【例つき】求人の給与表記の書き方|固定残業代・月給の幅・手当の見せ方
「月給20万円〜45万円」と幅で書くべきか、「月給28万円(固定残業代含む)」とまとめるべきか——求人票づくりで、給与欄ほど筆が止まる項目はないと思います。少しでも高く見せたい気持ちと、入社後のトラブルは避けたい気持ちの板挟みになって、結局よその求人の書き方をそのまま真似てしまう。そんなケースをよく見かけます。
先にお伝えしておくと、給与表記で問われているのは、金額の高さだけではありません。内訳の分かりやすさと正直さです。求職者は同じ商圏の求人を並べて見比べているので、曖昧な給与欄は「何か隠しているのでは」という不信につながり、金額で勝っていても比較の土俵から外れてしまいます。逆に言えば、条件で勝ちきれない会社でも、見せ方しだいで「この会社は信用できそうだ」と思ってもらう余地が残っている、ということです。
この記事では、求人の給与表記の書き方を、法令のルール・固定残業代・月給の幅・手当の見せ方の順に、NG例と例文つきで整理していきます。
この記事でわかること
- 給与表記の前提になる法令のルール
- 固定残業代(みなし残業)を書くときの「3点セット」
- 月給に幅を持たせるときの考え方と例文
- 応募が集まらない給与表記のNG例と直し方
給与表記で応募が変わる理由|金額より「分かりやすさ」で比較される
まず、給与表記が応募にどう効くのかを押さえておきます。結論から言うと、求職者は給与欄を、額の高さと同じくらい「内訳が分かるか・正直そうか」で読んでいます。内訳の見えない求人は、その時点で候補から静かに外される。これが実際のところです。
転職や就職は人生の一大イベントですから、求職者は複数の求人を慎重に見比べます。額面が近ければ、判断材料は「どちらの給与欄が信用できるか」に移ります。「月給28万円」とだけ書いてあり、面接で聞いたら固定残業代込みだった——この種のガッカリは、いまや応募の手前で警戒されています。給与表記は金額競争の場である以前に、会社の誠実さが最初に試される場だというわけです。
求人の給与表記に関わる法令|最低限ここだけは押さえる
給与欄は、自由に書いていい欄ではありません。労働者を募集するときに賃金を明示することは、職業安定法にもとづく労働条件明示の一部と位置づけられています(※1)。難しく身構える必要はありませんが、次の点だけは押さえておきましょう。
- 賃金の明示:求人を出す段階で、賃金の決定方法や額(見込みを含む)を示します(※1)
- 固定残業代の内訳明示:固定残業代を含めて表記する場合は、内訳の明示が求められます(次の章の「3点セット」/※2)
- 最低賃金を下回らない:地域別最低賃金は、毎年の審議を経て改定額が決まります(※2)。月給を所定労働時間で時給換算して確認しておくと安心です
- 試用期間中の条件:試用期間中に給与が変わる場合は、その旨と期間・金額を明示します
<small>※1 労働者の募集・求人申込みの際に明示すべき労働条件は職業安定法第5条の3および同法施行規則第4条の2で定められており、賃金はその明示事項に含まれる。参考:厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html </small>
<small>※2 地域別最低賃金は、中央最低賃金審議会が示す引上げ額の目安を参考に地方最低賃金審議会が審議・答申し、都道府県労働局長の決定により発効する。参考:厚生労働省「地域別最低賃金の改定」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/chiikibetu_00002.html </small>
なお、2024年4月からは業務内容や勤務地の「変更の範囲」まで明示事項に加わっています(※3)。古いテンプレートの使い回しには注意し、個別の判断に迷う場合は労働局や社会保険労務士に確認するのが確実です。
<small>※3 2024(令和6)年4月1日から、募集・求人申込み時の明示事項に「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準」が追加された。参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html </small>
求人票全体で明示すべき労働条件や項目ごとの書き方は、こちらの記事で一通り整理しています。
参考記事:『【保存版】求人票の書き方は?テンプレ代わりに使える3つの型と具体例を解説』
固定残業代(みなし残業)の書き方|「3点セット」で明示する
給与表記のつまずきで、いちばん多いのが固定残業代です。結論から言うと、固定残業代(みなし残業代)を含めて表記する場合は、厚生労働省が次の3点セットをすべて明示するよう求めています(※4)。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代にあたる時間数と金額
- 固定残業時間を超えた分は別途支給する旨
<small>※4 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークは、固定残業代制を採用する場合、募集要項や求人票に①固定残業代を除いた基本給の額、②固定残業代に関する計算方法(算定基礎とする時間数と金額)、③算定基礎となる時間数を超える時間外労働・休日労働・深夜労働分の割増賃金を追加で支払う旨、のすべてを明示するよう求めている。参考:厚生労働省「固定残業代制を採用する場合は、募集要項や求人票などに、次の①〜③の内容すべてを明示してください」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000184068.pdf </small>
例文で比べると、違いがはっきりします。
- ❌ NG例:「月給28万円(固定残業代含む)」
- ⭕ 例文:「月給28万円(基本給23万円+固定残業代5万円/30時間分。30時間を超える時間外労働分は別途支給)」
NG例は、何時間分がいくら含まれているのかが分からず、厚生労働省が求める3点セットの明示(※4)を満たしていません。求職者から見ても「残業がどれだけあるのか読めない求人」に映ります。
見せ方の本音もお伝えしておくと、総額を大きく見せたくて固定残業代を厚めに積む書き方はおすすめしません。時給換算で見劣りすることに、比較している求職者は気づくからです。計算できる人ほど逃げていく書き方になってしまうんですよね。
月給に幅がある場合の書き方|「下限の額」で読まれる前提で
「月給20万円〜45万円」のように幅を持たせる書き方も、給与欄の定番の悩みです。ここでの結論は一つで、幅のある月給は、上限ではなく下限で読まれるということです。幅が広すぎる求人ほど、「実際に払われるのは下限なのでは」と受け取られます。
幅そのものが悪いわけではありません。問題は、幅の根拠が書かれていないことです。幅の理由とモデルケースをセットにするだけで、同じ数字でも伝わり方が変わります。
- ⭕ 例文:「月給22万円〜32万円(経験・能力を考慮のうえ決定。未経験入社の場合は22万〜24万円スタート)」
- ⭕ あわせて:「入社3年目・現場リーダー:月給29万円」のようなモデル月収を併記
求職者が知りたいのは「自分ならいくらか」です。幅の両端だけでは自分の位置が分からず、判断を保留されてしまいます。具体性は、それ自体が信用になります。
手当・賞与の見せ方|総額で盛らず、内訳と条件まで書く
手当や賞与も、見せ方で差がつく欄です。結論から言うと、手当込みの総額だけを大きく見せる書き方は、その場の閲覧数は取れても、応募の質とその後の定着を下げます。基本給と手当を分け、支給条件まで書くのが、遠回りに見えて応募が集まる書き方です。
ポイントは2つあります。
- 手当は名前だけ並べない:「各種手当あり」で終わらせず、「通勤手当(上限あり)・家族手当・資格手当(対象資格と月額)」のように、何がいくら・どんな条件で付くのかまで書く
- 賞与は実績で書く:「賞与年2回」だけでなく「昨年度実績◯か月分」まで書く。業績次第で変動するなら、その旨も正直に添える
基本給と手当の区別を曖昧にした求人は、入社後の「聞いていた話と違う」につながり、早期離職の火種になります。
支援先の求人票を添削していて多いのは、次の4つのパターンです。
- 賞与・退職金・給与改定といった制度が、給与欄の外(仕事内容欄)に一度も出てこない
- 手当や社宅など収入に直結する情報が、給与欄の下のほうに埋もれている
- 複数職種がすべて同一の給与レンジで並び、経験者から見て自分の評価が読めない
- 残業の表記が実態より重く見える、あるいは媒体間で条件が食い違っている
たとえば三重県の金属加工メーカーでは、賞与年2回・給与改定・退職金という制度が本文に一切ありませんでした。そこで「月給258,000円〜300,000円に加え、賞与年2回・給与改定あり・退職金制度あり」という形で、冒頭100文字に集約しています。
3の例では、福井県の金属加工・物流系の製造業で4職種すべてが月給19.6万〜30.1万円という同一レンジでした。経験者向けを22万〜35万円へ分けたうえで、応募資格も「実務経験3年以上・フォークリフト免許必須」と具体化しています。
この種の書き換えの効果は、応募数の増減より先に「応募の質」に現れると考えています。給与の内訳と条件が最初から読める求人は、条件を誤解したままの応募が減り、面接で給与の説明に費やす時間も減ります。効果を確かめるときは、応募数だけでなく、面接で出る質問の中身と選考途中の辞退理由を、書き換えの前後で見比べてみてください。
応募が集まらない給与表記のNG例と直し方
ここまでの内容を、実際の求人でよく見かけるNG例の形で整理しておきます。テンプレートや見本を探す前に、まず自社の求人票がこうなっていないかを確かめてみてください。
- NG例1「月給25万円以上」:内訳も上限もなく、判断材料がない。→ 基本給・手当・幅の根拠を分けて書く
- NG例2「月給28万円(みなし残業代含む)」:時間数と金額がない。厚生労働省が求める3点セットの明示(※4)も満たさない。→ 3点セットで書き直す
- NG例3「月給18万円〜50万円」:幅が広すぎて下限で読まれる。→ 幅を現実的な帯に絞り、モデル月収を添える
- NG例4「頑張り次第で高収入!」:根拠のない煽りは、不信と法令リスクの両方を招く。→ 実在するモデルケースの数字に置き換える
共通しているのは、どれも「盛ろうとして、かえって信用を失っている」ことです。給与表記の直し方は、突き詰めると盛るのをやめて、具体的に書くの一言に尽きます。
そのうえで、給与欄だけを整えても、求人票全体で「選ばれる理由」が伝わらなければ勝ちきれません。条件で勝てない会社の求人票戦略は、こちらの記事で掘り下げています。
求人の給与表記に関するよくある質問
Q1. 給与は手取りと額面、どちらで書くべきですか
額面(総支給額)で書くのが原則です。手取り額は扶養や保険の状況で人によって変わるため、求人票の段階では確定できません。目安として書きたい場合は「額面」「手取り想定」のどちらなのかを明記してください。
Q2. 給与を少しでも高く見せる書き方はありますか
総額を盛る方向ではなく、内訳と根拠を足す方向をおすすめします。見かけの数字を上げても、比較されれば見抜かれます。モデル月収や昇給の実例など「入社後にいくらになるか」の具体性を足すほうが、額面以上の説得力が出ます。
Q3. 賞与が出ない年もあります。どう書くべきですか
「賞与年2回(業績による。昨年度実績◯か月分)」のように、実績と変動の可能性をセットで書くのが誠実です。出ない可能性を隠して「賞与あり」とだけ書くと、入社後の不信につながり、かえって高くつきます。
給与欄は「正直さ」がいちばんの見せ方になる
給与表記の書き方を、法令・固定残業代・月給の幅・手当の順に見てきました。通して言えるのは、給与欄で効くテクニックは「高く見せる工夫」ではなく「正直に、具体的に書く工夫」だということです。同じ商圏で似た条件が並ぶ地方の採用では、内訳まで開示している求人はそれだけで頭一つ抜けます。
そしてもう一つ。給与欄がどれだけ整っても、求人がそもそも求職者の目に触れていなければ、比較の土俵に上がれません。求人票の中身と、見つけてもらうための露出は両輪です。「書き方は直したが、それでも応募が来ない」という段階でも大丈夫です。給与欄一つの添削からでも構いません。まずは現状をうかがったうえで、御社に合った直し方をご提案します。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。