女性採用がうまくいく会社の共通点──応募したくなる職場環境の見せ方
「求人を出しても女性の応募がほとんど来ない」「気づけば現場は男性ばかりになっている」——女性採用に取り組もうとして、最初の一歩で手が止まっている会社は多いと思います。人手不足が続くなか、これまで男性中心だった業種ほど、女性の力を借りたい場面は増えているはずです。
先にお伝えすると、女性の応募が来ない原因は、給与や仕事内容そのものより手前にあるケースが少なくありません。女性の求職者の多くは、応募する前に「この会社で働き続けられるか」を確かめています。つまり、職場環境と働き方の実態が伝わっていない会社は、条件を比べてもらう前に候補から外れている、ということです。
この記事でわかること
- 女性の応募が来ない構造的な理由
- 応募したくなる会社が見せている4つの情報(産休・育休、時短勤務、ロールモデル、福利厚生)
- 求人方法・媒体と面接での注意点、そして定着までの設計
なぜ女性の応募が来ないのか──条件より先に「働き続けられるか」を見られている
結論からいうと、女性採用でつまずく会社の多くは、条件が悪いのではなく「働き続けられる根拠」を見せられていません。産休・育休や時短勤務は「制度あり」の一行では伝わらず、実態が見えない会社は比較の途中で静かに候補から外れていきます。最初に直すべきは条件表ではなく、職場環境の見せ方です。
女性の求職者は「入れるか」より「続けられるか」で会社を見る
転職・就職は誰にとっても人生の一大イベントですが、結婚・出産・育児といったライフイベントを視野に入れて働き方を選ぶ人にとっては、なおさら慎重な比較になります。求人票を見て、採用サイトを見て、口コミまで確認して、「入社した後、生活と両立できるか」を見極めようとする。そこで判断材料が見つからなければ、応募には進みません。
なお、「そもそも応募自体が少ない」という場合は、女性採用の前に露出(母集団形成)の詰まりを疑ったほうがいいケースもあります。応募が来ない原因の見直し順序はこちらで整理しています
「産休・育休制度あり」の一行が、かえって不安にさせる
見落とされがちなのですが、産前産後休業は労働基準法、育児休業は育児・介護休業法にもとづく制度で、会社の規模を問わず適用されます(※1)。だから求人票の「産休・育休制度あり」という一行は、実は情報量がほぼゼロなんですよね。制度があること自体は、他社との違いにならないからです。
<small>※1 産前産後休業は労働基準法第65条、育児休業は育児・介護休業法第5条にもとづく法定の制度。ただし有期雇用の場合の要件など、個別の取得条件は制度ごとに定められている。参考:厚生労働省「育児・介護休業法について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ikuji-kaigo/index.html </small>
求職者が知りたいのは制度の有無ではなく、「実際に取った人がいるのか」「復帰して働き続けている人がいるのか」という実態です。ここが空白のままだと、「制度はあっても使えない会社かもしれない」という不安のほうが残ってしまいます。
女性が応募したくなる会社は何を見せているのか──4つの情報
見せるべきは「制度」ではなく「実態」です。具体的には、産休・育休の取得実績、時短勤務など労働時間の柔軟さ、実際に働いている女性社員の姿(ロールモデル)、生活を支える福利厚生の4つ。いずれも数字と顔が見える形にして、はじめて応募の後押しになります。
01. 産休・育休は「実績」で語る
取得実績は、大げさな数字である必要はありません。「昨年、1名が育休から復帰し、時短勤務で働いています」という一文だけでも、「制度あり」の何倍も伝わります。まだ実績が少ない会社なら、「取得を推進している」「復帰後の働き方を一緒に設計する」という会社の姿勢を、経営者の言葉で書くところから始めてみてください。
弊社の支援先の運送会社では、ドライバー求人の改善で「女性ドライバー14名在籍」「子育て世代のママさんも多数活躍」という在籍の事実を本文に明記し、年間休日122日と柔軟なシフトを冒頭に置く構成へ書き換えました。
「女性が働きやすい職場です」と姿勢を語るのではなく、実際に働いている人数という実態を出す形です。本文で述べた「実績で語る」を、求人票のレベルで実行した例にあたります。
この書き換えの価値は、応募数の増減だけで測るものではないと考えています。「女性ドライバー14名在籍」という一行は、求職者が応募前に確かめようのなかった「本当に女性が働けている会社なのか」という問いへの、求人票の段階での回答になっているからです。応募のハードルは、疑問が残るほど高くなり、答えが先に出ているほど下がります。そして、もし書ける実態がどうしても見つからないなら、それは求人の書き方の課題ではなく、職場づくりの課題が先にあるというシグナルです。順番としては、実態を作り、実態を書く。この2段しかありません。
02. 時短勤務・労働時間は「一日の流れ」まで具体的に
「時短勤務可」「残業少なめ」も、そのままでは抽象的です。何時に出社して何時に帰れるのか、子どもの学校行事や急な発熱のときはどうしているのか。実際の働き方が想像できる粒度まで落とすと、労働時間の情報は一気に「続けられる根拠」に変わります。
03. ロールモデル──「自分と同じ立場の人」の姿がいちばん効く
制度の説明より雄弁なのが、実際に働いている女性社員の姿です。子育てをしながら働く社員のインタビューが1本あるだけで、求職者は「この会社での数年後の自分」を具体的に想像できます。とくに中途採用では、求職者は自分と似た境遇の先輩を探しているのが実際のところです。
04. 福利厚生は「羅列」より生活目線で
住宅手当や休暇制度をただ並べるのではなく、「それがあると生活がどう楽になるのか」まで書くのが福利厚生の見せ方の基本です。福利厚生ページの作り込みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。福利厚生ページの見せ方はこちら
こうした情報の洗い出しと見せ方の設計は、社内だけで進めると「当たり前すぎて気づけない」ことが多い領域でもあります。現状の求人と職場環境の棚卸しから、一緒に整理することもできます。
求人方法と選考はどこに注意すべきか──媒体・求人票・面接
求人方法の面では、性別を限定する募集が男女雇用機会均等法で原則禁止されている点に、まず注意が必要です(※2)。そのうえで、媒体選びと求人票の言葉を女性求職者の目線で見直し、面接では家庭の事情を詮索しない。この3点を採用活動全体の設計に組み込むことで、はじめて機能します。
求人票・媒体の注意点──「女性歓迎」とは書けない
男女雇用機会均等法により、「女性限定」「女性歓迎」のような性別を条件とする表記は原則としてできません(※2)。書けるのは、「産休・育休の取得実績」「時短勤務で働く社員がいる」といった事実と、それが伝わる職場の情報です。つまり、表現で女性を呼ぶのではなく、環境の実態で選んでもらう構造にする必要がある、というわけです。媒体についても、パート・主婦層向けの媒体や地元のフリーペーパーなど、届けたい相手が実際に見ている場所を選ぶことが先決です。
<small>※2 事業主は労働者の募集・採用について性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない(男女雇用機会均等法第5条)。過去の格差解消を目的とするポジティブアクション(同法第8条)などの例外があるため「原則」と表記している。参考:厚生労働省 都道府県労働局「性別による差別の禁止」 https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/_85811/rodojyoken_ruru/seibetu_sabetu_kinshi.html </small>
弊社の支援先である岐阜県のタクシー会社では、「タクシードライバーは夜勤や隔日勤務が当たり前」という先入観が、女性やワークライフバランスを重視する層の壁になっていると整理しました。
そこで、昼間だけの固定勤務を選べること・AT限定免許で応募できること・女性ドライバーも多数活躍中という情報を前面に出す書き換えを行っています。
性別で呼びかけるのではなく、不安の正体(夜勤・運転への心理的ハードル)に先回りして事実で答える、という工夫です。
この種の書き換えが狙っているのは、「応募を増やす」ことの一歩手前にある「候補から外されない」ことです。求職者は、不安が解消されない求人を問い合わせて確かめたりはしません。黙って読み飛ばすだけです。夜勤があるのかないのか分からない求人と、「昼間だけの固定勤務を選べます」と書いてある求人。比較のテーブルに残るのはどちらか、という話だと考えています。
面接の注意点──聞いていいのは「事情」ではなく「希望する働き方」
面接で結婚や出産の予定を尋ねるのは、就職差別につながるおそれがあるとして厚生労働省が配慮を求めている領域にあたります(※3)。確認すべきは本人の事情ではなく、「どんな働き方を希望するか」「会社としてどこまで応えられるか」のすり合わせです。ここを丁寧にやることが、入社後のミスマッチと早期離職を防ぐ面接になります。
<small>※3 厚生労働省は、本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境・家庭環境)や本来自由であるべき事項(思想・信条など)を採用選考で把握することは就職差別につながるおそれがあるとして、配慮を求めている。参考:厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html </small>
助成金も味方につける
仕事と育児の両立支援に取り組む企業向けには、国の助成金制度もあります。(※4)制度は年度で変わるため、検討する際は最新の情報を確認してみてください。
<small>※4 両立支援等助成金など、仕事と育児の両立支援に取り組む企業向けの制度が用意されている。 参考:厚生労働省「雇用関係助成金一覧」。助成金は年度ごとに新設・改廃・要件変更があるため、検討時に最新の要件を確認すること。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00057.html </small>
採用して終わりにしない──定着してはじめて「女性採用」は完成する
女性採用のゴールは、入社ではなく定着です。そして興味深いことに、産休・育休の運用や労働時間の柔軟さといった職場環境の改善は、これから採る人のためだけでなく、いまいる社員の定着にもそのまま効きます。働き続ける女性社員が増えれば、その姿がロールモデルとなって次の応募を呼ぶ。この循環をつくることが、女性採用の本当の狙いだと考えています。
採用計画から母集団形成、選考、定着までの全体の流れは、こちらのピラー記事で俯瞰できます。採用活動全体の進め方はこちら
女性採用でよくある質問
Q1: 1. 男性ばかりの業種でも女性採用はできますか
できます。むしろ建設・運送・製造など女性が少ない業種ほど、職場環境の実態を見せるだけで他社と差がつきやすい領域です。最初の1人の受け入れ体制(更衣室・トイレなどの設備面を含む)を整えてから募集するのが順序です。
Q2: 2. 求人票に「女性歓迎」と書いてもいいですか
原則書けません。男女雇用機会均等法第5条が、募集・採用について性別にかかわりなく均等な機会を与えることを事業主に求めているためです(※2)。代わりに、産休・育休の取得実績や時短勤務の事例など、事実を具体的に書くことで伝えます。
Q3: 3. 産休・育休の取得実績がまだない場合は
「取得を推進する」という会社の方針と、復帰後の働き方をどう設計するつもりかを、経営者の言葉で書いてください。実績ゼロでも、姿勢が見えるだけで空白よりずっと伝わります。
Q4: 4. 女性採用に使える助成金はありますか
両立支援に取り組む企業向けの助成金制度があります。(※4)要件が細かいため、社労士や労働局への確認をおすすめします。
女性が応募したくなる会社は、いまいる社員が働きやすい会社
ここまで見てきたとおり、女性採用は「女性向けの求人テクニック」ではなく、職場環境の実態を整えて、それを正しく見せる活動です。だからこそ、取り組んだ分は採用だけでなく、定着や社内の働きやすさにも資産として残ります。
そして、整えた実態を届けるには、求人での露出と、じっくり伝える受け皿(採用サイト)の両輪が要ります。「何から手をつければいいか分からない」段階でも大丈夫です。御社の状況と採りたい人物像をうかがったうえで、現状の整理からご一緒します。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。