農業の採用はなぜうまくいかない?若手が来ない3つの原因と見せ方
「募集を出しても、来るのは経験のある高齢の方ばかり。若手はまず来ない」——農園の方のお話は、だいたいここに行き着きます。繁忙期は家族と数人のパートで回し切れず、通年で雇い続けられるかも自信が持てない状況です。
農業の人手不足は、たしかに構造的な問題です。しかし、若手が集まらないのは農業という仕事のせいだ、と結論づけるのは少しお待ちください。農業の外には「自然の近くで働きたい」と考える若手が一定数います。単純に、その人たちに御社の求人が見つかっていないだけ、というケースが多いからです。「農業だから若手が来ない」で止めてしまうと、見せ方を変えれば届いたはずの人まで取りこぼします。
この記事では、農業の採用が難しい構造を整理したうえで、若手が来ない農園に共通する原因と、先に手をつけるべき求人の見せ方について順番に解説します。
この記事でわかること
- 農業の採用が難しい構造(後継者不足・新規就農の実情)
- 若手が来ない農園に共通する3つの原因
- 農園・農業法人が先に手をつけるべき求人の見せ方改革
- 採用した人が続かない農園が見落としていること
農業の採用が難しい現状|「家業」から「雇用の場」への転換期
農業の担い手不足は、個々の農園の努力不足ではなく業界全体の構造です。ただ、その中には「雇われて農業を始める」という追い風も含まれています。まずは現状のデータから整理していきましょう。
担い手の高齢化と後継者不足
農業の現場では、担い手の高齢化と後継者不足が同時に進んでいます。家族経営の農家で「継ぐ人がいない」という状況は珍しくありません。それに伴い、地域の農地を農業法人が引き受けて規模を広げる動きが各地で起きています。経営が大きくなるほど、家族以外の人を雇う必要が出てきます。つまり、農業はいま「家業」から「雇用の場」へ構造が変わっている途中なのです。
農林水産省の2025年農林業センサス(概数値)によると、個人経営体の基幹的農業従事者は102万1千人でした。5年前より34万2千人減少し、率にして25.1%も減っています(※1)。平均年齢は67.6歳で、70歳以上の層が最も厚い構成になっています(※2)。
※1 引用:農林水産省「2025年農林業センサス結果の概要(概数値)」(2025年11月28日公表、2026年7月28日確認)。 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/noucen/040909/index.html
※2 引用:農林水産省 経営局「農業経営をめぐる情勢について」(令和8年1月、2026年7月28日確認)。 https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/251225_meguzi.pdf
新規就農を目指す若手は「ゼロ」ではない
一方で、農業を仕事にしたい若手がいなくなったわけではありません。新規就農には、自分で農地を確保して独立する道と、農業法人に就職する「雇用就農」の道があります。初期投資なしで農業に入れる雇用就農は、未経験の若手や移住希望者にとって現実的な入口です。
問題は、受け皿になるはずの農業法人の求人が、探している当の若手に見つかっていないことです。「農業だから来ない」と結論づける前に、見直せる部分はまだ残っています。
実際、農林水産省の調査では、令和6年の新規雇用就農者は1万180人と前年に比べ9.5%増えています。さらに、そのうち約7割(69.3%)を49歳以下が占めています(※3)。雇われて農業を始める若手は、むしろ増えているのです。
※3 引用:農林水産省「令和6年新規就農者調査結果」(2026年4月公表)。 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sinki/pdf/sinki_syunou_24.pdf
参考記事:『【原因5つ】人材確保ができないのはなぜ?応募が来ない会社の見直す順番』
若手が来ない農園に共通する3つの原因
同じ地域・同じ作目でも、人が集まる農園と集まらない農園があります。人手不足の原因を分解していくと、差が出るのはたいてい次の3つのどこかです。
原因1|仕事の中身と「1年の流れ」が伝わっていない
農業の仕事は、作目と季節でまったく違います。施設栽培のトマトと露地野菜と果樹では、体の使い方も1日の流れも別物です。ところが求人票には「農作業全般」としか書かれていないことがよくあります。これでは未経験の若手にとって、どんな毎日になるのか想像がつきません。
どの作目を、どの季節に、どんな体制でやっているのか。1年の流れまで書くことが、農業の求人の第一歩です。繁忙期と閑散期がはっきりしているなら、それも隠さずに書いてください。季節雇用の募集なのか通年雇用なのかも、入口の段階で明確にしておく必要があります。
原因2|「稼げない・休めない」イメージに答えていない
農業には「稼げない」「休みがない」というイメージが根強くあります。実際には、月給制で社会保険を整え、休日を決めて回している農業法人も増えています。しかし、求人にそれが書かれていなければ、どうしても悪いイメージのほうが勝ってしまいます。
給与相場の水準より先に、月給制か日給制か、雨の日の扱い、社会保険の有無、休みは取れるかを明確にしましょう。若手が不安に思う順番に、ひとつずつ答えているかが分かれ目になります。
原因3|移住・未経験の一歩を支える情報がない
農業の求人は、地元だけでなく移住希望者まで母集団に含められる、数少ない職種です。ただし移住者にとっては、仕事内容の前に「住む場所はあるのか」「地域に馴染めるのか」「未経験でも教えてもらえるのか」が壁になります。
住まいの支援、研修の進め方、先に移住してきた先輩の声。ここまで見せて初めて、県外の若手が応募の候補に入れてくれます。ここが空欄のままでは、検討の土俵にすら乗らないのが正直なところです。
ここで、原因の1つ目に近い実例をご紹介します。岐阜市で農業資材の卸と農業ハウスの施工を手がける会社では、「イチゴプロジェクト専任スタッフ」のような社内だけで通じる呼び名で募集していました。そのため、求職者の検索に乗っていませんでした。応募は入るものの、全件がミスマッチという状態です。
そこで既存の求人は残したまま、「農業ハウス施工&設備技術者」「農業現場サポート・軽作業」など、実際に検索される言葉に沿った職種名の求人を別立てで用意し、既存と並走させる形に切り替えました。
切り替えたところ、この職種名の求人にも応募が入るようになりました。
農業まわりの仕事は、社内の呼び名と求職者の検索語が離れやすい分野です。まず「何の仕事なのかを、外の言葉で言い直す」ことが入口になります。
移住や未経験の応募をためらわせているものを突き詰めると、「やっていけるか」よりも「合わなかったときに引き返せるか」の不安だと考えています。地元での転職なら、失敗しても住まいと生活はそのまま残ります。移住を伴う就農は、仕事と住まいと人間関係を同時に賭ける決断になるため、慎重になるのが当然です。
だからこそ、短期の研修やアルバイトから入れる段階、住まいの契約条件、地域との関わりの実際といった「試せる入口」と「引き返せる余地」を示せる農園から、候補に残っていきます。
「農業だから来ない」という見立ても、正確には「農業だから」ではなく、「求人が判断できる形になっていないから」であるケースがほとんどです。冒頭で挙げたとおり、雇われて農業を始める若手はむしろ増えています。来ないのは業種のせいなのか、見せ方と届け方のせいなのか。ここを切り分けずに諦めてしまうのが、いちばんもったいない判断です。
農園・農業法人が先に手をつけるべき打ち手
結論から言えば、順番は2つです。求人の中身を「未経験の若手が読める形」に直すこと。そのうえで、見つけてもらえる場所に出し切ること。採用手法をあれこれ増やすのは、その後で構いません。
露出を増やして母集団をつくる
応募が来ない農園の多くは、条件が悪い以前に、そもそも見つけられていません。募集がハローワークと知り合いの紹介だけ、という農園も多いはずです。農業専門の求人サイトや自治体の移住支援窓口に加えて、ハローワーク、Indeed、求人ボックス、エアワーク(Airワーク 採用管理)など無料で掲載できる媒体まで含めると、出せる場所は思っているより多くあります。応募の母数(母集団)が増えて初めて、人を「選べる」採用になります。
参考記事:『【知名度ゼロ】母集団形成とは?無名の中小企業が応募の母数を増やす打ち手を解説』
また、地方の採用は通勤圏の狭さとの戦いでもあります。車で通える現実的な範囲は、おおむね片道1時間、あるいは25〜30km圏内です。その圏内の若手だけで足りないなら、移住まで視野に入れた見せ方に切り替える必要があります。
参考記事:『【3つの打ち手】地方の中小企業が採用できない理由は?通勤圏内で選ばれる進め方』
受け皿になる採用ページを整える
求人で興味を持った人は、農園の名前で検索します。そこで出てくるのが販売用のページだけだと、「働く場所」としての情報はゼロのままです。畑の風景、働いている人の顔、収穫の1年の流れを載せておきましょう。農業は写真が力を持つ仕事なので、見せ方次第で印象は大きく変わります。露出と受け皿は両輪です。
採用した人が続かない農園が見落としていること
入口だけ整えても、定着率が低ければ人は増えません。農業の早期離職で多いのは、天候と体力のリアルを入口で伝えていなかったことと、教え方が感覚のままなことの2つです。
真夏の収穫のきつさや、台風でのスケジュール変更などは、面接の段階で伝えてください。正直に書くと応募が減りそうに思えますが、分かったうえで来た人は簡単には辞めません。いちばん人を失うのは「聞いていた話と違う」と不満を持たれることです。
教え方も同じです。長年の勘で回してきた作業は、未経験者には手順が見えません。「見て覚えて」ではなく、最初の1か月で何をどこまで覚えればよいかを言葉にしておくことが大切です。少人数の職場だからこそ、教わる側の心細さへの目配りが定着を分けます。
農業の採用についてよくある質問
Q1. 個人経営の小さな農園でも、若手の採用はできますか?
規模の大小より、見せ方だと思います。雇用就農の入口として選ばれるのは、「何を学べるか」「どう働くか」が見える農園です。作目と1年の流れ、教え方、住まいの情報が揃っていれば、小規模でも候補に入ります。
Q2. 季節雇用と通年雇用、どちらで募集すべきですか?
経営の実態に合わせて構いませんが、募集の入口では区別を明確にしてください。繁忙期だけなら季節雇用と明記し、期間・時期・翌年また働ける可能性まで書きます。通年の担い手が欲しいなら、閑散期の仕事(出荷調整・加工・販路づくりなど)まで見せると、若手が将来を描きやすくなります。
Q3. 農業法人の求人は、どこに出すのが良いですか?
出せる場所に出し切ったうえで、反応を見て絞るのが順番です。農業専門の求人サイト、ハローワーク、移住支援の窓口、無料媒体など、まずは幅広く出してみてください。媒体選びより先に、求人の中身を未経験者が読める形に直すことが先決です。
「農業だから来ない」で終わらせないために
後継者不足も高齢化も、一つの農園では変えられません。ただ、求人の見せ方と露出の広げ方は、今日から変えられます。仕事の中身と1年の流れを書き、若手の不安に順番に答え、出せる場所に出し切る。ここまでやってから「構造の問題だ」と判断しても遅くはありません。
まずは無料の求人媒体を1つ選び、1年の流れと給与・休日の条件を書き直して掲載してみてください。それだけでも、未経験者の目に留まる確率は上がります。ただ、畑仕事と並行して求人の更新や媒体の管理を続けるのが難しいようであれば、外部の手を借りるのもひとつの方法です。
弊社自身、岐阜という地方に拠点を置きながら、採用広告を使わずに年間1,152名のエントリーを自社で獲得してきました。農業とは業種も規模も違うため、同じことがすぐ起きるとは限りません。しかし、地方で知名度に頼らず、何をどう見せれば人が集まるかを実証してきた立場から、ご一緒できると考えています。
全部をお任せいただく必要はありません。求人原稿の作成と媒体の更新だけを外に出し、面接と採否の判断は農園に残す。そういう線引きもできます。まずは御社の作目と体制、いまの求人の出し先をうかがったうえで、埋めるべき順番からご提案します。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。