【保存版】採用ピッチ資料の作り方は?5ステップの手順と採用サイトの使い分け
「面接のたびにゼロから会社を説明している。説明会で話したはずのことが、後日の面談で『初めて聞きました』と返ってくる……」
——採用の現場でこうした手応えのなさが続いていると、自社には語れる魅力がないからだと諦めてしまいがちです。
しかし、求職者に会社の魅力が伝わらないのは、文化や魅力がないからではありません。求職者にそのまま渡せる形になった会社の説明が用意されていないからです。
その受け皿となるのが「採用ピッチ資料」です。「うちには語れる文化がないから」と諦めている会社ほど、実は資料を作れるだけの材料をすでに持っています。
この記事では、採用ピッチ資料とは何か、採用サイトとどう使い分けるのかを整理します。そのうえで、載せるべき構成10項目と5ステップの作り方、採用サイト制作の延長で作る進め方、採用以外にも使えるファクトブックとしての活用法までをお伝えします。最後に、渡す場面とよくある失敗についても解説します。
この記事でわかること
- 採用ピッチ資料とは何か、採用サイトとどう使い分けるのか
- 載せるべき構成10項目と、5ステップの作り方
- 採用サイト制作の延長で作るという進め方
- 採用以外にも使える「ファクトブック」としての活用
- 渡す場面と、よくある失敗
「採用ピッチ資料」とは
採用ピッチ資料とは、求職者に向けて自社の事業内容や働き方、抱えている課題までを1冊にまとめたスライド資料のことです。ページ数は20〜40ページ程度になり、面談前の事前共有や、説明会での配布によく使われます。
もともとはスタートアップ企業が、投資家向けのピッチ資料を採用活動に向けて転用したところから広まった呼び方です。現在では、業種や企業の規模を問わず、多くの会社で作られるようになっています。
会社案内との違いは「弱みを載せるかどうか」
会社案内は、取引先に向けて自社の「良さ」を伝えるための資料です。対して、採用ピッチ資料は求職者に向けて自社の「実態」を伝えるための資料です。両者は性格がはっきりと異なります。
最大の違いは、自社の弱みや課題まで載せる点にあります。「まだ整っていない制度」や「これから作っていく段階の部署」についても正直に書きます。これが求職者にとって信頼できる判断材料になり、企業にとっては入社後のミスマッチを防ぐことにつながるからです。良いことばかりを書いた資料は、読んだ側が身構えて警戒するだけで、結局は会社の魅力が何も伝わりません。
カルチャーデックとの関係
「カルチャーデック」と呼ばれるものも、採用ピッチ資料とほぼ同じものを指しています。
厳密に言うと、カルチャーデックは会社の価値観や行動指針に軸足を置いた資料です。一方の採用ピッチ資料は、事業の説明から働く条件までを幅広く含む資料です。このような使い分けをすることもありますが、実務の上では同じ意味と考えて問題ありません。
採用サイトとの使い分けは「待つ」と「届ける」
採用サイト制作のご相談を受ける中で、弊社が最も多く尋ねられるのがこの使い分けについてです。「採用サイトがすでにあるのに、別で資料も必要なのか」という疑問はもっともです。
結論からお伝えすると、両者は役割が違うため、両方あって初めて噛み合う関係になります。
採用サイトは「待つ」、ピッチ資料は「届ける」
採用サイトは、求職者が自分から検索してたどり着く場所です。24時間いつでも開いていて、誰にでも見せられますが、企業側から直接届けることはできません。
一方の採用ピッチ資料は、企業側から求職者へ直接渡す資料です。面談の前にメールで送ったり、会社説明会で手渡したりと、能動的に届けられるのが強みです。求職者がまだ応募していない段階での接点作りに使えます。
応募の最終判断は、採用サイト側で起きている
ここで順番として押さえておきたいのは、資料を読んで興味を持った人は、大抵その後に社名で検索するという点です。
検索して出てきた採用サイトが古いままだと、資料でせっかく高まった関心がそこでしぼんでしまいます。逆に、採用サイトだけを立派に作り込んでも、企業から届ける手段がなければ「待ち」の採用活動から抜け出せません。片方だけを整えても、もう片方で求職者の動きが止まってしまいます。
【完全保存版】採用サイトとは?4つの働きと、依頼前に押さえる費用・期間の目安
「求人広告を出しても応募が来ない」——地方の中小企業からいただくご相談で、一番よく伺う声です。専任の担当者がおらず、兼務で時間がないなか、次の一手として「とりあえず採用サイトを作ろう」という話になりがちです。 ここで注意したいのが、立派な採用サイトを作れば自動的に応募が増えるわけではないという
迷ったら「採用サイト」が先
応募するかどうかの最終判断が採用サイト側で起きている以上、受け皿がない状態で資料だけ配っても着地点がありません。
そのため、どちらから作るか迷ったら、まずは採用サイトを用意してください。そのうえで、次の章で詳しくお伝えしますが、採用サイト制作で集めた材料はそのまま資料作りに使えます。順番を守って進めれば、作業が二度手間になることはありません。
採用ピッチ資料の構成と、載せるべき10項目
構成に決まった正解はありませんが、「会社を知る → 仕事を知る → 働き方を知る → 一歩を決める」の順に並べると、読み手の疑問とスムーズに噛み合います。地方の中小企業であれば、次の10項目で組み立てるのがおすすめです。
01〜04. 会社を知る
- 表紙とこの資料の目的:この資料が誰に向けて書かれたもので、何を知ってもらうためのものなのかを最初に明示します。
- 事業内容:自社が何を作り、誰に売っているのかを書きます。専門用語は使わず、実際に何をしているかが伝わるようにします。
- 数字で見る会社:従業員数、平均年齢、拠点の数、創業年などを載せます。誇張せずに事実だけを書きます。
- これまでの歩みとこれから:会社がどう変わってきて、これからどこへ向かうのかを説明します。
05〜06. 仕事と、一緒に働く人を知る
- 働く環境:勤務時間はどうなっているか、休日はどのくらいあるか、通勤の手段やリモートワークの可否など、求職者の日々の生活に直結する情報を載せます。
- 一緒に働く人:部署ごとの人数と年齢構成、社員の1日のスケジュールなどを紹介します。
07〜09. 入社後の姿を知る
- 入社後の育成とキャリア:入社して半年後や3年後にどうなるかを書きます。研修の仕組みや資格取得支援の実態も載せます。
- 社員インタビュー・実際の事例:入社した理由に加えて、入ってみて感じたギャップまで正直に語ってもらいます。
- 正直に伝えたい課題:まだ整っていない制度、これから作る仕組み、仕事の大変な時期などを伝えます。
9番目を入れられるかどうかが、この資料の質を分けます。書きにくい部分ですが、ここが空白になっている資料は、従来の会社案内と変わりません。
10. 一歩を決める
- 選考の流れと次のアクション:応募から入社までにかかる日数と、次に何をすればいいかを具体的に案内します。
採用ピッチ資料の作り方と5ステップの手順
ステップ1|誰に向けた資料かを1行で決める
「新卒向け」と「中途の経験者向け」では、資料に載せるべき情報がまったく変わります。最初にターゲットを絞り込んでおかないと、全方位に配慮した中身の薄い資料になってしまいます。まずは応募が一番欲しい1職種に絞って作り始めるのが、確実な進め方です。
ステップ2|社内から事実を集める
つくる前にやるのは、デザインではなく事実の収集です。部署ごとの人数、平均の勤続年数、実際の残業時間、直近3年の入社者数と定着状況などを集めます。社内では当たり前になっている数字ほど、外から見る求職者にとっては価値があります。ここで数字を盛らずにありのままを出すことが、資料全体の信用を決めます。
ステップ3|文章を先に固める
資料づくりは、文章が先でデザインが後です。スライドの見た目から入ってしまうと、まだ決まっていない中身を装飾でごまかすことになります。まず各ページで「何を言い切るか」を一文で書き、そのあとに補足を足していく。この順番だけは崩さないようにしてください。
ステップ4|スライドに落とす
資料の作成そのものは、社内にあるPowerPointやGoogleスライドといったツールで構いません。1ページにつき1つのメッセージを守り、写真は実際の職場のものを使います。素材集の写真を並べると、それだけで実態が伝わらない資料になります。
写真撮影については、社内のスマートフォンで済ませるよりも、撮影だけはプロのカメラマンに依頼するコスト配分をおすすめします。人と場所が写った写真は、文章の何倍も早く会社の空気を伝えてくれるからです。
ステップ5|社員に見てもらってから公開する
資料が完成する前に、現場の社員数名に見てもらってください。「うちってこんな会社でしたっけ」という反応が出た場合、その部分は会社の実態とずれています。求職者に配る前に、内部の目で答え合わせをする工程を挟むだけで、入社後のギャップはかなり減らせます。
+|制作にかかる期間の目安
中小企業が最初の1冊を作る場合、表紙込みで20ページ前後、制作期間は2〜3か月を見ておくのが現実的です。
時間がかかるのはデザイン作業ではなく、掲載する事実を集める工程です。数字の確認、社員への取材、写真撮影などに時間がかかります。ここを丁寧にやるほど、資料の説得力が決まります。
採用サイト制作の延長で作るという進め方
採用ピッチ資料をゼロから作ろうとすると、事実の収集から撮影、原稿作成、デザインまで一式をそろえることになります。兼務の担当者がこれを単独で立ち上げるのは、正直かなり重い作業です。
現実的なのは、採用サイトを作るタイミングに合わせて、同じ材料から資料も一緒に組み立てる進め方です。
使い回せる材料は、思っているより多い
採用サイト制作では、以下の材料をひととおり用意します。
- 社員インタビューの原稿と写真
- 職場や現場の撮影データ
- 数字で見る会社(従業員数、平均年齢、拠点など)
- 事業内容を求職者向けに書き直した文章
- 募集要項と選考の流れ
これらは、採用ピッチ資料の構成要素とほぼそのまま重なります。サイト用に撮った写真も、書き起こした原稿も、資料に流用できます。
別々に作ると、費用も手間も二重になる
サイトを作った半年後に「やっぱり資料も」となると、撮影も取材もやり直しになります。人が入れ替わっていれば写真は使えませんし、担当者の記憶も薄れてしまいます。
同時に進められるなら、取材と撮影は1回で済みます。採用担当を兼務で回している体制ほど、この差は大きく効いてきます。
採用以外にも使える「ファクトブック」としての活用
採用ピッチ資料には、もう一つ見落とされやすい使い道があります。自社の事実を1冊にまとめた資料は、採用以外の場面でもそのまま使えるという点です。
事業内容、沿革、従業員数、拠点、会社の取り組みなど。これらを求職者向けに分かりやすく整理した資料は、次のような場面でも役に立ちます。
- 高卒採用での学校訪問:進路指導の先生や保護者に説明する資料が必要になります。求職者本人ではなく「本人の判断を左右する人」に渡せる形があるかどうかで、話の進み方が変わります。
- 金融機関や取引先への説明:従来の会社案内よりも実態が伝わるため、事業を理解してもらうための良い材料になります。
採用ピッチ資料は採用ツールであると同時に、自社を説明するためのファクトブックでもあります。1冊作れば複数の場面で使えるという点は、制作の投資を判断する材料になるはずです。
渡す場面と使い方
渡すのは「まだ応募していない」段階
採用ピッチ資料は、作って置いておくだけでは効きません。求職者が「まだ応募していない」段階の接点に、繰り返し差し込むのが基本的な使い方です。
- 面談や面接の前に送る:面談の前にあらかじめ資料を読んでもらえば、当日の貴重な30分間をゼロからの会社説明に費やす必要がなくなります。その時間を、お互いの相互理解を深めるための対話に使えます。
- 合同説明会や会社説明会で配る:その場で全部を話し切れなくても、持ち帰って読んでもらえます。
- 採用サイトに掲載する:検索から来た人がその場でダウンロードできる状態にしておきます。
- 学校訪問で渡す:高卒採用では、先生と保護者に説明できる形があるかどうかが効きます。
- 社内で共有する:面接に入る社員全員が同じ資料を読んでいると、説明の食い違いがなくなります。
- スカウトを送っている場合は添える:本文で全部を語ろうとせず、興味の入口だけを書いて資料に渡します。文面の組み立ては返信率を上げるスカウトメールの書き方と例文で整理しています。
資料・採用サイト・求人票で、見た目の印象をそろえる
資料を配布物として扱うときに気をつけたいのが、採用サイトや求人票とデザインの毛色をそろえることです。説明会で受け取った紙の資料と、検索して開いた採用サイトの印象がまるで違うと、求職者はそこに違和感の段差を感じます。
求職者は求人票で会社を知り、社名で検索してサイトを見て、そこで応募を決めます。手元の資料とウェブサイトの間で見た目のイメージを継承しておくのが、地味ですが効くポイントです。
資料より先に読まれるのは、求人票
なお、求職者との最初の接点は、多くの場合が求人票です。そちらの中身が薄いままだと、そもそも資料を読んでもらう段階まで進みません。求人票側の整え方については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてください。
参考記事:『【保存版】求人票の書き方は?テンプレ代わりに使える3つの型と具体例を解説』
よくある失敗と、避けられがちな「課題」ページ
採用ピッチ資料における一番多い失敗は、体裁が整いすぎて実態が消えてしまうことです。デザインを外部に任せ、文章を当たり障りのない言葉に整え、写真を素材集で揃えると、どこの会社の資料にも見える1冊ができあがります。求職者はそれを読んで「良さそうな会社だ」とは思っても、「自分がここで働く姿」を思い描くことはできません。
見落とされがちな失敗は5つ
- 課題のページがない:良いことだけが書かれた資料は、読み手に警戒されます。
- 数字がひとつも入っていない:「風通しがいい」より「部署は4名で平均年齢32歳」のほうが明確に伝わります。
- 一度作って更新していない:人数も制度も変わります。年1回は見直す前提で作ってください。
- 社員の顔が出てこない:地方の採用ほど「誰と働くか」が重要な判断材料になります。
- 採用サイトと言っていることが違う:情報源が2つに分かれると、どちらも信用されなくなります。
「課題」のページは弱みの告白ではなく保険
「正直に伝えたい課題」のページを作るよう提案すると、多くの企業では最初にためらいが出ます。弱みを見せたら応募が減るのではないか、という不安があるからです。
課題のページは弱みの告白ではなく、「入社後に知られたら辞められること」を先に伝えておく保険だと考えてください。求職者は入社すれば数週間で会社の実態を知ります。先に知ったうえで応募してくれた人と、入社後に知ってがっかりした人。定着するのがどちらかは、比べるまでもありません。
「採用ピッチ資料」に関するよくある質問
Q1. 何ページくらいが適切ですか。
20〜40ページが一つの目安になります。ページ数よりも、この記事で紹介した10項目が埋まっているかで判断してください。まずは表紙を含めて20ページ程度で作り、運用しながら足りない部分を足していくやり方が確実です。
Q2. 社内で作るべきか、外部に依頼すべきか、どちらがいいですか。
事実の収集と文章の骨格は、社内でしか作れません。デザインと構成の整理については、外部に任せられます。丸ごと外注すると当たり障りのない資料になりやすいので、中身は自社で用意し、見せ方は外部に頼むという分担が噛み合いやすいです。
Q3. 制作の費用はどれくらいかかりますか。
ページ数、写真撮影の有無、原稿を自社で書くか任せるか、採用サイトと併せて作るかどうかで大きく変わります。そのため、一律の目安をお伝えするのは難しいところです。相場の数字を当てはめるよりも、自社の場合に何が必要かを内訳で考えるほうが、結果的に判断を誤りにくくなります。
Q4. 「うちには語れる文化がない」と感じています。
文化を語る必要はありません。事業の中身、働く時間、一緒に働く人、育成の実態、そして課題。事実を正直に並べるだけで、資料としては十分に成立します。むしろ理念だけが並んだ資料のほうが、読み手には響きません。
Q5. 作ったあと、どれくらいの頻度で更新すべきですか。
年1回の見直しを基本にして、人数や制度が変わったタイミングで直すのがおすすめです。数字が古いまま配られている資料は、それだけで会社の実態への信頼を損なってしまいます。
資料づくりは、自社を言葉にし直す作業
一通り作ってみると、多くの会社が同じことに気づきます。資料をつくる作業の大半は、デザインではなく、自社の実態を言葉と数字に置き直す作業だったということです。
もう一つ押さえておきたいのは、資料を受け取るのは、人生の一大イベントとして次の職場を選ぼうとしている一人の人間だということです。良いことだけを並べた資料は、その人の判断を助けません。整っていないところまで正直に書いてある資料のほうが、条件で多少劣っていても「この会社は信用できそうだ」と受け止められます。採用ピッチ資料が効くのは、体裁が整っているからではなく、正直だからです。
着手は、スライドを開くところからではありません。部署ごとの人数、平均勤続年数、一人前になるまでの期間、まだ整っていない制度。まずはこの4つを社内から集めて、1枚のメモにまとめてみてください。これらは社内を見渡せばすぐ分かる事実で、書けないのではなく、これまで書き出す機会がなかっただけです。この棚卸しを行えば、求人票や採用サイトの中身を充実させる材料が手に入ります。
弊社(地方採用ワークス)は、全国の地方企業に1,420社以上のウェブサイト制作・マーケティング支援を行ってきました。採用ツールにおいては、サイトを作って終わりではなく、求人媒体への露出から選考までを一貫してご支援しています。製造、建設、運送、医療、飲食など、地方で人が採りにくいと言われる業種の現場を見てきました。
資料と採用サイトで会社の見え方が違ってしまうと、求職者は違和感を覚えます。自社での整理が難しいと感じたら、すでにお持ちの会社案内を見せていただくところから始められます。どこを採用向けに直せば足りるのか、作り直すべきなのかを見極め、同じ取材と撮影から資料まで組み立てる形をご提案します。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。