電気工事の採用が難しい理由と打ち手|職人不足の会社がやるべきこと
「若手を採りたいのに、応募が来ない」「たまに来るのは同業出身の経験者頼みで、その経験者も年々減っている」——電気工事会社の採用は、いまこの構造に入り込んでいます。ベテランの職人が現場を支えているうちに次を育てたいのに、その入口である採用が動かない。1人辞めたら受けられる現場が減る規模の会社ほど、切実な問題だと思います。
職人不足は業界全体の流れではあります。ただ、「業界に若手が来ないから仕方ない」で止めると、自社で動かせる部分まで手つかずのまま残ります。同じ地域・同じ職種でも、応募の集まり方には差が出ます。その差がどこで生まれるのかを、順に見ていきます。
この記事でわかること
- 電気工事業の採用がどこまで構造の問題で、どこからが自社の問題なのか
- 電気工事の求人に未経験・若手の応募が来ない3つの原因
- 資格取得支援・見習い育成ステップの見せ方
- 母集団形成から定着まで、職人不足の会社が先に手をつけるべき打ち手
電気工事業の採用の現状|職人の高齢化と若手の入口の細さ
先に全体像を言うと、電気工事業の採用難は「職人の高齢化で辞める人が増える」一方で「若手の入職が細い」という、出口と入口が同時に詰まった構造です。しかも電気設備の仕事そのものは、改修・保守・再生可能エネルギー関連などで減る気配がありません。仕事はあるのに、人がいない。これが現状です。
2026年5月時点で、電気工事従事者の有効求人倍率は3.22倍。建設・採掘従事者全体では4.66倍、全職業平均は0.99倍です(※1)。
<small>※1 参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)」参考統計表7-1「職業別 一般職業紹介状況[実数](常用(パートタイムを含む))」(2026年6月30日公表)。同表の職業計(全職業平均)の有効求人倍率は0.99倍。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74004.html </small>
担い手側の見通しも厳しく、経済産業省の審議会資料(平成29年)では、第一種電気工事士は高齢層の退職により、2020年頃から必要数約19万人に対して4万人規模の不足が生じる可能性があると試算されていました(※2)。10年近く前の試算ですが、その前提だった「ベテランの大量退職と若手の入職減」は、いままさに進行している構図です。<small>※2 参考:経済産業省 産業構造審議会 保安分科会 電力安全小委員会「電気保安人材の将来的な確保に向けた検討について」(平成29年3月)。 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/pdf/015_09_00.pdf </small>
採用が止まっている会社では、人員は単に増えないのではなく、退職と高齢化で静かに減っていきます。さらに地方では車通勤が前提のため、求職者が現実的に通えるのはおおむね片道1時間/25〜30km圏内まで。その圏内で、同業だけでなく製造業や設備業とも同じ若手を取り合うことになります。
電気工事の求人に応募が来ない3つの原因
同じ商圏でも差がつくのは、たいてい次の3つのどこかに詰まりがあるからです。いずれも「見せ方」の問題であり、今日から動かせる部分です。
原因1|「職人の世界」のイメージが入口をふさいでいる
未経験の若手から見た電気工事の仕事には、「見て盗め」「怒鳴られながら覚える」「夏は暑く冬は寒い現場仕事」というイメージが、いまだに残っています。実際には、教え方を整え、若手の定着に力を入れている会社が増えているのに、求人票がそれを語らなければ、求職者は古いイメージのほうで判断します。
道具の持ち方から教えるのか、最初の半年は何を任せるのか、先輩が横につくのか。「未経験歓迎」の4文字ではなく、入社後の最初の1年をどう過ごすかを書く。それだけで、応募のハードルは目に見えて下がります。
原因2|資格が「応募の壁」に見えている
電気工事士の資格は、この仕事の強みであると同時に、見せ方を誤ると応募の壁になります。「電気工事士優遇」とだけ書かれた求人票を見た未経験者は、「資格がないと応募できないのか」と解釈して離脱します。
実際には、無資格で入社して働きながら第二種電気工事士を取る、という道筋が用意されている会社は少なくありません。受験費用や講習を会社が支援しているなら、資格取得支援は未経験採用における最も強い訴求の一つです。手に職がつき、国家資格が取れて、資格が一生モノになる——この道筋を求人票の主役に据えるべきです。ただし、書けるのは実際にある制度だけです。運用が曖昧なら、まず制度として決めてから書く。この順番だけは守る必要があります。
原因3|求人票が経験者向けの言葉で書かれている
「電気工事一式」「各種現場対応」「要普通免許・経験者優遇」。こうした求人票は、同業の経験者には通じても、未経験の若手には何も伝わっていません。どんな現場(住宅・店舗・工場・公共施設)で、どんな工事をしていて、1日がどう流れるのか。給与相場で大手と比べられて分が悪いなら、なおさら仕事の中身と成長の道筋という総合点で勝負するしかありません。条件の羅列で終わっている求人票は、比較の土俵に乗る前に外されているのが実際のところです。
①については、そのままの実例があります。
岐阜県の電気工事会社の支援では、まず通勤1時間圏で電気工事士を募集している同業10社をハローワークや求人サイトから洗い出し、条件を比較しました。未経験の月給下限は競合が18万〜22万円程度なのに対し、自社は28万円強で地域上位。条件では勝っていたのに、求人のタイトルは「中途社員|電気工事士」の一行だけでした。
そこで未経験向けを「電気工事士見習い/未経験スタート月給28万円〜|資格取得費用全額補助/50%が未経験入社」という形に書き直し、勝っている条件を数字でタイトルと冒頭に出す設計へ変えています。
②のズレは、別の会社で経験しました。岐阜市の電気工事会社では、応募が来ない原因は給与だと思われていました。ところが周辺の競合条件(完全週休2日または年間休日120日前後・月給23〜40万円前後)と並べると、給与水準は見劣りしていません。実際に効いていたのは、「隔週土曜+日祝」という休日の見え方と、固定残業40時間の表記が与える「忙しそう」という印象のほうでした。
さらに、求人票上「年間120日」とされていた休日が現場の実態と食い違う可能性も打ち合わせで判明しています。入社後のトラブルを避けるため、事実ベースで条件を確認し直すところから整えました。
③の「見習い・若手が応募をためらう理由」は、個別の声より構造で捉えたほうが正確だと考えています。求職者は応募先の候補を11社ほど並行して持ちながら比較しています。その比較の場面で、経験者向けの言葉で書かれた求人票は「自分は対象外だ」と読まれ、ためらう以前に候補から外れます。つまり、ためらいの多くは「仕事がきつそう」より手前の、「自分が応募していいのか分からない」という段階で起きている、というのが弊社の見立てです。だからこそ、未経験入社の割合や見習い期間の道筋のような「あなたが対象です」と伝わる情報を、タイトルと冒頭に置くことが効きます。
職人不足の会社が先に手をつけるべき打ち手
順番は、①未経験前提の入口を設計する、②露出を増やす、③受け皿を整える、です。採用手法を増やすのはその後で構いません。
未経験・見習い前提の入口を設計する
経験者の中途採用は、母数そのものが縮んでいる市場です。待っていても取り合いが激しくなる一方なので、未経験・若手を採って育てる入口を持てるかどうかが、数年後の体制を分けます。具体的には、入社→見習い期間の役割→第二種電気工事士の取得→現場デビュー、というステップを言葉にして、求人票と面接で一貫して見せることです。育成の道筋が見える会社は、給与の数字だけで選ばれる勝負から抜け出せます。
露出を増やす(母集団形成)
応募が来ない会社の多くは、条件が悪い以前に見つけてもらえていません。応募の母数を増やす母集団形成が土台です。求人を出せる場所は有料広告だけでなく、無料の媒体も思っているより多くあります。若手に届けたいなら、ハローワークの掲示だけで完結せず、スマホの検索で見つかる状態を作れているかを確認してみてください。
そもそもどの段階で詰まっているのかの切り分けは、こちらが役に立ちます。
受け皿となる採用サイトを整える
求人票で会社名を知った若手は、次に社名で検索します。出てくるのが工事実績の一覧だけでは、「働く場所」としての判断材料がありません。現場の1日、先輩職人の入社の経緯、資格取得支援の中身、道具や車両。ここが見える会社と見えない会社では、同じ条件でも選ばれ方が変わります。露出と受け皿は両輪です。
採った見習いが辞めない会社は、教え方を言語化している
入口を整えても、定着しなければ振り出しに戻ります。見習いの早期離職で多いのは、技術の壁より「何をどこまでできれば一人前なのか分からない」不安と、「聞いていた話と違う」という期待値のズレです。
最初の3か月・半年・1年で任せる仕事と到達目標を紙にして渡す。残業や休日の実態、繁忙期の波は面接で正直に伝える。教え方を職人任せの「見て覚えろ」にせず、会社として言語化する。この積み重ねが定着率を変え、定着が次の採用の説得力になります。若手が続いている事実そのものが、次の求職者への一番の証明になるからです。
電気工事の採用についてよくある質問
Q1. 資格のない未経験者を採用しても、戦力になりますか?
なります。ただし時間はかかります。だからこそ、見習い期間の役割設計と資格取得支援をセットで用意し、育成期間を織り込んだ採用計画にすることが前提です。経験者が採れるのを待ち続けるより、育てる入口を作るほうが、数年単位では確実だと思います。
Q2. 求人票に現場の厳しさはどこまで書くべきですか?
夏冬の現場環境や繁忙期の波など、入社すれば必ず分かることは先に書くべきです。伏せて採るとほぼ確実に早期離職につながります。厳しさとセットで、教える体制や資格の道筋を書けば、分かったうえで来る人が残ります。
Q3. 工業高校や職業訓練校との付き合いは有効ですか?
有効です。高卒採用には求人票の提出時期や学校経由の応募といった独自のルールがあるため、段取りを踏む必要はありますが、未経験・若手の入口としては相性の良い経路です。数年かけて関係を作る前提で、早めに動く価値があります。
「若手が来ない業界」で終わらせないために
電気工事業の人手不足は、高齢化と入職の細さという構造の問題です。ただ、応募が来ない理由のすべてが構造ではありません。入社後の道筋を書き、資格取得支援を主役に据え、出せる場所に出し切り、受け皿を整える。ここまでやってから「業界のせい」と言うのが順番だと思います。
とはいえ、これを現場と兼務しながら続けるのは簡単ではありません。弊社自身、岐阜という地方に拠点を置きながら、採用広告を使わずに年間1,152名のエントリーを自社で獲得してきました。「だから御社も同じ数が採れます」という話ではなく、露出の設計を自分たちの採用で実証してきた立場から、御社の見せ方をご一緒できる、ということです。
全部をお任せいただく必要はありません。求人原稿の作成と媒体の更新だけを外に出し、面接と合否判断は自社に残す線引きもできます。まずは御社が今どこに求人を出していて、何が伝わっていないのかをうかがうところから始めます。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。