【保存版】シニア採用の進め方|人手不足の中小企業の現実解と注意点
「若い人を募集しても、応募がまったく来ない」——現場を抱える地方の中小企業ほど、この壁に突き当たっていると思います。若手の採用は限られた通勤圏の中での取り合い合戦になっており、条件面で大手に見劣りする会社ほど分が悪いのが実情です。
そこで現実的な選択肢になるのが、シニア採用です。65歳以上の就業者は2024年に930万人と21年連続で増え、いまや働く人の7人に1人が高齢者です(※4)。「働きたいシニア」は地方にも確実にいます。つまり、若手の奪い合いに全力を注ぎ続けるより、採れる母集団に目を向け直すほうが、人手不足の解決が早いケースがあるということです。<small>※4 引用:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(統計トピックスNo.146・2025年9月公表)。 https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics146.pdf </small>
ただし、シニア採用は受け入れ側の準備——業務の切り出し・体力面への配慮・短時間勤務の設計——がそのまま成否を分けます。この記事では、始める前の設計から求人方法・面接・定着までを順を追って整理します。
この記事でわかること
- シニア採用が人手不足の現実解になる理由
- 始める前に決めておくべき業務と労働時間の設計
- シニアに届く求人方法・媒体と求人票の注意点
- 面接・受け入れ・定着で気をつけることと助成金
シニア採用はなぜ人手不足の現実解になるのか
結論から言うと、シニア採用が有効なのは「競争率の低い母集団」と「経験による即戦力性」を同時に取りにいけるからです。シニア層は働く意欲があっても年齢で選択肢が狭まっており、受け入れ体制のある会社には応募が集まりやすい。加えて、経験を持つ人材は教育にかける時間と手間が小さく済むケースが多いのです。
若手の取り合い合戦から一歩外れる
地方の採用は、片道1時間・25〜30km圏内という限られた通勤圏の中で人材を取り合う構造です。若手はその中でも一番の激戦区で、給与や休日の条件勝負に持ち込まれると、体力のある大手に軍配が上がりがちです。
一方でシニア層は、「まだ働きたいのに、年齢を理由に応募先がない」という人が少なくありません。定年後の再雇用期間が終わった人、フルタイムは難しいけれど週3日なら働ける人。この層に間口を開いている中小企業はまだ少なく、競争相手が少ない場所で募集をかけるだけで、応募の集まり方は変わってきます。
経験活用で「教える手間」が小さく済む
もう一つの利点が、経験活用です。同業種の経験者であれば、仕事の段取りや安全への意識がすでに身についており、ゼロから教える場合と比べて立ち上がりが早い。人を教える余裕がない——人手不足の会社ほど、この悩みは深刻です。「採ってから育てる」余力のない会社にとって、経験を持つシニアは理にかなった選択肢だというわけです。
シニアの採用決定まで追えた記録ではありませんが、働き方の設計例として挙げられるものがあります。
弊社の支援先である岐阜県の運送会社では、パートの中型便ドライバー求人をシニア歓迎・実働最大5時間30分・週3日から勤務可・16時前終業という設計で募集しています。業務は5tトラックでの集荷・配送とフォークリフトでの積み下ろし。早く配送が終わった日でも最低5時間分の給与を補償する運用をセットにしました。
また福井県の梱包資材製造業では、「嘱託として75歳まで働ける」ことが、通勤圏の競合より高い水準の強みとして整理されています。
採用実績の数字より、この2つに共通する点に注目してください。どちらも「シニアを採ろう」という掛け声から始めるのではなく、勤務時間・業務範囲・雇用年齢という受け入れ側の設計を先に変えています。設計が変われば、求人票に書ける言葉が変わり、その言葉が届く相手が変わる。シニア採用は募集の工夫の問題ではなく、設計の問題だというのが弊社の考えです。
シニア採用を始める前に何を決めておくべきか
シニア採用でつまずく会社の多くは、募集の前の設計を飛ばしています。決めておくべきことは大きく2つ。「どの業務を任せるか」と「どんな労働時間で働いてもらうか」です。ここが曖昧なままだと、応募が来ても受け入れられず、早期の離職につながります。
任せる業務の切り出しと体力面への配慮
まず、社内の業務を棚卸しして、シニアに任せる業務を切り出します。ポイントは「若手と同じ業務をそのまま」ではなく、経験が活きる業務と体力面の負荷を分けて考えることです。
- 経験が活きる業務:検品・品質チェック、後進の指導、顧客対応、送迎、施設管理など
- 負荷を調整したい業務:重量物の運搬、長時間の立ち作業、深夜帯の勤務など
体力面は個人差が大きいため一律に決めつける必要はありませんが、負荷の高い業務を外す・分担する選択肢を用意しておくと、応募のハードルは下がり、入社後のミスマッチも防げます。
短時間勤務・週数日勤務など労働時間の設計
働き方の設計も、始める前に決めておきたい点です。シニア層は年金との兼ね合いや体力面から、フルタイムよりも短時間勤務・週3〜4日勤務を希望する人が多くいます。
「フルタイムでなければ困る」と間口を狭めるより、1日5時間×週4日の枠を2人分用意する、繁忙時間帯だけ入ってもらう、といった形に業務を組み替えるほうが、結果として人手は埋まりやすくなります。労働時間の柔軟さは、シニア採用における最大の武器の一つなんですよね。
シニアに届く求人方法・媒体はどれか
シニア採用は、若手向けと同じ媒体・同じ求人票では届きません。ハローワークと地元媒体を軸に据え、「シニア歓迎」が伝わる求人票へ書き換えることが基本線になります。
ハローワーク・シルバー人材センター・地元媒体を軸に
シニア層の仕事探しは、スマートフォンのアプリで完結するとは限りません。主な接点は次のとおりです。
- ハローワーク:シニア層の利用率が高い基本の媒体です。全国300か所のハローワークには、おおむね60歳以上の方を対象とした「生涯現役支援窓口」が設けられており、採用する企業側も相談できます(※1)。
<small>※1 引用:厚生労働省「生涯現役支援窓口事業」(2026年7月28日確認)。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43625.html </small>
- シルバー人材センター・地域の就労支援機関:短時間の仕事を探す層との接点
- 地元のフリーペーパー・折込求人:紙媒体の到達力が今も残る層です
- 知人紹介・元社員の再雇用:定年退職したOB・OGへの声かけ、取引先からの紹介
媒体の組み合わせ方は、採用活動の全体像から押さえておくと迷いにくくなります。
求人票の注意点──年齢の書き方と「歓迎」の見せ方
求人票で注意したいのが、年齢の表記です。募集・採用における年齢制限は、労働施策総合推進法により原則として禁止されています(※2)。年齢を条件として書けるのは、定年年齢を上限とする場合や、法令で年齢制限がある場合など、限られた例外事由に当てはまり、その理由を提示するときだけです。
そのうえで、「60代のスタッフが活躍中」「短時間勤務可」「重量物の運搬なし」といった、シニア層に「自分も応募していい」と伝わる具体的な情報を入れます。年齢を条件にするのではなく、働いている人の姿と働き方の柔軟さで間口の広さを見せるのが実務的な落としどころです。
<small>※2 事業主は労働者の募集・採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない(労働施策総合推進法第9条、同法施行規則第1条の3第1項。2007年10月1日施行)。例外事由は「定年年齢を上限として期間の定めのない労働契約の対象を募集・採用する場合」「法令の規定により年齢制限がある場合」「長期勤続によるキャリア形成を図る場合」など6つに限られ、該当する場合は理由の提示が必要。参考:ハローワークインターネットサービス「年齢制限該当事由について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/enterprise/age_limit.html </small>
面接から定着まで、受け入れで何に気をつけるか
採用して終わりではなく、定着して初めて人手不足の解決になります。面接での確認と、入社後の受け入れ設計をセットで考えておきましょう。
面接で確認しておきたいこと
シニアの面接では、経歴の確認よりも、働き方のすり合わせに時間を使うのが有効です。
- 希望する労働時間・勤務日数(無理のない範囲はどこか)
- 体力面で配慮が必要な業務はあるか
- これまでの経験のうち、活かしたいこと・もうやりたくないこと
- 年下の上司・先輩のもとで働くことへの受け止め
特に最後の点は、遠慮して聞かない会社が多いのですが、入社後の人間関係のつまずきを防ぐうえで大事な確認です。
再雇用・定着のポイントと助成金
定着の鍵は、役割の明確化です。任せる業務・期待する役割・評価の基準を言葉にして伝えることが、年齢に関係なく定着の土台になります。
また、60歳以上の方の雇用には、要件を満たせば活用できる助成金があります(※3)。制度は改廃があるため、申請前にハローワークや社会保険労務士へ確認するのが確実です。
<small>※3 高年齢者の雇入れ・雇用継続を対象とした助成金(特定求職者雇用開発助成金、65歳超雇用推進助成金など)が用意されている。 参考:厚生労働省「雇用関係助成金一覧」。助成金は年度ごとに新設・改廃・要件変更があるため、検討時に最新の要件を確認すること。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00057.html </small>
福利厚生や職場環境は、シニアに限らず「働き続けられる会社か」の判断材料です。採用サイトでの見せ方は別記事で整理しています。
参考記事:『【事例つき】採用サイトの福利厚生ページとは?若手に響く見せ方』
働き方のすり合わせで弊社がおすすめしているのは、条件を「聞き出す」形ではなく、こちらの設計を「先に開示する」形です。「重量物の運搬は外してあります」「週3日から組めます」と先に示せば、応募者は自分の体力や生活と照らして答えやすくなります。シニアの応募者は「体力面を正直に言ったら落とされるのではないか」という不安を抱えて面接に来ることが多い。先に配慮の設計を見せることは、その不安を外し、本音のすり合わせを可能にするいちばんの近道だと考えています。入社後に発覚するより、面接の場で正直に出てくるほうが、双方にとって圧倒的に安い。すり合わせの目的は見極めではなく、この「正直さの引き出し」にあります。
よくある質問(FAQ)
Q. シニアは何歳まで採用してよいのでしょうか?
「何歳まで」という採用の上限年齢は、法律で定められていません。ただし、これは年齢を条件にしてよいという意味ではなく、求人で年齢制限を設けること自体が原則として禁止されています(※2)。自社の定年・継続雇用規程と整合を取り、体力面と業務のすり合わせができれば、65歳以上の採用も選択肢になります。
Q. 体力面が不安です。どう見極めればよいですか?
面接での自己申告に加えて、短時間の職場見学や試用期間を挟み、実際の業務で無理がないかを双方で確認するのが現実的です。年齢ではなく、業務との相性で判断します。
Q. 若手採用をあきらめてシニアに切り替えるべきですか?
二者択一ではありません。時間のかかる若手採用を続けながら、いま埋めたい人手をシニアで補う並走が現実的です。
Q. 短時間勤務だとシフト管理が複雑になりませんか?
複雑にはなりますが、「フルタイム1人が採れないまま現場が回らない」状態と比べれば対処できる複雑さです。時間帯ごとの必要人数を洗い出すと、短時間枠の組み合わせで埋められる穴は意外と多くあります。
シニア採用は「募集」より先に「受け入れ設計」から
シニア採用の成否は、求人を出す前にほぼ決まっています。業務の切り出し、労働時間の設計、体力面への配慮——この受け入れ設計ができている会社は、競争の少ない母集団から着実に人を迎え入れています。
とはいえ、業務の棚卸しから媒体選び、求人票の書き換えまでを本業と兼務でやり切るのは、簡単なことではありません。弊社では、採用活動の代行(リープ・リクルーティング)として、誰を採るかの設計から求人方法の選定・応募者対応までを一緒に進めています。「シニアも選択肢に入れるべきか」という入口の整理からで構いません。現状をうかがったうえで、御社に合う進め方をご提案します。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。