【地方中小】中途採用が難しい4つの理由と、抜け出す5つの打ち手

「新卒はまだ動きがある。でも、中途がまるで採れない」——地方では、この声を本当によく聞きます。ハローワークにも有料媒体にも載せている。それでも応募が来ないか、来ても選考の途中で辞退されてしまう。

その実感は、気のせいではありません。中途採用は、新卒採用とは前提がまるで違う土俵で、しかも地方の中小企業にとっては構造的に分の悪い勝負になりやすい領域です。

ただ、「難しい」で止まると次の一手が出てきません。難しさを分解すると、自社で動かせる部分と、どうにもならない部分がはっきり分かれます。

この記事でわかること

  • 中途採用が難しくなっている4つの理由
  • 新卒採用と何が違うのか(中途特有の落とし穴)
  • 「応募が来ない」のか「決まらない」のか、詰まりの切り分け方
  • 地方の中小企業が取れる5つの打ち手と、押さえておきたい注意点

目次

中途採用が難しくなっている4つの理由

まず、難しさの正体を分けます。中途採用が苦しくなる理由は、おおむね次の4つです。どれも精神論ではなく、構造の話です。

理由1|転職市場が、選ばれる側と選ぶ側で逆転している

いまの転職市場では、企業が候補者を選ぶというより、候補者に自社を選んでもらう構造になっています。求職者はスマートフォンで複数の求人を並べ、条件を見比べ、気になった会社は社名で検索して口コミやサイトまで確認する。つまり、比較されたうえで応募先が決まっているわけです。

新卒と違って、中途の候補者はいま働いています。転職しないという選択肢が常に手元にある状態で比べられている、というのが実際のところです。「応募がない」のではなく「比較の土俵に上がれていない」ケースが少なくありません。

理由2|「即戦力」に絞るほど、通勤圏に候補がいなくなる

中途採用でもっとも多い詰まりが、ここだと考えています。

中途に求めるのは即戦力、という発想は自然です。育てる余裕がないから経験者を、という事情もよく分かります。ところが地方では、この絞り込みが致命傷になりやすい。現実的に通える範囲がおおむね片道1時間/25〜30km圏内に限られるため、その圏内で「業界経験3年以上」「即戦力に限る」に当てはまり、かつ今まさに転職を考えている人となると、数えるほどしかいない、ということが起こります。

しかも、その数人を同じ商圏の同業他社と奪い合うことになります。要件を厳しくするほど、母数はゼロに近づいていく。実際、自社に合わない応募を減らしたくて条件を厳しくした結果、応募が一件も来なくなった、という相談は珍しくありません。

理由3|条件だけで比べられ、大手と同じ土俵に乗る

給与、休日、賞与、勤務時間。求人票に並ぶ情報が条件だけだと、求職者は数字の大きいほうを選びます。数字の比較になれば、体力のある会社が有利です。

地方の中小企業が条件だけの土俵で戦うのは、構造的に分の悪い勝負になります。しかも同じ商圏には似た業種が集まりやすく、求職者の目には各社が同じように見えてしまう。この状態から抜け出さない限り、条件を少し上げても効き目は限定的です。

理由4|通年採用化で「募集の時期」に頼れない

新卒採用には、動く時期の目安があります。中途採用にはそれがありません。候補者は思い立ったときに動き、企業側も欠員が出たタイミングで募集を出す。つまり、いつでも募集が出ていて、いつでも比較されている状態です。

「求人を出した1か月」だけで勝負しようとすると、たまたまその期間に動いていた人しか届きません。中途採用は、短期の募集ではなく、常に見つけてもらえる状態を作る話に近いところがあります。

新卒採用と何が違うのか|中途特有の落とし穴

同じ「採用」という言葉でも、中途は勝手が違います。新卒のやり方をそのまま持ち込むと、次のようなところでつまずきます。

  • 候補者は在職中:平日日中の面接設定が難しく、日程調整で選考が止まりやすい
  • 辞退の判断が速い:他社の選考も並行しているため、連絡が数日空くだけで離脱が起きる
  • 見るポイントが違う:ポテンシャルではなく、これまでの経験と自社の仕事の重なりを見る必要がある
  • 入社後の期待値が高すぎる:即戦力として採ったつもりが、業務の進め方は会社ごとに違うため、立ち上がりに時間がかかる

最後の一つは、定着に直結します。「即戦力なのだから、教えなくてもできるはずだ」という前提で受け入れると、入社した本人が孤立します。中途こそ、最初の数か月の受け入れ方を決めておきたいところです。

「応募が来ない」のか「決まらない」のか|詰まりの切り分け

打ち手に入る前に、自社がどこで詰まっているかを見ます。ここを取り違えると、効かないところに手をかけることになります。

切り分けは単純で、次の3つのどこで止まっているかを見ます。

  1. そもそも応募が来ない:露出か、求人票の中身に原因がある
  2. 応募は来るが、選考の途中で辞退される:対応のスピードや選考の進め方に原因がある
  3. 内定を出しても承諾されない:条件の見せ方か、会社の理解度に原因がある

1つ目に当てはまる場合、原因は中途採用に固有のものというより、募集全体の構造にあることが多いところです。応募が来ない原因の切り分けは、別の記事で詳しく整理しています。

2つ目と3つ目に当てはまるなら、この後の打ち手4と5から読んでください。なお、採用活動そのものの全体像から確かめたい場合は、こちらで6つのステップに整理しています。

地方の中小企業が取れる5つの打ち手

動かせる部分に手をつけていきます。順番にも意味があるので、上から見てください。

打ち手1|要件を「育てる前提」で引き直す

最初に見直したいのは、求人要件です。理由2で触れたとおり、即戦力に絞り込むほど母数は減ります。

もちろん、資格が必須の職種など、要件を下げられない仕事はあります。それでも、多くの求人では「経験3年以上」を「未経験可・入社後に教えます」に開くだけで、届く相手の数が変わります。採りたい人物像を明確にすることと、間口を狭めることは別物です。育てる前提で、伸びしろのある人も受け入れるくらいの幅を持たせたほうが、結果的に良い人に出会える確率は上がると考えています。

もう一点。経験やスキルが十分でも、考え方が合わない人を採ると、後から組織に響きます。経験の年数より、自社の進め方に納得して働けるかを見るほうが、中途では効きます。

打ち手2|通勤圏の同業の条件を調べる

求職者は比較して選びます。だとすれば、比較される相手を知らないまま求人を出すのは、相手の手札を見ずに勝負を挑むようなものです。

近隣の同業がどんな給与レンジで、どんな休日体系で、何を打ち出しているか。ここを一度並べてみると、自社が黙っている強みが見つかることがよくあります。「土日休み」「賞与年2回」が当たり前になっている商圏で、自社の求人票にその記載がないだけで、比較した瞬間に外されていることもあります。

打ち手3|無料の媒体まで含めて使い切る

有料の媒体だけが出し先ではありません。無料で掲載できる媒体は、思っているより多くあります。中途採用は通年で動くので、常時どこかに出ている状態を作れるかどうかが効いてきます。

出して終わりにしないことも大事です。反応を見ながら見出しや条件の見せ方を調整し続ける。ここは手間のかかる部分で、兼務の担当者が一番後回しにしやすいところでもあります。

打ち手4|応募後のスピードと一次面接を決める

中途の候補者は在職中で、複数社を並行して受けています。応募から返信まで1週間空くと、その間に他社の選考が進み、辞退されます。応募が来たらできるだけ早く返すという基本だけで、取りこぼしはかなり減ります。

面接そのものも、感覚で進めると判断がぶれます。何を見極めたいのかを事前に決めておくと、限られた時間で必要なことを聞けるようになります。あわせて、候補者が在職中である前提で、平日夜や土曜、オンラインでの一次面接を用意しておくと、日程調整で止まりません。

打ち手5|条件以外の判断材料を、受け皿の側に用意する

条件で並べられると大手が有利、という構造は変えられません。変えられるのは、条件以外の判断材料を用意することです。

求職者は求人を見た後、社名で検索して会社のサイトを確認し、そこで応募するかどうかを決めています。このとき見えるのが会社案内の1ページだけだと、比較材料は条件だけになります。どんな人が働いているか、入社した人が何につまずいて何ができるようになったか、働く環境がどうなっているか。ここが伝われば、条件面で多少劣っても選ばれる余地が生まれます。

福利厚生のように、社内では当たり前になっていて求人票に書き忘れているものも、意外と判断材料になります。

参考記事:『【事例つき】採用サイトの福利厚生ページとは?若手に響く見せ方

実際の支援現場でも、この2点で動きが変わった場面があります。

岐阜県の金型メーカーでは、営業職の必須スキル条件に当てはまる求職者が通勤圏内にどれだけいるかを概算したところ、30人程度しかいないことが分かりました。そこで必須条件の一部を歓迎条件へ移し、間口を広げています。変更の直後にエントリーが入った記録が残っていました。要件は「市場に何人いるか」と突き合わせてから見直す、という順番の実例です。

逆に、選考スピードで落とした例もあります。岐阜市の電気工事会社では、資格を持つ応募者に内定を出したものの辞退されました。面接から内定まで3週間かかったことが影響した可能性が、打ち合わせで共有されています。あわせて確認されたのが、中途の候補者は在職中のまま、応募先を11社ほど並行して持って動くのが一般的だという前提です。

新卒のように「待ってもらえる」構造ではありません。良い人が出たら日を置かずに結論を出す体制づくりは、要件の見直しと同じくらい効いてきます。

中途採用で押さえておきたい注意点

打ち手とは別に、知らないと後から効いてくる部分があります。難しく身構える必要はありませんが、最低限ここは押さえておいてください。

まず、2024年4月から、求人を出す際に明示すべき労働条件が追加されました。就業場所や業務の内容に加えて、将来的にそれらが変わる可能性の範囲まで示す必要があります(※1)。古い求人票を使い回していると、知らないうちにルールを満たしていない、ということが起こり得ます。労働時間や休日の記載も、実態と食い違っていると入社後のトラブルにつながります。

<small>※1 2024(令和6)年4月1日から、募集・求人申込み時の明示事項に「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準」が追加された(職業安定法第5条の3、同法施行規則第4条の2)。参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html </small>

次に、募集・採用での年齢制限は原則禁止です(※2)。中途採用では「若手がほしい」という本音が出やすいところですが、求人に年齢の上限を書くだけで原則違反になりかねません。例外は限られています。

<small>※2 事業主は労働者の募集・採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない(労働施策総合推進法第9条、同法施行規則第1条の3第1項)。定年年齢を上限とする場合など6つの例外事由に限り、理由を提示したうえで年齢制限を設けられる。参考:ハローワークインターネットサービス「年齢制限該当事由について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/enterprise/age_limit.html </small>

同じように、性別を理由とした募集差別も禁止されています(※3)。「営業職は男性」といった書き方も、募集差別にあたる可能性があります。

<small>※3 事業主は労働者の募集・採用について性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない(男女雇用機会均等法第5条)。参考:厚生労働省 都道府県労働局「性別による差別の禁止」 https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/_85811/rodojyoken_ruru/seibetu_sabetu_kinshi.html </small>

これらはあくまで原則で、個別のケースには例外もあります。判断に迷う場合は、専門家や労働局に確認するのが安心です。

中途採用に関するよくある質問

Q1. 即戦力を諦めるということですか

そうではありません。即戦力に「限る」のをやめる、という話です。経験者からの応募も受けつつ、未経験や異業種からの応募も受けられる形にしておくと、母数が確保できます。母数があれば、その中から本当に合う人を選べます。3人の中から1人を選ぶのと、30人の中から1人を選ぶのとでは、選考の意味がまるで違ってきます。

Q2. 通年で募集を出し続けるべきですか

中途採用については、常時どこかに出ている状態を保つほうが向いています。候補者が動くタイミングを企業側でコントロールできないためです。ただし、有料の媒体に出し続けるという意味ではありません。無料で掲載できる媒体や、自社の採用サイトを常設の入口にしておく形が現実的です。

Q3. 大手と条件で競合したとき、何を打ち出せばいいですか

条件で並べられる限り、規模の大きい会社が有利になります。打ち出すのは、条件表に載らない部分です。裁量の大きさ、仕事の幅、意思決定までの距離の近さ、地元で長く働けること。どれも中小企業のほうが具体的に語れる部分ですが、求人票に書かれていないことがほとんどです。

Q4. 中途採用に使える助成金はありますか

対象となる制度が用意されている場合があります。ただ、要件や申請の期限が細かく、年度によって内容も変わるため、実際に使えるかどうかは所轄のハローワークや労働局、社会保険労務士に確認するのが確実です。制度を前提に採用計画を組む場合は、募集を始める前に確認しておいてください。

Q5. 採用した人が定着しません

中途は「教えなくてもできるはず」という前提で受け入れられがちで、そこが立ち上がりのつまずきになります。業務の進め方は会社ごとに違うので、最初の数か月の受け入れ方を決めておくだけで変わります。あわせて、入社前に伝えていた内容と実態がずれていないかも見直してください。良い面だけを伝えて採用すると、そのギャップが早期の退職につながります。

難しさの中身を分ければ、動かせる部分が残っている

中途採用が難しい理由は、市場の構造、即戦力への絞り込み、条件だけの比較、そして通年化という4つでした。このうち、市場の構造と通年化は自社では動かせません。ただ、要件の引き方と、比較されたときに何を見せるかは、自社で動かせる部分です。

そして、動かす順番があります。まず要件を開いて母数の土台を作り、常時見つけてもらえる露出を保ち、比較の場面で条件以外の材料を出す。この並びで見ると、いま自社が何をすべきかが絞り込めるはずです。

正直なところ、ここまで挙げた打ち手を、本業と兼務しながら全部回すのは簡単ではありません。採用担当の多くは専任ではなく、日々の業務の合間に採用を動かしています。中途採用は在職中の候補者が相手で、対応のスピードがそのまま結果に効くので、なおさら手が足りなくなりやすい領域です。

すべてを自社で抱える必要はありません。要件の引き直しと露出の設計だけを外の力で立て直し、面接と最終の判断は自社で握る、という形も選べます。何を任せて何を残すかの線引きは、会社ごとに違って当然です。

まずは御社の採用がどこで詰まっているのか、現状の整理からで構いません。規模や採用フェーズをうかがったうえで、着手すべき順番からご提案します。

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この記事を書いた人
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たまちゃん

マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。

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