【設備管理】ビルメンテナンス業の採用|設備管理の人材難を立て直す方法
「設備管理の経験者を募集しても、応募がほとんど来ない」「来るのは定年後の再就職ばかりで、若手が採れない」——ビルメンテナンス業の採用担当の方から、こうした声を聞くことが増えました。建物がある限り仕事はなくならない安定した業界なのに、担い手だけが細っていく。この矛盾に、多くの会社が直面しているのが実情です。
原因をたどると、ビルメンテナンス業界特有の構造にぶつかります。資格を持つベテランの高齢化、経験者の取り合い、そして「ビルメン」という仕事自体が若い世代にほとんど知られていないという知名度の壁です。つまり、経験者の応募を待つ従来のやり方を続ける限り、状況は好転しにくいということです。
この記事では、ビルメンテナンス業の採用が難しい原因を整理したうえで、資格とキャリアパスを武器に変える求人の見せ方、そして未経験の若手を採って育てる方向への切り替え方を、地方採用の現場目線でお話しします。
ビルメンテナンス業界はなぜ人手不足なのか
結論から言うと、ビルメンテナンス業の人手不足の原因は「資格者・経験者の高齢化」と「若手の新規流入の少なさ」が同時に進んでいることにあります。需要側の建物は増減が緩やかなのに対し、供給側の担い手だけが先細る。個社の努力で経験者の総数は増やせないため、打ち手は必然的に「未経験者を採って育てる」方向に寄っていきます。
資格者の高齢化と「経験者の取り合い」
設備管理の現場は、電気・空調・給排水・消防と幅広い設備を扱うため、第二種電気工事士やボイラー技士、第三種冷凍機械責任者といった資格と経験がものを言う世界です。居住施設・ビル等管理人の平均年齢は54.3歳で、産業計の43.9歳より10歳以上高い水準です(※1)。業界団体の実態調査でも、ビルメンテナンス業の悩みごとは「現場従業員が集まりにくい」が88.5%で最多、「現場従業員の若返りが図りにくい」が74.1%で続いており、ベテランの引退を前に若手の確保と育成が追いついていない実情が数字に表れています(※2)。
限られた経験者を各社が取り合う構造なので、経験者採用の難易度と給与相場は上がり続けます。中小の会社が大手と同じ土俵で経験者を奪い合うのは、正直分が悪い勝負です。
<small>※1 引用:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」(企業規模計10人以上・男女計)。産業計は平均年齢43.9歳・所定内給与額318.7千円・年間賞与911.3千円。推計年収は「所定内給与額×12+年間賞与」による参考値で、手当・超過勤務手当を含まない。 https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003426315 </small>
<small>※2 引用:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「第56回ビルメンテナンス業実態調査報告書」(2026年4月公表、2026年7月28日確認)。調査期間2025年10月24日〜12月5日、協会会員2,809事業所対象・回収1,060件。悩みごとは本社回答(n=908)の複数選択。 https://cdn.j-bma.or.jp/wp-content/uploads/2026/04/16115006/2026_bmiy56_report.pdf </small>
「ビルメン」が若手の選択肢に入っていない
もう一つの原因が知名度です。設備管理という仕事は、建物の裏側で完結するため、利用者の目に触れません。「ビルメン」という言葉を知っている求職者は業界経験者くらいで、多くの若手にとっては、そもそも検討リストに存在しない仕事なんですよね。
これは裏を返せば、仕事の中身をきちんと伝えるだけで他社と差がつく、ということでもあります。実態を具体的に見せた会社から順に、比較の土俵に上がっていけます。
ビルメン求人に応募が来ない理由──求人の見せ方を疑う
応募が来ないとき、まず疑うべきは給与ではなく求人の中身です。ビルメン求人は「ビル設備の管理業務全般」といった抽象的な一行にとどまっているものが目立ち、これでは経験者にも未経験者にも刺さりません。誰に向けた求人かを決め、その人の判断材料を具体的に書く。これだけで応募の質と量は変わっていきます。
応募が来ない原因の全体的な切り分け方は、こちらの記事を先に読んでいただくと整理しやすいと思います。
経験者向けと未経験者向けで、書くべきことは真逆
経験者が見ているのは「どの規模・用途の建物か」「常駐か巡回か」「宿直の頻度」「資格手当の金額」といった働き方の実像です。一方、未経験の若手が知りたいのは「本当に未経験でできるのか」「何をどの順番で覚えるのか」「資格は働きながら取れるのか」という育成の道筋です。
一本の求人で両方に語りかけると、どちらにも刺さらない中途半端な文面になります。採りたい人物像を決めて、求人を分ける。遠回りに見えて、これが母集団形成の一番の近道です。
給与相場で勝てないなら、働き方の実像で勝負する
ビルメンの給与相場は決して高い水準ではありません。居住施設・ビル等管理人の所定内給与額は月248.8千円、年間賞与は555.9千円で、概算の年収は354万円。産業計の473万円と比べると120万円ほど低い水準です(※1)。正面から金額だけで競うのは得策ではありません。一方で、宿直明けの休み方、緊急対応の実際の頻度、現場の人員体制といった「入ってみないと分からないこと」を先に開示すると、それ自体が誠実さの証明になります。条件の絶対値ではなく、情報の解像度で選ばれる。ここがビルメン求人の勝負どころだと考えています。
資格とキャリアパスを武器にする採用手法
若手・未経験者に振り向いてもらう最大の武器は、実は最初から手元にあります。資格です。第二種電気工事士、二級ボイラー技士、危険物乙4、第三種冷凍機械責任者——いわゆる「ビルメン4点セット」は、業界の外から見れば働きながら国家資格が積み上がっていくキャリアそのものです。
求人でこう見せます。
- 入社時: 資格不問・未経験可。先輩の巡回に同行しながら現場を覚える
- 1〜2年目: 資格取得支援(受験費用の会社負担・合格祝い金・勉強時間の配慮)で4点セットを順に取得
- その先: 資格手当で給与が積み上がり、現場責任者や施設常駐の主任へ
「手に職がつく」「景気に左右されにくい」という業界本来の強みは、道筋として見せて初めて訴求になります。ここまで描けている求人は、同じ商圏の同業他社を並べてみると、そう多くないはずです。まず自社の商圏で見比べてみてください。整っている会社が少ないほど、先に手を入れる価値は大きくなります。
弊社の支援先である岐阜県の電気設備工事会社では、電気工事士・製造技術者といった専門職の求人を未経験者向けと経験者向けの2本立てに分けました。実際の応募層の多くが未経験者だったことを踏まえ、教育体制と資格取得支援を軸に「未経験から手に職をつけられる環境」「経験より意欲を重視する姿勢」を伝える訴求へ切り替えています。
また岐阜県の電気工事会社では、未経験向け求人のタイトルを「電気工事士見習い/未経験スタート月給28万円〜|資格取得費用全額補助/50%が未経験入社」という形に改め、資格支援と未経験入社の実績を数字で前面に出しました。
設備・保守系の採用でも、資格とキャリアの道筋は「制度あり」の一言では伝わりません。この粒度まで具体化して、初めて訴求になります。
数字を一つ添えると、弊社の支援先37社の実績では、応募のおよそ13件に1件が入社に至っています。裏を返せば、1名の採用にはおおむね10件強の応募が必要だという計算です。だからこそ、この粒度の具体化で応募の母数そのものを増やすことが、採用までの距離を縮める最短の道だと考えています。
なお、清掃部門を併設している会社は、清掃スタッフの採用と一体で設計すると効率的です。清掃側の見せ方はこちらで整理しています。
採用した人が辞めない現場までつくって、初めて立て直しになる
最後に、採用と同じ重さで見てほしいのが定着率です。ビルメンの離職は、ワンオペ現場での孤立、緊急対応の負担の偏り、資格を取っても給与に反映されない失望——この3つで起きるケースが少なくありません。資格手当と昇給の連動、緊急対応の当番制、月1回の面談といった地道な手当てが、定着率を支えます。
そして、採用の立て直しは「求人を直す→露出を広げる→受け入れて定着させる」の一連の流れで初めて成立します。露出(母集団形成)の考え方と、地方ならではの前提は、こちらの2記事で全体像をつかんでください。
とはいえ、経験者向け・未経験者向けの求人の書き分けから媒体運用、応募者対応までを、現場管理と兼務でやり切るのは相当な作業量です。実際、採用に最低限必要な作業を洗い出すと必須作業だけでも40以上あります。弊社では、採用活動の代行(リープ・リクルーティング)として、御社の人事部をまるごとお任せいただく形で、求人設計から一次面談までを一緒に回しています。まずは御社の体制と採用フェーズをうかがったうえで、どこから手をつけるべきかの整理からご一緒します。
ビルメンテナンス業の採用でよくある質問
Q. 未経験者を採っても、現場が回るまで時間がかかりませんか?
かかります。ただ、経験者の応募を待ち続ける機会損失と比べると、育成前提の採用のほうが計画が立てやすいのが実際のところです。巡回同行から始めて資格を順に取らせる育成の流れを決めておけば、教える側の負担も抑えられます。
Q. 資格保有者を優遇したいのですが、求人にどう書けばいいですか?
「要資格」と入口を狭めるより、「資格不問。第二種電気工事士・ボイラー技士の資格手当あり(保有者は優遇)」のように、入口は広く・評価は明確に、と書き分けるのがおすすめです。応募のハードルを上げずに、資格者にも報われる職場だと伝えられます。
Q. ビルメン求人はどの媒体に出すのが効果的ですか?
経験者は業界系・検索型媒体、未経験の若手は総合媒体や自社採用サイト経由が中心になる傾向があります。ただし媒体より先に、誰向けの求人かを分けて中身を具体化することが先決です。
Q. 宿直や緊急対応があることは、正直に書くべきですか?
書くべきです。隠して採用しても早期離職につながり、採用コストが二重にかかります。頻度・体制・手当をセットで開示すれば、ネガティブ情報ではなく「実態を隠さない会社」という信頼材料として働きます。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。