【法定雇用率】中小企業の障がい者雇用の進め方|法定雇用率と体制づくり

「うちの規模でも、障がい者雇用に取り組まなければいけないのか」——従業員数が増えてきた中小企業の経営者・採用担当の方から、こうした声を聞く場面が増えています。法定雇用率の引き上げが続き、雇用義務の対象となる企業の範囲は段階的に広がってきました(※1)。大企業だけの話ではなくなっているのが実情です。

<small>※1 民間企業の法定雇用率は令和8年7月に2.7%(対象は従業員37.5人以上)へ引き上げられた。参考:厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用率制度)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html </small>

ただ、義務だからと数合わせで始めた障がい者雇用は、高い確率で早期離職に終わります。逆に、業務の切り出しと受け入れ体制を先に設計した会社では、障がいのある社員が戦力として定着しています。つまり分かれ目は、採用の前に「体制づくり」を済ませているかどうかです。

この記事では、法定雇用率の基本から、業務切り出し・合理的配慮、採用の進め方、定着支援・助成金までを順に整理します。

この記事でわかること

  • 法定雇用率の基本と中小企業に関係する範囲
  • 「義務だから」で始めると失敗する理由
  • 業務切り出しと合理的配慮の考え方
  • 採用の進め方(求人方法・面接)と定着支援・助成金

障がい者雇用は中小企業にどこまで関係するのか

結論から言うと、一定規模以上の企業には障がい者の雇用義務があり、法定雇用率の引き上げに伴って対象範囲は広がり続けています。数値や適用時期は改定が続くため最新情報の確認が前提ですが、「自社は無関係」と言える中小企業は年々少なくなっています。

法定雇用率と対象企業の基本

障害者雇用促進法により、対象となる事業主は法定雇用率以上の障がい者を雇用する義務を負います(※2)。法定雇用率は段階的に引き上げられており、対象となる企業の従業員規模の下限も下がってきました。2026年7月からは民間企業の法定雇用率が2.7%となり、従業員37.5人以上の事業主が対象です(※2)。

<small>※2 民間企業の法定雇用率は令和6年4月に2.5%(対象は従業員40.0人以上)、令和8年7月に2.7%(同37.5人以上)へ引き上げられた。参考:厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用率制度)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html </small>

雇用義務を果たしていない事業主には、ハローワークから行政指導が行われます。不足数が多い場合などには「障害者雇入れ計画」の作成命令が出され、計画どおりに進んでいなければ適正実施の勧告を受けます(※3)。また、一定規模以上の企業には障害者雇用納付金の納付が求められます(※4)。

<small>※3 雇用義務を履行しない事業主に対してはハローワークが行政指導を行い、障害者の不足数が多い等の事業主には「障害者雇入れ計画」の作成命令を発出して計画の着実な実施を指導する。参考:厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用率制度)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html </small>

<small>※4 障害者雇用納付金は、常時雇用労働者が100人を超える事業主のうち法定雇用率を達成していない場合に、不足1人あたり月額5万円が徴収される。参考:厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用率制度・納付金制度)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html </small>

まずは自社の従業員数(短時間労働者の扱いなどカウント方法にルールがあります)と照らして、義務の有無と必要人数を確認するところからです。

「義務だから」で始めると失敗する理由

雇用率の達成だけを目的に、任せる業務を決めないまま採用すると、本人は「やることがない」状態に置かれ、周囲は「どう接すればいいか分からない」まま時間が過ぎます。結果として早期離職になり、「うちには無理だった」という誤った結論だけが残ります。

順番はシンプルです。義務の確認 → 業務切り出し → 受け入れ体制 → 採用 → 定着支援。戦力として迎える準備をしてから募集する。これが遠回りに見えて、一番の近道だと考えています。

何から始める?業務切り出しと体制づくり

最初の実務は、社内の仕事の棚卸しです。結論としては、「障がい者向けの仕事を新しく作る」のではなく、既存業務の中から切り出せる業務を見つけることが出発点になります。

業務切り出しの考え方

各部署の業務を洗い出すと、「専門性は高くないが、手が回っていない業務」が見つかります。データ入力、書類のスキャン・整理、備品管理、検品・梱包、清掃、社内便——こうした業務を集めて一つの職務として再構成するのが、業務切り出しの基本です。

コツは、「誰の負担が減るか」を同時に見ることです。営業担当が残業でこなしていた入力作業を任せられれば、本人の仕事が生まれると同時に現場の残業も減る。障がい者雇用が社内の業務改善につながるのは、この構造があるからです。

切り出しの精度を上げる実務的な方法は、部署ごとに「後回しにされている業務」を1〜2週間書き出してもらうことです。毎日発生するのに誰の担当でもない業務、月末に残業でまとめて処理している業務、「時間があればやりたい」と言われ続けている業務。この3つの箱に入る仕事が、切り出しの有力候補になります。逆に、判断や例外対応が頻繁に挟まる業務は、最初の職務には向きません。手順が一定で、成果が目に見えて、完了の基準がはっきりしている業務から組み立てる。この順で設計すると、本人にとっても「自分の仕事」と胸を張れる職務になります。

合理的配慮は「特別扱い」ではない

受け入れにあたっては、合理的配慮の提供が事業主に義務づけられています(※5)。身構える方も多いのですが、合理的配慮とは、過重な負担にならない範囲で、働くうえでの支障を取り除く調整のことです。

<small>※5 障害者雇用促進法は、障害者に対する差別を禁止するとともに、事業主に合理的配慮の提供を義務づけている。参考:厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用率制度)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html </small>

  • 通院に合わせた勤務時間・労働時間の調整
  • 指示の出し方の工夫(口頭ではなくメモで、一度に一つずつ)
  • 感覚過敏に配慮した座席の配置
  • 車いすでも使える通路・トイレの確保

大がかりな設備投資が要るケースばかりではなく、本人と話し合いながらできる調整を一つずつ積み上げれば、十分に機能する配慮が多いのが実際のところです。

採用はどう進める?求人方法と面接のポイント

体制の準備ができたら採用に進みます。障がい者採用は一般の中途採用と使う媒体も相談先も異なり、軸になるのはハローワークと地域の支援機関です。

ハローワーク・支援機関との連携

  • ハローワーク(専門援助部門):障がい者専用求人を出せる基本の窓口。支援機関との橋渡しもしてくれます
  • 就労移行支援事業所:訓練中の人材と実習を通じて出会え、入社後の定着支援まで続く関係をつくりやすい
  • 特別支援学校:新卒採用のルート。職場実習の受け入れから始まるのが一般的です
  • 障害者就業・生活支援センター:仕事と生活の両面を支える相談機関。企業側の相談にも乗ってくれます

初めての場合は、いきなり求人を出すより、支援機関に「うちの業務でできることはあるか」と相談し、職場実習から始めるのが現実的です。実習は、本人と職場の相性を双方が確かめられる仕組みなんですよね。

面接・実習で確認すること

面接では、障がいの名称ではなく、「働くうえで何ができて、どんな配慮があれば力を発揮できるか」を確認します。

  • 得意な作業・苦手な作業
  • 必要な配慮(通院・服薬・疲れやすさ・コミュニケーションの取り方)
  • 支援機関のサポートが入社後も受けられるか

配慮事項のすり合わせは、本人にとっても働きやすさに直結する大事な対話です。支援機関の担当者に同席してもらうと、双方が安心して話せます。

定着支援と助成金──雇って終わりにしないために

障がい者雇用の本当の勝負は、入社後です。結論から言えば、社内のキーパーソンを決めることと、外部の支援機関と切れない関係を保つこと。この2つが定着支援の柱になります。

定着を支える仕組み

  • キーパーソン(担当者)を決める:「困ったら誰に聞くか」を一本化する。窓口が明確なら現場は回ります
  • 定期面談:月1回など、困りごとを聞く場をあらかじめ設けておく
  • ジョブコーチ(職場適応援助者)の活用:支援計画にもとづいてジョブコーチが職場に出向き、本人と職場の双方を直接支援してくれる公的制度です。雇入れ時だけでなく雇用後の職場適応も対象で、支援期間は標準2〜4か月。利用の相談は各地域の「地域障害者職業センター」が窓口です(※6)。

<small>※6 引用:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」(2026年7月28日確認)。 https://www.jeed.go.jp/disability/person/job01.html </small>

  • 仕事の広げ方:限定した業務から始め、慣れに応じて少しずつ広げる

障がいのある社員が安心して働ける職場は、実のところ、誰にとっても働きやすい職場です。整えた職場環境は、採用サイトでの発信材料にもなります。

参考記事:『【事例つき】採用サイトの福利厚生ページとは?若手に響く見せ方

定期面談について一つ補足すると、「何かあったら言ってください」という構えでは機能しません。困りごとは、本人がそれを困りごとだと認識して言語化できるとは限らないからです。「眠れているか」「疲れが残る作業はどれか」のように、聞く側が具体的な質問を用意しておくこと。そして面談で出た内容を、本人の了解のもとで支援機関と共有できる形にしておくこと。この2つを運用に組み込むだけで、面談は形式的な場から、不調の早期発見の仕組みに変わります。

助成金の考え方

障がい者雇用には、採用・職場整備・定着の各段階で活用できる助成金があります(※7)。体制づくりの負担を軽くできる可能性があるため、ハローワークや社会保険労務士に確認しながら進めてください。ただし、助成金は体制づくりの補助輪であって、目的ではありません。

<small>※7 特定求職者雇用開発助成金をはじめ、障害者の採用・職場整備・定着の各段階に対応した助成メニューが用意されている。 参考:厚生労働省「雇用関係助成金一覧」。助成金は年度ごとに新設・改廃・要件変更があるため、検討時に最新の要件を確認すること。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00057.html </small>

よくある質問(FAQ)

Q. 従業員数十名の会社にも雇用義務はありますか?

法定雇用率と自社の従業員数(算定方法のルールを含む)によって決まります。対象範囲は拡大傾向にあるため、最新の基準をハローワークで確認してください。

Q. どんな障がいの方を採用すればよいですか?

「どの障がいか」より「切り出した業務に合う人か」で考えます。身体・知的・精神・発達と特性はさまざまで、同じ障がい名でも個人差が大きいため、職場実習を通じて相性を確かめるのが確実です。

Q. 受け入れ経験がなく、社員が不安がっています。

自然な反応だと思います。支援機関の担当者に社内向け説明の場を設けてもらうなど、外部の力を借りて不安を下げるところから始めてみてください。

Q. 精神障がいのある方の雇用は難しいと聞きますが。

体調の波への配慮は必要ですが、労働時間の調整や定期面談といった仕組みで働き続けている例は多くあります。難しさの多くは「分からないこと」から来るので、支援機関と組んで進めることが解決の近道です。

障がい者雇用は「準備した会社」から戦力になる

業務切り出しと受け入れ体制を丁寧に設計した会社では、障がい者雇用が人手不足を補う戦力の確保と、職場全体の働きやすさの向上につながっています。準備なしの数合わせか、設計したうえでの受け入れか。同じ「雇用率の達成」でも、中身はまるで違うというわけです。

なお、並行して一般の採用も動かしている場合は、「応募が来ない」原因の切り分けが共通の課題です。見直しの順序は別記事で整理しています。

とはいえ、業務の棚卸しから支援機関との連携、採用・定着までを兼務の担当者が一人で進めるのは、負担の大きい取り組みです。弊社では、採用活動の代行(リープ・リクルーティング)として、採用計画の設計から求人方法の選定・応募者対応までを支援しています。「誰を、どう採るか」の全体設計からご一緒できますので、現状の整理からお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人
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たまちゃん

マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。

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