辞めると、その人に返還が発生します。募集の受け皿をどう作るかが、会社の外側にも影響する形だと思われます。

奨学金の枠は2年待って動き出す

同じ「あとから確定する」でも、単位がひときわ長い枠が1件あります。県の奨学金返還支援事業補助金です。

申請から補助の開始まで2年空く

この補助金は、従業員の奨学金返還を支援する制度を設けた県内中小企業に対し、その負担額の一部を補助するものです。会社は先に「補助対象候補者」として県の認定を受けます。

申請の要件に、ほかの枠では見ない一文があります。申請日の属する年度の翌々年度に、支援対象従業員になり得る者の採用を予定していること。令和8年度に申請するなら、想定しているのは令和10年度に入社する人です。

産業施策集のスケジュール図も、そのとおりに4段に分かれています。令和8年度に申請と認定、令和9年度に採用活動、令和10年度から補助の開始で、そこから最大10年です。申請書を出した年に振り込まれるものは、1円もありません。

代わりに、認定日の属する年度を含めて12年間、登録が続きます。登録有効期間中は県のホームページで「奨学金返還支援制度導入企業」として紹介される仕組みです。補助金であると同時に、長期の掲載枠でもあります。

令和8年度に上限が10倍になった

この枠は令和8年度に大きく作り替えられました。県の産業施策集が新旧を並べています。

対象学歴 大学・大学院・高専 → 短大・専門学校を追加
補助上限 1社50万円 → 従業員1人あたり年10万円・最大5名・最大10年間で1社500万円
支給の方法 認定年度の5年後に一括 → 認定年度の2年後から最大10年間
手続 認定申請時に毎回書類一式 → 2回目以降は提出書類を簡素化

上限は1社50万円から500万円へ、10倍になっています。補助率2分の1は変わりません。会社が支給または代理返還した額の半分が、1人あたり年10万円を上限に戻ってくる形です。

一括支給から毎年の支給へ変わった点も効きます。以前は認定から5年待つ必要がありましたが、いまは2年後から動き始めます。待ち時間が3年短くなった代わりに、10年間の支給を管理し続ける形になりました。

対象は35歳未満の正社員に限る

従業員側の要件は次のとおりです。

  • 大学等を卒業していること
  • 支援計画書の提出日の属する年度の末日で35歳未満であること
  • 正社員(雇用期間の定めがない者)として採用されていること
  • 県内の事業所に勤務していること
  • 在学中に日本学生支援機構から奨学金を貸与された者であること
  • 個人事業主と同居している親族でないこと
  • 他の自治体から同じ趣旨の補助金等の支援を受けていないこと

会社側にも、就業規則または賃金規定等の文書で奨学金返還支援金の支給方法を明確に定めていることが求められます。雇用保険の適用事業主であること、県税を滞納していないことも要件です。

県内に本社を有する中小企業者であることが要件の柱にあり、風俗営業者でないこと、暴力団等の反社会的勢力と関係を有する者でないことも並びます。募集期間は令和8年4月1日から令和9年3月25日までですが、県のページは募集企業数の欄に「予算上限に達し次第、募集を終了します」と書いています。

制度を作ってから申請するのであって、申請してから作るのではありません。令和10年度の採用を見ているなら、今年度中に就業規則の側から手を付ける順番になります。

市町村の15件は企業立地に付いている

市町村の18件のうち15件は、企業立地の奨励制度に付いた雇用の枠です。県が「県内市町村による優遇制度」のページに39市町村を並べていて、そのうち29市町村ぶんはPDFが付いており、中身を読めます。

残る10市町村はリンクが無く、制度が無いのか掲載していないだけなのかは、このページからは分かりません。

大和高田市は1年続けて1人20万円

読み取れた15件のうち、8件が「1年以上」を交付の条件に置いていました。

市町村 交付の条件
大和高田市 開業日前後90日以内に市内在住者を新規常時雇用従業員として雇用し、1年以上継続雇用。1人につき20万円(限度額1,000万円・1回限り)
大和郡山市 操業開始前後6か月の間に、市内在住の新規雇用従業員を1年以上常用雇用。1人につき20万円(上限1,000万円)
五條市 1年以上の新規地元雇用者が5人以上の場合、1人につき50万円(限度額2,500万円)
宇陀市 事業を開始した日以後1年以上の雇用期間がある市内在住雇用者が3人以上。1人につき20万円(限度額300万円・1回限り)
川西町 町内居住者を1年以上雇用した場合、1人につき20万円(限度額500万円)
三宅町 町内居住者を1年以上雇用した場合、常用雇用者30万円・準常用雇用者20万円(10人まで)・短時間労働者10万円(10人まで)(限度額500万円)
広陵町 町内居住者を1年以上雇用した場合、常時雇用者20万円・準常用雇用者15万円・短期間労働者10万円(限度額500万円)

採用した月ではなく、1年たった時点で初めて数える設計です。募集にかけた費用は見ません。見るのは、その人がまだいるかどうかです。

残る7件(橿原市・桜井市・御所市・生駒市・香芝市・田原本町・明日香村)は「1年以上」の明示がなく、規定の期間や雇用期間等の条件と書かれています。天理市の数え方は次の節で見ます。

天理市は5人を超えた分から出る

同じ雇用促進奨励金でも、数え始める位置は市町村ごとに違います。天理市は、交付される年度の4月1日において過去1年以上雇用している常時雇用従業員のうち、5人を超える1人につき20万円と定めています。中小企業の場合は2人を超える1人につき20万円で、限度額は2,000万円です。

最初の数人分は出ず、その人数を超えた分だけが数に入ります。中小企業で3人採って1年続いたなら、対象になるのは1人分です。

橿原市も似た形で、操業開始日前90日から同日以後30日までの間に、市内在住の新規雇用従業員を規定の期間常用雇用従業員として3人以上雇用する場合に、1人につき30万円としています。3人そろわなければ、2人でも0円です。

生駒市の雇用促進補助金は市内新規常用雇用者1人につき40万円です。読み取れた範囲でこれを上回るのは、五條市と香芝市の1人50万円でした。

投下固定資産の下限が先に来る

ここまで読むと使えそうに見えますが、実際にはもう一段手前に壁があります。この型はすべて企業立地が対象の条件で、新設・増設・移転と、投下固定資産の下限がセットになっています。

天理市は投下固定資産総額1億円以上(増設は5,000万円以上、中小企業は1,000万円以上・増設は500万円以上)、五條市は投下・増加固定資産総額5,000万円以上かつ新規雇用者5人以上と定めています。

生駒市は新設なら土地を除く固定資産投資額2億円以上または用地等の面積1,500平方メートル以上、増設・貸工場の利用なら1億円以上または1,500平方メートル以上です。人を採るだけでは、この条件を満たせません。

つまり市町村の15件は、工場や事業所を建てる会社に向いた設計です。募集の費用を薄めたい会社が当たれるのは、県の枠と生駒市の人材確保等総合支援事業補助金・オフィス等開設支援事業補助金のほうだと思われます。

Tips|自社の市町村の枠にたどり着く順番

県の「県内市町村による優遇制度」のページから、自社の市町村のPDFを開きます。1つのファイルに複数の市町村のシートが入っていて、「(4)天理市」を開くと1つ目は大和高田市、天理市は3つ目です。下までたどれば読めます。リンクが無ければ、市町村名に「補助金 一覧」を足して担当課のページを探します。

求人広告を対象外と書いた枠もある

最後に、名前だけ見ると使えそうで、要領を開くと外れる枠を1件見ておきます。県の中小企業賃上げ環境整備支援補助金です。

県は求人広告を営業活動として外す

この補助金は補助率2分の1以内(小規模事業者は3分の2以内)、上限500万円・下限50万円で、県内では大きい部類に入ります。対象経費の1つに広報費があり、パンフレット・ポスター・チラシ等の作成費や広報媒体の活用費が並びます。

ところが公募要領の「対象とならない経費例」には、商品・サービスの宣伝広告を目的としない看板や会社案内パンフレットの作成と並べて、求人広告が挙がっています。求人広告は、単なる会社の営業活動として対象外とされています。

外れる理由が「採用だから」ではなく「単なる会社の営業活動だから」と書かれている点が、この要領の特徴です。広報費の説明にも「事業計画を実施する為の商品・サービスの広報を目的としたものが補助対象であり、単なる会社のPRや営業活動に活用される広報費は、補助対象となりません」とあります。

商品・サービスの名称も宣伝文句も付記されていないものは対象にならない、とも書かれています。なお申請受付は令和8年5月26日から7月31日までで、すでに終了しています。申請の前に商工会議所または商工会の伴走支援を受けて事業計画書を作る必要があり、相談の受付期限は原則7月24日でした。

広報費の欄に何が並んでいるかを数えるより先に、対象とならない経費例のページを開くほうが早いはずです。

ウェブサイトだけの申請はできない

同じ要領の広報費には、ウェブサイトについての条件も定められています。作ったあとに効く決まりまで含めると、次の4つです。

  • ウェブサイト作成や更新のみによる申請はできない。必ずほかの経費と一緒に申請する
  • 自社ウェブサイトを50万円(税抜)以上の外注費用で作成した場合、そのウェブサイトは処分制限財産に該当する
  • 処分制限財産の処分(補助事業目的外での使用、譲渡、担保提供、廃棄)には、奈良県商工会連合会の承認が要る。承認を得ずに処分すると、交付の取消しや返還の対象になる
  • ウェブサイトのSEO対策等で、効果や作業内容が不明確なものは対象外

ただし事業計画の目的を果たすために必要な改良や機能強化は、この「処分」には当たらないとも書かれています。

サイトの制作費だけを持ち込む形は、最初から想定されていません。補助金で作ったサイトは、作り直すときに承認が要る場合があると見ておきましょう。

対象は商品開発と販路開拓に寄る

市町村の側にも、広告宣伝費を持ちながら採用には届かない枠があります。

香芝市の商品開発・販路開拓等支援事業補助金は、対象経費に広告宣伝費があり、広告宣伝に関わるデザインの委託料、パンフレット・ポスター・チラシ等の作成費用、動画等のPRツール作成費用、その他事業実施期間中の広報活動に係る経費が並びます。

ただし補助対象事業は、商品開発・改良支援、販路開拓・拡大支援、首都圏PRの3つで、求人や採用の記載はありません。上限は事業ごとに10万円から25万円です。

奈良市の中小企業等新たな挑戦支援補助金も同じ向きです。開発費が補助対象経費総額の50%以上で、外注費と販路開拓費の合計が50%以内という配分が定められていて、採用の費用を主にした計画は作れません。補助限度額は通常枠30万円・重点支援枠50万円、補助率は3分の2です。

広告宣伝費があるからといって、求人広告が乗るとは限りません。目的要件が商品や販路にある枠では、費目名が近くても外れると見ておくのがよいでしょう。

奈良の枠は1年もった採用に出る

27制度のうち、求人広告の掲載料や人材紹介・採用代行の費用に費目名があるのは4件です。上限は70万円から500万円、補助率はどれも2分の1。県内の会社が正面から出せるのは生駒市の1件で、それも予算の範囲内の交付なので、要件がそろっても年度の途中で止まります。

27件のうち10件は、採用や賃上げから1年たった時点で額が固まります。市町村の15件も、対象になる起点は企業立地です。先に決めるのは媒体にいくら払うかではなく、入社1年目に誰が何を教えるかのほうだと思われます。奈良の枠も、応募者も、同じところを見ています。

私たちのような地方企業では、「採用はもうあきらめている」という会社も少なくないと思います。地方採用ワークスは、地方企業の採用を専門に、募集の露出から受け皿づくりまでを包括的にご支援しています。製造、建設、運送、医療、飲食など、人が採りにくいと言われる業種の現場を見てきました。

どこから手をつけるべきか、いまの状況をお聞かせいただければ一緒に整理します。まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人
【全27件】「奈良県」で採用に使える補助金は?対象の費用と申請の条件をまとめて紹介! | 採用補助金
たまちゃん

マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。

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