【定着設計】早期離職を防ぐ|ギャップが生まれる4つの発生源と埋め方
「ようやく採れたのに、半年ももたなかった」。採用のご相談で、いちばん重く聞こえてくるのがこの一言です。時間も費用もかけて育てようとしていた人が辞め、欠員は元に戻り、また同じところからやり直しです。
早期離職は「入社後の職場に問題があった」と受け止められがちです。ただ、辞めた人の理由をたどると、原因の多くは入社より前、採用の過程で埋められなかったずれにあります。この記事は入社前後、つまり採用の最後の工程に絞って進めます。在籍社員全般の離職(評価制度や労働環境)は別の記事で扱います。
この記事でわかること
- 早期離職の原因が「入社前」にある理由
- 入社前後のギャップが生まれる4つの発生源
- 選考の段階でギャップを潰す方法(見せ方と見極め)
- 内定から入社まで、そして入社後3か月の受け入れで決めておくこと
早期離職の火種は、入社後ではなく入社前にある
先に結論をお伝えします。早期離職の直接の引き金は入社後の出来事ですが、その火種は入社前に仕込まれていることがほとんどです。「聞いていた話と違う」というずれは、入社前に埋められなかったものが表に出てきただけだからです。だから打ち手は、入社後の面談ではなく求人と選考のほうに置くのが効率的です。
よく使われる指標に「新卒の3年以内離職率」があります。規模が小さい企業ほど高くなる傾向が知られていますが、「うちの規模なら仕方ない」と受け取るとそこで思考が止まります。同じ規模、同じ業種でも辞められる会社と残る会社があるからです。
実際の数字を見ておきます。令和4年3月卒の就職後3年以内の離職率は、新規高卒が37.9%、新規大卒が33.8%。事業所規模別では、大卒の場合1,000人以上が27.0%なのに対し、5〜29人では52.0%、5人未満では57.5%と、規模が小さくなるほど高くなります(※1)。
<small>※1 引用:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月24日公表)。就職後3年以内の離職率は新規高卒37.9%・新規大卒33.8%。事業所規模別(大卒)は5人未満57.5%/5〜29人52.0%/30〜99人41.9%/100〜499人33.9%/500〜999人31.5%/1,000人以上27.0%。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html </small>
地方の中小企業の多くはこの5〜29人の帯に入ります。ただ、これは「うちの規模なら半分辞めて当然」という話ではありません。同じ帯の中にも、辞められていない会社は確実にあるからです。
辞めた人の理由に挙がるのは、労働時間や休日、人間関係、仕事内容といった項目です。注目したいのは、多くが事前に伝えられていれば納得できたはずの内容だという点。繁忙期に残業が出ること自体は、承知で入社していれば辞める理由になりません。問題になるのは「残業はほとんどないと聞いていた」場合です。防ぐべきは残業ではなく、期待と実態のずれだということです。
入社前後のギャップが生まれる4つの発生源
ずれは、たいてい次の4か所のどこかで生まれています。自社がどこで作り込んでしまっているかを確認してみてください。
- 求人票・採用サイトで良い面だけを見せた:応募を増やしたい気持ちから良いところだけを並べ、期待値だけが上がって入社後に落差が生まれます
- 面接が「見極め」ではなく「口説き」になっていた:応募が少ないほど、目の前の候補者を逃したくない一心で良い面ばかりを伝えてしまいます
- 配属先と仕事の中身を具体的に伝えていなかった:中小企業では募集した職種以外の業務を兼ねるのが実態ですが、伝えていないと「話が違う」になります
- 内定から入社までが空白だった:連絡のない期間は求職者の不安が最も高まる時間帯です。志望度が中途半端なまま働き始めた人は、少しのつまずきで気持ちが切れやすくなります
とくに1つ目は、良い話だけに整えるほど全体が嘘っぽく見えるという副作用まで抱えています。採用のゴールは内定ではなく定着ですから、本音や苦労を残すことには価値があります。
どれも採用の設計を変えれば減らせる部分です。ただ、兼務で回しながら全部直すのは難しいところでもあります。「うちはどこで作り込んでしまっているのか」を整理したい段階でも、現状の選考の流れをうかがったうえで一緒に見ていきます。
選考の段階でギャップを潰す|見せ方と見極めの設計
大変な部分を、先に出す
情報の出し方を変えるだけで、入社後のずれはかなり減ります。ポイントは隠すのではなく順番を変えることです。繁忙期の忙しさ、残業の実態(月平均ではなく多い月と少ない月の幅で)、1年目に任せる仕事の範囲、教育の体制、職場の人数構成と年齢層。これらを面接の後半ではなく、求人票や採用サイトの段階で出しておきます。
応募数は多少減りますが、減るのはもともと入社後に辞めていた層です。これは要件を厳しくして応募を絞るのとは別の話で、間口は広く保ったまま伝える情報を正確にする。この2つは両立します。
一次面談で確認する項目を、あらかじめ言語化しておく
面接が口説きに寄る原因の一つは、評価基準が言語化されていないことです。何を見るか決まっていないから、その場の印象と相性で判断してしまう。面接の前に次の3点を紙に落とすだけで質が変わります。
- 必須要件(これがないと業務が成立しないもの。数は絞る)
- 入社後に伸ばせること(ここを要件に入れると母数が無駄に減ります)
- 確認したいずれ(志望度の中身、通勤の現実性、家庭やライフプランとの兼ね合い、前職を辞めた理由)
3つ目が早期離職に直結します。とくに「なぜ前の職場を辞めたのか」は、同じ理由が自社でも起きないかを確かめる材料になります。ここを聞かずに採用すると、同じ構造で辞められる可能性が残ります。
この確認は、面接に第三者が入るとやりやすくなります。社内の人が相手だと求職者は身構えて本音を出しにくいからです。社員ではない人が採用の過程を代行することについて、求職者側は95.4%が肯定的に受け止め、理由の上位に「ありのままの自分で本音を話せる」が挙がっているという調査結果もあります(株式会社アールナイン/2021年8月〜10月/2023年卒の学生263人/インターネット調査。出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000012430.html )。
面談そのものの例ではありませんが、入社前の見極めが定着に直結することを示す記録があります。
支援先の静岡県西部で精密板金加工を営む従業員65名ほどの会社では、キックオフで過去の退職者を振り返ったところ、退職者17名のうち29%が1年未満での離職で、1年を超えると一気に定着していました。辞めた人と残った人の違いを尋ねると、残っている人は「自分から話せる」「あれをやりたいと自分から言う」タイプで、逆に「単純に労働だけを望んでいる人」はミスマッチになりやすい、という整理が出てきています。
辞める理由を入社後の施策だけで潰そうとすると限界があります。 誰を採るかの段階で、すでに勝負は始まっています。
第三者が面談に入る価値は、本音を聞き出す技術よりも、本音を言っても不利にならない場を用意できることにあると考えています。合否を握る社長の前では、転職理由も待遇への希望も、当たり障りのない形に整えられて当然です。面談の相手が採用の決定権を持たない外部の人間で、その場の発言がそのまま合否に直結しないと伝わっていれば、前職を辞めた本当の理由や、家庭の事情による働き方の制約が先に出てきます。大事なのはその先で、出てきた本音を「では自社で同じ不満が起きないか」という問いに変換して、採る前に答え合わせをすることです。その結果「うちでは難しい」と判断する場面があったとしても、それは失敗ではなく、早期離職を1件未然に防いだと数えるべきだと考えています。
選考スピードと連絡の設計を見直す
選考が長引くほど求職者は他社と比較する時間が増え、志望度が下がったまま入社することになります。早期離職とスピードは、この経路でつながっています。応募から一次連絡までは24時間以内を目安に、日程調整はこちらから候補日を3つ以上出して往復を減らす。結果は合否にかかわらず約束した期日までに連絡し、次のステップと所要日数を毎回伝える。メールの往復回数は、そのまま辞退率に効いてきます。
各段階でどれだけ人が減るかを把握しておくと、直すべき場所が見えます。ただし、他社の内定率や通過率と自社の数字を並べても、あまり意味はありません。母数が違えば適正な絞り方も変わるからです。
見るべきは、自社の母数に対して絞りすぎていないかです。応募が年間100件の会社が、母集団の大きい会社と同じ感覚で書類を落とすと、単に会える人を減らすだけになります。よほど書類で落とす理由がない限り、まず会って話を聞くほうがいいと考えています。母数が細いほど、書類でふるいにかける意味は薄くなります。
内定から入社までの空白を埋める
内定を出したら採用は終わり、ではありません。入社日までに意図的な接点をつくるだけです。内定通知の直後に入社までの流れと連絡窓口を1枚にまとめて渡す。2〜3週間に一度は何らかの連絡を入れる。入社1か月前に配属先と初日の流れを伝える。初日に渡す資料(組織図、1週間の予定、メンバー紹介)も1〜2週間前に前倒しする。そして可能なら、入社前に一度職場を見てもらう。
最後の職場見学は、ギャップ対策としてとくに効きます。会議室では見えない実際の作業場所、働く人の様子、通勤経路の感覚。これを入社前に体感してもらうと、「思っていたのと違う」の大半は前倒しで解消できます。そこで辞退が出たとしても、入社後に辞められるより痛手は小さいと考えたほうがいいと思います。
入社後3か月の受け入れで決めておくこと
入社後の受け入れはオンボーディングとも呼ばれます。大掛かりな制度は必要なく、決めるべきことは3つだけです。
誰がつくかを決める
いちばん効くのがこれです。放置が早期離職の最大の要因で、「みんなで見る」は誰も見ていないのと同じ状態になりがちだからです。新しく入った人1人に対して、日常的に聞ける相手を1人、明確に決めてください。役職者である必要はなく、むしろ年次の近い人のほうが質問しやすいところがあります。あわせて、その人の通常業務を一時的に軽くする。ここまでやって初めて機能します。
1週間・1か月・3か月の到達点を決める
期間ごとに到達点を決めておくと、本人も周囲も迷いません。1週間目は職場に慣れること、1か月目は担当業務の基本を一人でできること、3か月目は一連の業務を任せられること。この程度の粒度で構いません。
大事なのは、この見通しを本人に先に伝えておくことです。何ができていれば順調なのかが分からないまま3か月を過ごすと、多くの人は「自分は向いていない」と感じ始めます。基準を渡すだけで、この不安は減らせます。
「ずれの確認」の場を、意図的に作る
面談というと大げさですが、やるべきことは1つです。入社前に聞いていた話と、実際の仕事にずれがないかを直接確認する。入社1週間後、1か月後、3か月後の3回、10分でも構いません。早い段階で聞いておけば小さなずれのうちに手を打てます。3か月放置したずれは、たいてい退職の相談として出てきます。
そして、出てきたずれは採用の側にも戻してください。入社した人が感じたずれは、次の求人票を直す材料そのものです。この往復ができている会社は、採用のたびに早期離職が減っていきます。
早期離職についてよくある質問
Q1. 悪い情報を出したら、応募が減りませんか
減ることはあります。ただ、減るのは条件を誤解して応募していた層です。母数を維持したいなら、悪い情報を隠すのではなく間口(応募要件)を広げるほうで調整してください。要件を厳しくして応募を絞り、情報だけ良く見せる。これがいちばん早期離職を生む組み合わせです。
Q2. 入社してすぐ辞めた人に、理由を聞くべきですか
聞けるなら聞いたほうがいいと思います。ただし引き止めるためではなく、次の採用を直すためだと伝えたうえで聞いてください。本人が話しにくい状況なら無理に踏み込む必要はありません。むしろ在籍している直近の入社者に「入社前と違ったこと」を聞くほうが、材料としては集めやすいところです。
Q3. 受け入れの担当者を出す余裕がありません
余裕がないから放置する、を続けると採用そのものが無駄になります。担当を決められないなら、採用の人数を減らしてでも1人に集中したほうが結果的に残ります。
Q4. 中途採用でも同じ考え方でいいですか
基本は同じです。ただ、中途は「即戦力だから説明は不要」と省略されやすく、そこにずれが生まれます。前職とのやり方の違い、社内の意思決定の流れ、誰に何を聞けばいいか。経験者ほど省かないでください。
Q5. 何から手をつけるべきか分かりません
まず、辞めた人がいつ辞めたかを並べてみてください。入社1か月以内が多いなら受け入れの問題、3〜6か月なら仕事内容や配属のずれ、1年前後なら評価やキャリアの見通しの問題である可能性が高いところです。時期によって直す場所が変わるので、そこから逆算するのが早いと思います。
早期離職は「採用の最後の工程」として設計する
早期離職を防ぐ打ち手は、入社後の面談を増やすことではありません。求人票で実態を出し、面接で確認すべきずれを言語化し、内定から入社までを埋め、最初の3か月で誰がつくかを決める。この4つが揃っていれば、多くのずれは入社前に片がつきます。
言い換えれば、早期離職の対策は採用活動の外側にある特別な取り組みではなく、採用の最後の工程です。ゴールを内定ではなく定着に置き直すと、求人票の書き方から連絡の仕方まで判断の基準が変わります。良く見せて集めた応募は、良く見せた分だけ後で戻ってくるからです。
全部を任せる必要はありません。面接と受け入れは自社で続け、求人票の実態反映と応募者への連絡設計だけを外に出す線引きもできます。まずは御社の選考の流れと、辞めた方が何か月目で辞めているかをうかがったうえで、塞ぐべき穴からご提案します。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。