【3つの打ち手】地方の中小企業が採用できない理由は?通勤圏内で選ばれる進め方
「地方だから、そもそも人が採れない」——採用のご相談で、最初に出てくるのはたいていこの一言です。
求人は出している、ハローワークにも載せている。それでも応募が来ないまま数ヶ月が過ぎる。そして「これは地方という土地の問題なのでは」というところに答えが着地してしまう……。
ただ、ここで一つだけお伝えしておきたいことがあります。詰まっている場所は、たいてい「地方だから」ではありません。そして、いま出している求人票のままでも、まだ打てる手が残っています。
本記事では、地方採用の構造を整理したうえで、通勤圏内で見つけてもらう打ち手と受け皿づくりを順にお話しします。
この記事でわかること
- 地方採用が難しくなる本当の理由(通勤可能範囲という物理的な制約)
- 応募が集まらない会社に共通する「順番の間違い」
- 通勤圏内で認知を取りにいく3つの打ち手
- 露出を応募に変えるために、採用サイト側で用意しておくもの
- 新卒採用で逆算しておきたい準備の時期
地方採用が難しい本当の理由は「母数」ではなく「認知接点」
人が採れないという実感自体は、気のせいではありません。人材確保は中小企業にとって最重視の経営課題であり続けていますし、正社員の不足超過も続いています(※1)。地方の主要産業ほど、人が足りない状態が長く続いているのも事実です。
※1 「人材確保」が中小企業の最重視課題であることは2025年版中小企業白書(中小企業庁)、正社員の不足超過が続いている状況は厚生労働省「労働経済動向調査」(2025年5月時点)による。
ただ、そこから先の見立てが少しずれていることが多いのが正直なところです。地方の採用が苦しいのは、地域に人がいないからではありません。求職者には通勤できる距離という物理的な上限があり、その限られた圏内で見つけてもらえているかがほぼすべてを決めます。
地域に候補者がいないのではなく、候補者から自社が見えていない。まずはこの前提をそろえるところから始めます。地方採用は「母数の問題」ではなく「認知接点の設計の問題」です。
地方の通勤可能範囲は片道1時間・25〜30km圏内
地方の通勤可能範囲は、時間でいえば片道1時間、距離でいえば25〜30km圏内が上限です。地方は電車網が弱く車通勤が前提になるため、この圏内がそのまま「応募してもらえる可能性のある人の全体」になります。
ここが都市部との決定的な違いです。都市部のノウハウは「とにかく母数を集めて選ぶ」という発想で書かれています。地方では母数の枠が地理で先に決まるので、同じやり方を持ち込んでも機能しません。
裏を返せば、勝負すべき範囲はかなり絞り込めます。25〜30km圏内の人に、いかに多くの接点で自社を見てもらうか。地方採用は、この一点に資源を集める戦い方になります。
同じ商圏の会社が、求職者には「どれも同じ」に見える
もう一つ、地方特有の事情があります。限られた商圏では同業が横並びで求人を出しており、求職者から見ると条件も文面も似通って見えるということです。
求職者にとって転職・就職は人生の一大イベントです。慎重に比較する人ほど、複数社の求人票を並べて見比べます。そのとき、給与も勤務時間も業務内容の書き方もほとんど変わらなければ、選ぶ理由がありません。結果として、たまたま目に留まった会社、たまたま知っていた会社が選ばれていきます。
「同じ地域の他社は採れているのに、うちだけ応募が来ない」が起きるのは、横並びの中で違いが伝わっていないからです。地方の採用は、条件の勝負であると同時に、違いが伝わっているかどうかの勝負でもあります。
条件を動かすのは、いちばん最後
応募が来ないとき、原因を条件面に求める経営者は多いです。給与を上げれば、休日を増やせば採れるはずだ、と。もちろん条件は無関係ではありません。ただ、条件を動かすのは経営上いちばん重いカードです。そこから手をつけると、負担が大きいわりに変化が見えにくいです。
先に確認すべきなのは、そもそも見つけてもらえているのか、比較の土俵に上がれているのかという点です。ここを飛ばして条件だけを動かしても、見られていない求人票の条件が良くなるだけで終わってしまいます。
応募が来ない原因を、露出・媒体・条件・受け皿の階層に分けて整理したい方は、原因側から解説した記事もありますので、あわせて読んでみてください。
参考記事:『【原因5つ】人材確保ができないのはなぜ?応募が来ない会社の見直す順番』
まず増やすのは採用人数ではなく、応募数
地方採用でまず掲げるべき目標は、採用人数ではなく応募数(エントリー数)を確保することです。応募が少ないままでは、選考の工夫も面接の改善も意味を持ちません。順番として、ここが先です。
応募10名から1名と、100名から1名では、採用の質が変わる
同じ「1名採用」でも、中身はまったく違います。応募10名からの1名は実質的に消去法、100名からの1名は比べたうえでの選択です。この差が、入社後の定着や活躍にそのまま効いてきます。
採用の質は、選考のうまさより先に応募の厚みで決まります。応募が集まらないうちから面接の精度を上げようとしても、伸びしろは限られます。
弊社自身、採用広告に頼らず年間1,152名のエントリーをいただいています。広告を出さずにこれだけの母数をつくれているということは、それだけ吟味したうえで選べているということでもあります。地方企業だからこの規模を目指すべき、という話ではありません。
接点を増やす前に、受け皿を確認する
ただし、媒体に出す前に確認しておきたいことがあります。求職者は求人を見つけたあと、必ずと言っていいほど会社名で検索して自社サイトを見るということです。つまり、受け皿がないまま露出だけ広げるのは、穴の空いたバケツに水を入れるようなものです。
露出(見つけてもらう)と受け皿(応募を決めてもらう)は両輪で、片方だけでは回りません。
求職者は、採用サイトの第一印象で候補を絞っている
つい見落としがちですが、求職者は学業や現職、アルバイトの合間に就職・転職活動をしていて、1社ずつ丁寧に調べている余裕はありません。
多くの求職者は、採用サイトの第一印象で「良さそうな会社」をふるいにかけます。スマートフォンに対応していなかったり、デザインが素っ気なかったりすると、それだけで「若い人の考えを尊重してくれなさそう」と受け取られ、候補から外れることがあります。
地方だから簡素でいい、ということはありません。求職者が見ている画面は都市部の学生とまったく同じです。採用サイトは、ぱっと見で足を止めてもらえる水準を用意しておく必要があります。
不安を消すコンテンツがなければ応募には届かない
第一印象で候補に残ったあと、求職者はようやく中身を読み始めます。中身を読み始めた求職者の頭にあるのは、期待よりも不安です。
- どういう仕事をすることになるのか
- 会社の雰囲気になじめるか
- 先輩はどんな人なのか
- どんなスケジュールで働くことになるのか
多くの求職者は、採用サイトのコンテンツをもとに「自分がそこで働いている姿」を思い描こうとします。「自分がそこで働く姿」が想像できなければ、応募には至りません。地方企業の採用サイトは、この不安を払拭するコンテンツが薄く、説明不足になっているケースがほとんどです。
だからこそ、先輩社員のインタビューや、先輩・後輩の対談といった「職場の雰囲気」に焦点を当てたコンテンツが要ります。事業内容や募集要項だけを並べたページは、応募を決める材料になりません。採用サイトをなぜ持つべきなのか、何を載せるべきなのかは、別記事で体系的に整理しています。
【完全保存版】採用サイトとは?4つの働きと、依頼前に押さえる費用・期間の目安
「求人広告を出しても応募が来ない」——地方の中小企業からいただくご相談で、一番よく伺う声です。専任の担当者がおらず、兼務で時間がないなか、次の一手として「とりあえず採用サイトを作ろう」という話になりがちです。 ここで注意したいのが、立派な採用サイトを作れば自動的に応募が増えるわけではないという
通勤圏内で見つけてもらうための、3つの打ち手
受け皿を確認したら、圏内での接点を増やしにいきます。やることを増やす前に、優先順位を決めます。先に効いてくるのは費用をかける施策ではなく、接点の数を地道に積む施策です。ここでは弊社自身が採用を立て直す過程で実際に踏んだ順番に沿って、3つに整理します。
打ち手1|無料で出せる媒体に、出し切る
意外に知られていませんが、無料で求人を出稿できる媒体は思っているよりずっとたくさんあります。まずはここを取りこぼさないことが第一歩です。
代表的なのが、IndeedやGoogleしごと検索のような検索エンジン型の求人サービスです。「職種 × 勤務エリア」での絞り込みが中心になるため、知名度で劣る地方企業でも検索結果に入り込める余地があります。掲載そのものに費用が発生しないため、低リスクで露出を増やす手段として相性がいいです。
一方で、マイナビやリクナビのような求人ポータルサイトへの掲載は、応募の有無にかかわらず費用が発生します。認知拡大の効果はありますが、地方の中小企業にとっては成果が読みにくい投資でもあります。
求人広告に頼り切る採用は、掛け捨ての保険に近く、出稿を止めた瞬間に露出はゼロに戻ります。無料で取れる露出を取り切ってから、足りない分を有料で補う。広告に依存しない露出を確保したうえで、必要なときだけ広告を足す。この順番にしておくと、採用にかかる費用の性質が変わり、景気や予算に振り回されなくなります。
打ち手2|学校との関係を「毎年続く接点」にする
これは今日すぐ結果が出る施策ではなく、年単位で効いてくる長期の打ち手です。採用活動は会社を存続させるための超長期的な戦略であり、いちばん効くのは「そもそも採用課題を抱えない体質になること」です。その長期の打ち手として有効なのが、地域の高校・専門学校・大学とのパイプをつくることです。
弊社は採用活動を見直して以降、毎年地域の高校・専門学校・大学から短期インターンを受け入れています。受け入れ期間中の負担は当然増えます。それでも続けている理由は、学生の間で口コミが広がったり、教務課・就職課にパンフレットやチラシを置いてもらえるようになったりと、一年で終わらない接点として積み上がっていくからです。
学校との関わりがなかった企業には踏み出しづらいかもしれません。ただ、学校側にとっても学生の就職は実績になるので、快く受け入れてくれるケースがほとんどです。求人広告と違って学校側への支払いも発生しません。
インターンの受け入れをどう設計するかについては、別記事でくわしく整理しています。
参考記事:『【3つの判断軸】インターンシップの募集時期はいつから?受け入れる企業側の準備』
打ち手3|同商圏の競合を調べてから条件を決める
3つ目が、地方採用でいちばん抜けやすいところです。25〜30km圏内に同業他社がどれくらいあり、どんな条件で、どんな切り口でアピールしているのか。これを把握しないまま求人票を書いても、比較の場面で弾かれます。
求人票を出すだけなら誰にでもできます。ハローワークに持ち込んで掲載してもらうこと自体は難しくありません。効果が出ないのは、出し方の前段にある同商圏の競合分析が省かれているからです。
競合分析をしたうえで、条件をどう置くか、条件で並ばれたときに何を打ち出すかを設計する。そこまでやって、はじめて出稿が意味を持ちます。地方は商圏が狭いぶん、調べるべき対象も絞り込めます。都市部よりやり切れる作業だとも言えます。
なお、媒体の選定も出稿後の運用も、兼務の担当者が片手間で回しきれる量ではありません。弊社がお引き受けする場合も、作業の代行だけでなく、露出データを見ながら条件や打ち出し方の見直しまで一緒に考えていきます。
地方の新卒採用は、「広報解禁日」から逆算して準備する
新卒を狙うなら、採用サイトの準備は広報解禁日までに終わらせておくのが前提です。解禁日直後は、早く動く学生ほど一斉に企業の採用サイトを見に来るタイミングだからです。ここに間に合わないと、意欲の高い層と接点を持てないまま一年が過ぎてしまいます。
3つの解禁日と、地方企業が動き出すべき時期
新卒採用には、次の3つの解禁日が設定されています。
- 広報解禁日(大学3年の3月1日)……企業が求人情報を公開できるようになる日
- 選考解禁日(大学4年の6月1日)……面接など選考を開始できる日
- 内定解禁日(大学4年の10月1日)……内定を出せる日
このうち起点になるのが広報解禁日です。就職活動を早く始める学生ほど意識が高い傾向にあるため、この時期に共感を得られるコンテンツを用意できている企業が成果を上げています。
逆算すると、採用サイトの制作やコンテンツの整理は、前年のうちに着手しておく必要があります。地方企業の場合、社員インタビューの撮影や日程調整に思ったより時間がかかることも多いので、余裕を持って動き出してください。準備の時期については下記でくわしく解説しています。
参考記事:『【年内が勝負】採用サイトの準備はいつから?広報解禁から逆算する2つの準備』
なお、いまの学生が会社選びで何を見ているかは、年次によっても変わります。直近の意識調査をもとにした記事も参考にしてみてください。
参考記事:『【中小企業】新卒採用でエントリーが集まらない理由は?今すぐ効く5つの打ち手』
打ち手は業種・ターゲットで分かれる
ここまでは共通する構造と打ち手を整理してきました。ここから先は、業種や狙う人材によって効く打ち手が変わります。自社の状況に近いものから読み進めてみてください。
- 採用活動そのものの全体像を、最初から順に確認したい方 → 採用活動の進め方|6ステップの全体像
- 製造業で応募が集まらない → 製造業で採用できない理由と、魅せ方の打ち手
- 建設業の人手不足を立て直したい → 建設業の採用を立て直す進め方
- UターンやIターンの人材を採りたい → UIターン人材に選ばれる採用の進め方
- そもそも採用を回す人がいない → 人事担当がいない会社の採用の回し方
「地方採用」に関するよくある質問
Q1. 地方でも、求人広告を出さずに応募を集めることはできますか。
無料で出稿できる媒体を取り切ることから始めれば、求人広告なしでも接点を増やしていくことは可能です。ただし、媒体を選ぶ目と、条件が変わったときに全媒体を更新し続ける運用が必要になるため、片手間で回しきるのは難しいのが正直なところです。
Q2. 地方だと、そもそも応募できる人が少ないのではないですか。
通勤可能範囲が片道1時間・25〜30km圏内に限られるという意味では、母数の上限はあります。ただ、その圏内で自社が見つけてもらえているかというと、そこまで届いていない企業がほとんどです。まずは圏内での接点を増やしきってから、母数の話をしても遅くありません。
Q3. 採用サイトと求人媒体、どちらを先に整えるべきですか。
どちらか一方ではなく両輪で考えるものですが、順番でいえば受け皿となる採用サイトが先です。求職者は求人を見つけたあと、必ずと言っていいほど会社名で検索して自社サイトを見るからです。とはいえ、実務上は媒体への出稿を始めながら採用サイトを整えていく形がおすすめです。弊社の支援先でも、採用サイト制作と採用活動の代行をセットで進めるケースが多くなっています。
Q4. 採用が特に厳しい地域でも、打ち手はありますか。
あります。弊社の支援先には、岐阜県大野郡白川村のような、採用がかなり厳しい地域にある従業員20名ほどの総合建設会社もあり、支援開始から3ヶ月で有資格者の採用につながったケースがあります。もちろん同じ結果をお約束できるものではありませんが、地域の条件だけで打ち手がなくなるわけではない、ということです。
Q5. 採用の代行を頼むと、社内にノウハウが残らないのではないですか。
弊社の場合は、いずれ御社が自走できるようになることを前提に支援を設計しています。応募者対応の流れや競合分析の型を御社側に残していく形にしているため、契約が終わったあとに何も残らない、という状態にはなりません。実際に、支援開始から1年ほどで人員が充足し、その方に採用を引き継いで卒業されたお客様もいらっしゃいます。
地方だからではなく、設計されていないから採れない
ここまで見てきたとおり、地方採用で詰まっている場所は、たいてい条件でも地域でもありません。通勤圏内で見つかっているか、違いが伝わっているか、応募を決める場所があるか。この3つのどこかが抜けているだけ、というケースがほとんどです。
そして、この3つは自社だけでも取り組めます。無料媒体への出稿も、学校との関係づくりも、競合の求人票を並べて見ることも、外注しなければできない作業ではありません。ただ、本業と兼務しながら、媒体の選定と更新、競合の定点観測、応募者への対応までを止めずに続けられるか。多くの会社が息切れするのは、能力ではなく時間と人手の問題です。
今日のうちにできるのは、通勤圏内の同業他社の求人票を3社分並べて、給与と休日を横に見ることです。自社が見劣りしていなければ、詰まっているのは条件ではなく見つかり方です。
もう一段引いて見ると、採用サイトを作り込むほど、見てもらう手立ても一緒に要ります。逆に露出だけ増やしても、受け皿が薄いと応募の手前で止まってしまいます。地方採用は、この両輪をそろえたときにようやく動き出します。弊社が採用サイト制作と採用活動の代行をセットでご提案することが多いのは、受け皿がないまま露出を広げても穴の空いたバケツになることを、支援の現場で繰り返し見てきたからです。
とはいえ、最初からすべてをお任せいただく必要はありません。「無料媒体の洗い出しだけ」「競合分析だけ」といった入り方でも構いませんし、まずは現状の棚卸しからご一緒することもできます。御社の地域・業種・採用フェーズによって最適な進め方は変わりますので、まずはそのあたりをうかがったうえで、無理のない構成をご提案します。「何から手をつければいいか分からない」という段階でも大丈夫です。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。