岐阜の建設業はなぜ採れないのか|商圏の中で比べて分かった、抜け出せる一点

「若い子が入ってこない」「求人は出しているのに、問い合わせすらない」——岐阜で建設業を営む方から、この相談を受ける回数がはっきり増えました。

ただ、多くの方が次に口にする「うちは給料で負けているから」という見立ては、建設業では当たっていません。国の統計を見ると、施工管理などの技術者の年収は、全業種の平均より100万円ほど高いからです。条件で負けているわけではないのに、応募が来ない。ここが岐阜の建設業の採用の、いちばん厄介なところだと考えています。

この記事でわかること

  • 岐阜の建設会社が、実際には何と競合しているのか
  • 「給料が安いから採れない」が当てはまらない理由
  • 西濃の建設会社29社を実際に調べて分かった、商圏の中に空いている場所
  • まだ手をつけている会社が少ないからこそ効く、一点

岐阜の建設業の採用は、何と戦っているか

競合は同業他社だけではありません。とび・鉄筋・型枠といった現場職は、求職者1人を7社以上で取り合っている状態です。しかも岐阜県は県全体の求人の多さが全国4位。全国的な人の奪い合いに、県内の事情が重なっています。まずここを数字で押さえます。

求職者1人を、7社が同時に見ている

有効求人倍率という数字があります。求職者1人あたり、何件の求人が出ているかを表すものです。1倍なら1人に1件、2倍なら1人を2社で取り合っている、という見方をします。

2026年5月時点で、とび・鉄筋・型枠などの現場職はこれが7.55倍。全職種の平均が0.99倍ですから、ハローワークに1人が登録した瞬間、7社以上の求人票がその1人に向いている計算です(※1)。

<small>※1 引用:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)」参考統計表7-1(2026年6月30日公表)。職業分類「建設躯体工事従事者」7.55倍、「土木作業従事者」5.70倍、「電気工事従事者」3.22倍、「建築・土木・測量技術者」4.85倍、「職業計」0.99倍。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74004.html </small>

この数字が効いてくるのは、採用の勝負が「応募が来てから」ではなく、その手前で決まるという点です。7社が同じ1人を見ているなら、その人が最初に開く求人票と、最初に問い合わせる会社が決まった時点で、残りの6社には順番が回ってきません。面接の巧拙を磨いても、面接まで来ないのですから出番がない。

同じ建設業でも職種で差があります。土木の現場職は5.70倍、電気工事は3.22倍。とび・鉄筋・型枠がとくに厳しいのは、体力面のハードルと、天候に左右される働き方が若手の選択肢から外れやすいためだと考えられます。自社がどの職種で募集しているかで、競争の激しさは変わります。

岐阜という商圏の狭さが、競争をさらに濃くする

もう一つ、岐阜特有の前提があります。求職者が現実的に通えるのは、車で片道1時間、距離にして25〜30km圏内です。地方は電車網が弱く、車通勤が前提になるためです。

つまり、岐阜の建設会社が実際に競合しているのは全国の会社ではなく、同じ25〜30km圏内にある同業他社です。岐阜市で募集するなら各務原や羽島の会社と、大垣なら養老や海津の会社と、限られた求職者を分け合っています。

ここに、岐阜のもう一つの事情が重なります。名古屋への通勤が現実的な地域では、県内の建設会社は名古屋圏の会社とも競合します。岐阜県は求人の多さが全国4位なのに対し、愛知県は17位(※2)。これは「愛知のほうが採りやすい」という意味ではなく、愛知には求職者が流れ込んでいると読むほうが実態に近い。岐阜から名古屋へ人が出ていく構造は、県境に近い地域ほど強く効きます。

<small>※2 引用:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)」都道府県別有効求人倍率(季節調整値)。岐阜1.46倍で全国4位、愛知1.23倍で17位、全国平均1.17倍。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74004.html </small>

商圏が狭いことは、不利なだけではありません。比べられる相手が数十社に限られるということでもあります。全国の大手と競う必要はなく、その数十社の中で抜け出せばいい。この記事の後半は、その具体の話です。

「給料が安いから来ない」は、建設業では当たっていない

建設業の技術者の年収は、全業種の平均より100万円ほど高い水準にあります。つまり条件で負けているのではなく、その条件が求職者に届いていない。原因を給与に置いたままだと、直すべき場所を外し続けることになります。

数字で見ると、建設業は「安い仕事」ではない

国の賃金統計から、年収を並べてみます。月給(残業代を除いた分)を12か月分にして、年間の賞与を足した概算です。

職種 年収の目安
施工管理などの技術者 約575万円
土木の技術者 約561万円
全業種の平均 約473万円
大工 約423万円
とび・鉄筋・型枠などの現場職 約420万円
土木の現場職 約383万円

平均年齢はいずれも42〜47歳で、職種による差はほとんどありません。

<small>※3 引用:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」(企業規模計10人以上・男女計)。「全業種の平均」は同調査の「産業計」。年収の目安は「所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額」による概算で、各種手当・残業代を含まない。 https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003426315 </small>

施工管理などの技術者は575万円で、全業種の平均を100万円上回ります。一方で現場職は平均を下回る。建設業の中で待遇が二層に分かれているというのが実態です。

ここで注意したいのは、この差を「だから技術者を採ればいい」と読まないことです。技術者は待遇が良い分、求人倍率も4.85倍と高く(※1)、大手と正面から競合します。中小が現実的に採れるのは、むしろ未経験から育てる現場職のほうです。

若手が見ているのは、仕事より働き方

給与でないなら何か。求職者が建設業の求人を見送る理由は、条件の数字ではなく働き方が見えないことにあると考えています。

同じ統計に、残業時間も載っています。施工管理などの技術者は月18時間、とび・鉄筋・型枠の現場職は16時間。全業種の平均が12時間ですから、多いといえば多いのですが、極端ではありません(※3)。

ところが求人票にこれが書かれていないと、求職者は最悪を想定します。「建設業だから残業は青天井だろう」と。つまり実態は月16時間なのに、書いていないせいで青天井だと思われている。二層構造よりも、こちらのほうが直接的な損失です。同じことは休日にも、雨の日の扱いにも、社会保険にも起きています。

若手の目線で言えば、判断材料が無い求人は「怖い」ので飛ばされます。3Kのイメージが残る業種であればなおさら、書かれていない部分は悪いほうに埋められる。書いていないことは、良い方向には想像してもらえません。

まず前提として、書き方より先に、商圏の同業他社を調べて条件で勝てる部分を作ることです。ここを企業側の努力で詰めずに、書き方だけで何とかしようとしても限界があります。とび・鉄筋・型枠の現場職を7社で取り合っている市場では、なおさらです。

そのうえで、同じ条件でも伝わり方は変わります。

求人票には法律で決まっている記載事項こそありますが、それ以外に「こう書かなければいけない」という決まりはありません。にもかかわらず、多くの求人票は決まった欄を淡白に埋めるだけで終わっています。淡白に書かれた求人票は、条件の数字だけで比較されます。

たとえば年間休日。他社より少ないなら、まずは休日そのものを増やせないかを検討するのが先です。そのうえでどうしても今は動かせないなら、「年間休日105日」で止めずに「現在この水準を目標に改善を進めています」と一行足す。数字は同じでも、会社の姿勢が見えます。書けない事情があるなら、その事情ごと書くということです。

応募が来ない原因を、露出・要件・求人票・受け皿・選考スピードの5つに切り分ける考え方は、別記事で整理しています。

商圏の中で、自社はこう見えている

求職者は御社の求人を単体では見ていません。通勤圏内の同業他社と並べて見比べています。だとすれば、こちらも同じ並びで見ないと、何が足りないのかは分かりません。

そこで、実際に並べてみました。岐阜県西濃地区の建設会社29社です。

西濃の建設会社29社を、求職者と同じ手順で調べました

やったことは単純です。社名で検索して、出てきたものだけを見る。求職者がやるのと同じことを、29社ぶん繰り返しました(※4)。

求職者が社名で検索したとき 29社のうち
自社サイトが出てくる 16社
その先に採用ページがある 7社
求人媒体に出している 11社

<small>※4 弊社調べ。一般社団法人 岐阜県西濃建設業協会の会員名簿(令和8年4月1日現在・90社)から、8地区それぞれの会員数に比例するかたちで29社を抽出し、2026年7月28日にWeb検索で確認した。判定は検索結果から確認できたものに限っているため、実際の数より少なく出ている可能性がある。 https://www.seikenkyo.or.jp/meibo.html </small>

まず目を引くのは、採用ページを持っている会社が29社中7社しかないことです。4社に1社。そして3つのどれも確認できなかった会社が12社ありました。29社のうち4割は、求職者が社名で検索しても何も出てこない状態にあります。

自社サイトはあるのに採用ページが無い会社も10社ありました。会社の情報は出しているけれど、働く人の話は載っていない。求職者から見れば、調べても判断材料が増えないという点で、サイトが無い会社とあまり変わりません。

一方で、動き始めている会社もあります。29社のうち2社は、会社のサイトとは別に採用専用のサイトを独立したドメインで持っていました。1社にいたっては、会社のサイトが確認できず採用サイトだけがある。採用のほうが先だ、という判断だと読めます。

つまり商圏の中は、まだ何もしていない4割と、採用サイトまで作り込んだ数社に割れていて、真ん中がごっそり空いている。29社を並べて分かったのは、この空白でした。

3つのうち、いくつ当てはまるか

29社の傾向は、そのままでは自社の話になりません。ただ、確かめるのに時間はかかりません。やることは、自社を1社ぶん、同じ手順で見るだけです。

御社の社名で検索して、次の3つを確認してください。

  1. 自社サイトが出てくるか——出てこなければ、求職者にとって御社は「調べても分からない会社」です
  2. その先に採用ページがあるか——会社案内の中に採用情報が一行あるだけか、働く人が見える形になっているか
  3. 求人媒体に出ているか——ハローワークだけか、IndeedなどのWeb求人にも載っているか

5分あれば終わります。ちなみに3つとも当てはまった会社は、29社のうち4社でした。

もう一段踏み込むなら、次の2つも見てください。今回の調査では外から一律に確認できなかったので集計に入れていませんが、実務では、ここがいちばん差になります。

  • 求人票に仕事の中身が書いてあるか——「土木作業員」の一言で終わっているか、1日の流れや扱う機械まで書いてあるか
  • 働く人の顔が見えるか——社員インタビューや現場写真があるか

サイトの有無は、費用をかければどの会社でも並べます。ところがこの2つは書く材料を社内から集める手間が要るので、後回しにされやすい。だから差がつきます。

なお、この調査は同業他社を批判するために行ったものではありません。自社の立ち位置を知るためのものなので、結果は個社名ではなく全体の傾向として扱っています。

少数派のうちに整えるほうが安い

抜け出す一点は、受け皿です。求職者が応募を決めるのは求人媒体の画面ではなく、社名で検索して会社を調べた先だからです。そして前章のとおり、受け皿を整えている会社は29社中7社しかいません。先に手を入れた分が、そのまま差になります。

応募を決めているのは「調べた先」

求職者の動きを追うと、だいたい次の順に進みます。求人媒体で見つける、社名で検索して会社を調べる、応募するかを決める。最後の判断は2番目の段階で起きています。

1人の求職者を7社が見ている市場では、その人は複数社を同時に調べています。そのとき、片方は現場の様子と働く人が見えて、もう片方は会社概要しか出てこない。条件が同じなら、どちらに問い合わせるかは考えるまでもありません。

露出を増やして求人票を磨いても、調べた先に何も無ければ、応募の一歩手前で取りこぼす。露出と受け皿は両輪で、片方だけでは応募という形になりません。

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岐阜県内での実例

弊社の支援先に、岐阜県大野郡白川村で総合建設業を営む従業員20名ほどの会社があります。2024年6月に支援を開始し、開始3ヶ月で即戦力となる有資格者の採用に至りました。年間の応募数も6人(2024年)から17人(2025年)へ増えています(※5)。

この会社が特別なことをしたわけではありません。支援に入る前は、採用のために特別な手を打っていない状態でした。 人口の少ない市町でもともと集まりにくいうえに、集めるための対策も打てていない。「採用したい人を採用したい」と考えながら、そこで止まっていました。

これは地方企業で本当によく見る状態です。「人が集まらない」と言いながら、実際にはまだ何も手をつけていない。しかも打てる手のうち何割かは、費用がかかりません。ハローワークに求人票を出す、高卒を採りたいなら高校や専門学校に求人票を持ち込む。難しいことではないのに、兼務では手が回らずに止まっています。

この会社で動いたのは、その止まっていた部分を弊社が巻き取ったからです。29社の調査で「3つとも確認できない会社が4割」という結果が出たのも、同じ構造だと考えています。やらない理由があるのではなく、やる時間がない。

白川村は県内でも通勤圏が孤立した立地で、条件だけで見れば不利な部類に入ります。同じ取り組みで同じ結果が出ることをお約束するものではありませんが、商圏が狭いことは、必ずしも不利ではないという一例にはなると思います。

<small>※5 弊社(地方採用ワークス)の採用活動の代行(リープ・リクルーティング)による支援実績。 </small>

建設業全体の構造や、他エリアでの立て直し方は、別記事で扱っています。

参考記事:『”3K”を払拭!「土木・建設業界」の求人・採用サイトデザイン事例13選!

岐阜の建設業の採用についてよくある質問

Q1. 求人倍率がこれだけ高いなら、条件を上げないと無理でしょうか

条件を上げる努力は必要です。ただしその前に、商圏の同業他社がどんな条件を出しているかを確認してください。 上げるにしても、比べる相手を知らないまま上げると、費用をかけた割に競り負けます。

そのうえで、いまの求人票に残業の実態・休日・1日の流れが書かれているかも見てください。現場職の残業は月16時間ほどで、極端に長いわけではありません。実態が書かれていないせいで悪く想像されているなら、条件だけ上げても解決しないからです。順番としては、競合の条件を調べる → 上げられるところを上げる → 上げられない部分は事情ごと書く、になります。

Q2. 未経験者を採ったほうがいいのでしょうか

中小が現実的に採れるのは未経験層です。技術者は待遇も良い分、大手と正面から競合します。ただし未経験を採るなら、入社後どう育てて何年で一人前になるのかを、求人票と採用ページに書いておく必要があります。そこが空白だと、未経験者ほど不安で応募できません。

Q3. 記事にある29社の調査を、自社の商圏でもやったほうがいいですか

やるに越したことはありませんが、まずは自社1社を同じ項目で見るところからで十分です。29社を並べたのは「商圏の中に空白がある」ことを確かめるためで、御社が動くかどうかの判断には、自社が3項目のいくつを満たしているかが分かれば足ります。商圏全体の調査が必要になったら、弊社でお引き受けもしています。

Q4. 採用サイトを作れば応募は増えますか

増えるとお約束はできません。採用サイトは受け皿なので、そもそも求人が見つけてもらえていなければ効果は出ません。露出と受け皿の両方が揃って、初めて応募という形になります。順番としては、いまどちらが欠けているかを確かめるところからです。

Q5. 飛騨や東濃でも同じ考え方が使えますか

使えます。むしろ飛騨のように通勤圏が孤立した地域ほど、比べられる相手が絞られるぶん、この考え方は効きます。今回調べたのは西濃地区なので、割合そのものはエリアによって変わります。競合の顔ぶれと、名古屋圏への人の流出の強さも変わるので、確認は自社の商圏で行ってください。

商圏が狭いことは、抜け出す側から見れば有利に働く

岐阜の建設業が採れない理由を、求人の多さ、賃金、商圏の見え方の順に見てきました。通して言えるのは、原因が条件そのものよりも条件が伝わっていないことの側にある、ということです。技術者の年収は全業種の平均を100万円上回り、現場職の残業も月16時間ほど。数字だけ見れば、避けられる理由のほうが少ない業種です。

それでも避けられているのは、求職者がその数字を知る手前で判断しているからです。社名で検索して何も出てこない、求人票に働き方が書かれていない。判断材料を渡していない会社から順に、候補から外れていきます。

そして商圏が25〜30kmに限られるということは、比べられる相手も数十社に限られるということです。全国の大手と競う必要はありません。西濃の29社を並べて見えたのは、採用ページまで用意している会社が7社だけで、真ん中が空いているという構図でした。競争が激しい市場ほど、先に埋めた分の差は早く効いてきます。

まずは御社の社名で検索して、3つのうちいくつ当てはまるかを見てみてください。そのうえで、御社の商圏でも同じように並べてみたいということでしたら、調査からご一緒します。結果を見ながら、露出と受け皿のどちらから手をつけるべきかを整理します。

採用活動の代行(リープ・リクルーティング)はこちら

この記事を書いた人
岐阜の建設業はなぜ採れないのか|商圏の中で比べて分かった、抜け出せる一点 | 採りたい人・エリア別
たまちゃん

マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。

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