【中小企業】SNS採用の始め方|続けられる媒体選びと最初の3か月

「求人は出しているのに、そもそも会社の存在を知られていない気がする」。地方の採用相談では、この感覚を口にされる方が多いです。同じ商圏に同業他社が並び、求職者からは「どこも似たような会社」に見えます。条件で差がつかないなら、知ってもらうところから始めるしかありません。

そこで挙がるのがSNS採用です。ただ「若い会社がやること」「炎上が怖い」というイメージのまま止まっている会社も多い。実際は企画力の勝負ではなく、求職者が会社を調べたときに、ちゃんと情報が出てくる状態をつくるという地味な取り組みです。

この記事でわかること

  • SNS採用(ソーシャルリクルーティング)が何を担う手段なのか
  • インスタグラム・TikTok・YouTube・Xの性格の違いと使い分け
  • 最初の3か月で何をするか、費用は何にかかるのか
  • 成功している企業に共通する型と、炎上・トラブルの避け方

SNS採用とは|求人票の前に入口を増やすやり方

SNS採用とは、InstagramやYouTubeなどを使って求職者に会社を知ってもらい、応募につなげるやり方です。ソーシャルリクルーティングとも呼ばれます。募集条件を掲示する求人票と違い、働く人の顔や日常を継続的に出して、求職者の中に会社の輪郭をつくっていく手段だと考えると分かりやすいと思います。

求人票の外側に手を伸ばす理由

求職者の動き方が変わったからです。いまの求職者は、求人を見つけてもそのまま応募しません。社名で検索し、ホームページを見て、口コミを読み、SNSを開く。そこで何も出てこない会社と、社員の様子が見える会社とでは、比較の土俵に上がった時点で差がついています

採用は、条件だけでなく会社の魅力の伝わり方まで含めた総合点勝負になっている、ということです。求人票を出しただけでは、もはや見つけてもらうことすら難しい。SNS採用は、その「調べられたときに答えられる」部分を埋める打ち手というわけです。

求人広告との違いは「残るかどうか」

求人広告は効果はあるものの、掛け捨ての保険に近い性格があります。出稿を止めた瞬間に露出はゼロに戻り、手元には何も残りません。一方、SNSに積み上げた投稿は止めても消えず、会社の雰囲気を伝える素材として採用サイトにも転用できます。同じ費用をかけるなら、掛け捨てになる部分と資産として残る部分の配分を考えたい。これが検討する一番の理由だと思います。

ただし、母集団形成の主役はいまも求人媒体と求人検索エンジンで、SNSはそこに乗り切らない層への接点を足す位置づけです。費用をかけずに出せる媒体が空いたままSNSに手を広げても、順番が逆になってしまいます。

地方企業に向く理由と、手を出さないほうがいい場合

結論から言えば、相性は悪くありません。むしろ知名度で不利な会社ほど効きます。ただし体制がないまま始めると、更新の止まった放置アカウントが残るだけになります。

知名度の差を、通勤圏の中で埋められる

地方では、求職者が現実的に通えるのはおおむね片道1時間/25〜30km圏内まで。裏を返せば、狙う相手はその圏内にいる人だけです。全国に発信する必要はなく、地域名や地元の話題を絡めた投稿を積むだけで、届けたい相手にはかなり届きます。フォロワー数を競うゲームではない、というのがSNS採用の本質だと思います。

加えて地方では「その会社で働く人を、知り合いの誰かが知っている」という距離の近さがあります。社員が等身大で映る投稿は、この距離感と相性がいい。大手の洗練された採用動画より、近所の会社の日常のほうが刺さる場面は確かにあります。

いま始めないほうがいいケース

反対に、次の状態ならSNSより先に手をつけるべきことがあります。

  • 求人票そのものが整っていない:応募の入口が壊れたままでは、人を集めてもそこで止まります
  • 更新の担当が決まっていない:善意で回すと、繁忙期に必ず止まります
  • 採りたい人物像が固まっていない:誰に向けた発信か決まらず、内容がぶれます
  • 社員の写真・実名の扱いを社内で決めていない:後述するトラブルの多くはここが原因です

とくに2つ目は現実的な壁です。地方の中小企業では採用担当者の約9割が本業と兼務で、投稿を用意し続けるのは想像よりずっと大変だと思います。始める前に「誰が、週に何回、どれくらいの時間を使うか」だけは決めておいてください。

どこまで手を広げるかは、採用人数や職種、いまの体制で変わります。「SNSまでやるべきか、その手前を固めるべきか」を整理したい段階でも、現状をうかがったうえで一緒に線を引いていきます。

どこから始めるか|4つの媒体の使い分け

全部やる必要はありません。まず1つに絞ったほうが続きます。媒体ごとに性格が違うので、自社の職種と相性のいいものから選んでください。

  • インスタグラム:写真と短い動画で職場の空気を伝える。製造・建設・飲食・医療福祉など、現場の風景がある業種は素材に困りません。プロフィール欄から採用サイトへリンクを1本引けるので受け皿も用意しやすく、ハッシュタグに地域名を入れると見つけてもらいやすくなります
  • TikTok:短尺動画が中心で、フォロワーがいなくても表示される可能性があります。10代後半から20代前半への認知づくりに向く一方、企画と編集の負荷は高め。始めるなら「1分未満・スマートフォンで撮影・編集は最小限」と運用ラインを先に決めてください
  • YouTube:検索から見つけてもらえる点が最大の強み。社員インタビューや仕事紹介を置いておくと、社名で検索した求職者が応募前に見てくれます。時間が経っても再生されるので、資産性がいちばん分かりやすい媒体です
  • X(エックス):短いテキスト中心で、説明会の告知に向きます。ただし流れが速く、単体で母集団を広げる用途には向きません。すでに発信の習慣がある会社が告知の窓口として使う位置づけが現実的です

なお、LINE公式アカウントはSNSというより応募者との連絡手段として効きます。説明会の案内やリマインドに使うと、選考の途中離脱を減らす方向に働きます。

動画については、採用サイト内に埋め込んで自社で管理するタイプと、YouTubeで検索流入も狙うタイプの2種類があります。ちなみに弊社が制作に関わった採用サイトでは、設置した動画の9割以上が最後まで視聴されています。動画には「この会社、いいかもしれない」という気持ちを先につくる働きがあり、応募の時点で志望度が高い状態になっている求職者が増えます。

参考記事:『【7つの効果】採用動画って効果ある?費用の考え方と失敗しない会社の選び方

SNS採用の始め方|最初の3か月でやること

いきなり毎日投稿を目指すと、まず続きません。最初の3か月は「型を決めて、回るかどうかを確かめる」期間だと考えてください。

  1. 目的と相手を1行で決める:「◯◯市の20代に、現場の仕事の中身を知ってもらう」程度の粒度で構いません
  2. 媒体を1つだけ選ぶ:職種との相性で決めます。複数同時は続きません
  3. 投稿の型を3〜4種類つくる:社員紹介/1日の流れ/設備や現場/社内の出来事、と決めると素材集めが楽になります
  4. 導線を用意する:プロフィールから採用サイトや募集要項へ1本。ここがないと、興味を持たれても行き先がありません
  5. 週1回でいいので固定する:曜日と担当を決めて、社内の予定表に入れてしまうのが確実です
  6. 3か月後に振り返る:反応のあった投稿の傾向と、採用サイトへの流入を確認して型を絞ります

運用の設計で一つ強調しておきたいのは、続いている運用は内容の面白さより「体制の軽さ」で続いている、ということです。担当は専任ではなく現場か総務の1人、撮影はスマートフォン、投稿は週1回、型は社員紹介と現場の様子の2本立て。この程度の負荷に抑えるから、繁忙期でも止まりません。逆に、開始直後から凝った動画に手を出すと、担当者の異動や繁忙期を境に更新が止まりがちです。SNS採用の成果は「投稿の質×継続期間」で決まり、差がつきやすいのは継続期間のほうです。型を選ぶ基準は「これなら1年続けられるか」。そして効果の合図は、フォロワー数の伸びよりも、面接の場で「インスタ見ました」と言われるかどうかです。この一言が出始めたら、応募の手前の比較検討でSNSが働き始めた証拠だと考えてください。

費用がかかるのは人の時間

アカウント開設と投稿そのものは無料です。実際にかかるのは人の時間で、撮影・原稿・編集・確認・投稿・コメント対応まで含めると、週1回の投稿でも慣れるまでは月に数時間から十数時間は見ておいたほうがいいと思います。

ここに、撮影や編集の外注費、写真の撮影費、狙った地域・年代に届けるための広告配信費が乗ります。写真については、スマートフォンでの撮影より撮影だけプロに任せるコスト配分のほうが妥当だと考えています。光量やピントの安定は、会社への信頼感に直結する部分です。

金額の相場を並べることもできますが、条件がまったく違う他社の平均でしかありません。自社で誰が何時間使い、どこを外に出すのか。その内訳で考えるほうが失敗しにくいと思います。

成功事例に共通する型と、炎上を避けるための注意点

「企業SNSの成功事例」を調べると、フォロワー数の大きな会社ばかり出てきます。ただ、参考にすべきはそこではありません。採用につながっている運用には、規模と関係なく共通する型があります。

うまくいっている運用の共通点

  • 人が映っている:ロゴや商品ではなく、働いている人が出ている
  • 等身大である:表彰者ばかりでなく入社2〜3年目が混ざっている。求職者が知りたいのは武勇伝ではなく「自分でもやっていけるか」だからです
  • 更新が止まっていない:最終投稿が1年前のアカウントは、ないほうがマシな状態になります
  • 行き先がある:プロフィールから採用サイト・募集要項へつながっている
  • 良いことだけになっていない:仕事の大変な部分にも触れている。整えすぎた発信は、かえって嘘っぽく見えます

最後の点は入社後にも効いてきます。良い面だけを見せて入社してもらっても、実際とのずれが大きければ早い段階で辞めてしまう。採用のゴールは内定ではなく定着です。

炎上・トラブルを避けるために決めておくこと

炎上を恐れて何も出さないより、線を引いてから出すほうが健全です。最低限、次の4点は社内で決めておいてください。

  • 投稿前の確認者を1人決める:担当者が1人で判断しない体制にするだけで、事故はかなり減ります
  • 社員の写真・実名の掲載可否を書面で確認する:口頭の了承だけで進めると、後から問題になります
  • 退職者の写り込みの扱いを決める:ちなみに弊社では半年から1年に一度、採用サイトの写真を丸ごと総入れ替えし、鮮度の維持と退職者の入れ替えをまとめて済ませています
  • 誇張表現を避ける:「絶対」「業界No.1」といった言い切りや根拠のない数字は書かない。求人票と同じ基準で見てください

意外と多いのが個人アカウントとの取り違えです。会社と私物のアカウントを同じ端末で運用していると、投稿先を間違える事故が起きます。端末かログインを分けておくだけで防げます。

SNS採用についてよくある質問

Q1. フォロワーが少なくても意味はありますか

あります。効くのはフォロワー数より「社名で検索されたときに会社の様子が出てくること」だからです。求職者は応募前に必ず調べます。そのとき見てもらえる状態をつくるだけでも、比較の場面で効いてきます。

Q2. どのくらいで応募につながりますか

数か月から1年単位で見てください。すぐ応募が来る性格のものではなく、求人媒体で見つけた人が迷ったときに背中を押す、という効き方をします。即効性を求めるなら、まず求人票と露出の設計を見直すほうが早いと思います。

Q3. 採用サイトがなくてもSNSだけで大丈夫ですか

SNSは接点をつくる手段で、詳しい情報を確認する場所には向きません。仕事内容、待遇、選考の流れといった判断材料はまとまった形で置いておく必要があります。最後に見る場所がない状態は、露出だけ増やして受け皿がないのと同じです。

Q4. 何を投稿すればいいか分かりません

社員の1日の流れから始めるのが一番つまずきにくいと思います。特別な企画は不要で、朝の準備、作業の様子、休憩、退勤をそのまま出すだけで、求職者は自分が働く姿を想像できます。ネタが切れたら部署を変えて同じ型を繰り返せば続きます。

Q5. 社員が協力してくれません

協力しやすい形になっていないケースが多いです。全社員に一律で依頼せず、出てもいいという人から始める。顔出しが難しければ手元や後ろ姿から始める。撮影の時間を業務時間内に確保する。この3点でかなり動きやすくなります。

SNS採用は「露出を増やす手段の一つ」として置く

SNS採用は、うまくやれば知名度の差を埋められる手段です。ただし単体で採用が回るものではありません。求人票を整え、費用をかけずに出せる媒体を埋め切り、そのうえで届いていない層に手を伸ばす。この順番を守ると、少ない手数でも効きます。

そして、SNSで興味を持ってもらえても、その先に会社を理解できる場所がなければ応募には至りません。応募を集める「露出」と、良さを伝える「受け皿(採用サイト)」は両輪です。SNSに使った時間を無駄にしないためにも、受け皿の整備は同時に考えておきたいところです。

弊社自身、岐阜という地方に拠点を置きながら、採用広告を使わずに年間1,152名のエントリーを自社で獲得してきました。「同じ数が採れます」という話ではなく、露出の設計を積み重ねる進め方が地方でも成立する、という一つの実証として受け止めていただければと思います。

全部を自社で抱える必要はありません。撮影と投稿は自社で続け、媒体の設計と求人票の見直しだけを外に出す線引きもできます。まずは御社がいまどこに出していて、どこが空いているのかをうかがったうえで、埋めるべき順番からご提案します。

採用活動の代行(リープ・リクルーティング)はこちら

この記事を書いた人
【中小企業】SNS採用の始め方|続けられる媒体選びと最初の3か月 | 進め方と手法
たまちゃん

マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。

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