【保存版】離職防止の打ち手|「辞める理由」の穴を塞ぐ4つの手順

「採った分だけ辞めていく」——採用のご相談で、いちばん重い話がこれです。ようやく一人入ってもらった数か月後に、別の一人が退職を申し出る。人数は増えないのに、手間と費用だけが毎年積み上がります。

穴の空いたバケツに水を注いでいるのと同じで、注ぐ量を増やしても穴が大きければ水位は上がりません。離職防止とは待遇を改善することではなく、自社で人が辞めていく理由を構造として特定し、効くものから順に手を打つ作業です。給与や休日は選択肢のひとつで、たいてい最も費用がかかるわりに効きにくい打ち手です。

この記事でわかること

  • 離職防止を採用より先に置くべき理由と、自社の離職率の見方
  • 人が辞める本当の理由を、組織の側から切り分ける方法
  • 打ち手を優先順位で並べた4つの手順
  • 離職防止の取り組みが空回りする典型パターン

なお、この記事で扱うのは在籍者全般の離職です。入社1年以内の早期離職は原因の構造が別物なので、そちらは別の記事で扱います。

離職防止は、採用より先に来る

理由は単純で、一人辞めるたびに、採用の費用と手間がもう一度かかるからです。しかも失われるのは採用費だけではありません。

辞められた会社が失っているもの

一人の退職で消えるのは、次の4つです。

  • 採用にかけた費用と時間:求人掲載、書類確認、面接、日程調整
  • 育成にかけた時間:教えた人の時間も含めれば、金額に換算しにくいほど大きい
  • 残った人への負荷:欠員の仕事が周囲に乗り、次の離職の引き金になる
  • 社外への見え方:退職者は口コミサイトや知人に会社の印象を残していく

とくに3つ目と4つ目が効いてきます。欠員のしわ寄せは連鎖しますし、口コミは求職者が応募前にたいてい目を通す情報です。離職は採用の難易度そのものを上げるという点で、採用活動と地続きの問題だと考えています。

まず自社の離職率を数字で置く

とはいえ、感覚だけで「うちは辞めやすい」と判断するのは危険です。まず自社の数字を出してください。

もっとも簡単な出し方は、1年間の退職者数を期初の在籍者数で割る形です。これを全社で1本出したうえで、次の切り口で分けてみると輪郭が見えてきます。

  • 部署別:特定の部署だけが突出していないか
  • 勤続年数別:入社1年以内か、3年前後か、それ以上か
  • 役職・年代別:中堅層だけが抜けていないか

ここで特定の部署や層に偏りが出たら、それは会社全体の問題ではなく、その部署の問題です。全社一律の施策を打つ前に、偏りを見つけるほうが先になります。

なお、業界平均との比較は参考程度にとどめてください。業種によって離職率の水準は大きく異なります。新規大卒者の3年以内離職率で見ると、宿泊業・飲食サービス業は55.4%、生活関連サービス業・娯楽業は54.7%に達する一方、業種によってはこれを大きく下回ります(※1)。平均より低いからといって、自社の中堅層が抜けている事実は消えません。

<small>※1 引用:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月24日公表)。産業別の3年以内離職率(大卒)は宿泊業・飲食サービス業55.4%、生活関連サービス業・娯楽業54.7%が上位。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html </small>

人が辞める理由は「不満」ではなく組織の構造にある

離職の原因分析でつまずくのは、表向きの退職理由をそのまま原因として受け取ってしまうところです。

「一身上の都合」の下に何があるか

退職を申し出る人は、円満に辞めたいと考えています。だから理由は当たり障りのない形に整えられます。「家庭の事情で」「やりたいことが見つかって」「体調の面で」。これらが嘘だとは限りませんが、最後の一押しであって、原因そのものではないケースが多くあります。

本当の理由は、辞める何か月も前から溜まっています。そして辞めると決まった人からは、まず出てきません。だから原因分析は、辞めた人へのヒアリングよりも、いま残っている人の状態を見るほうが精度が上がります。

中小企業で起きやすい4つの組織要因

地方の中小企業で繰り返し出てくるのは、次の4つです。

  1. 評価と処遇の不透明さ:何をどう評価されて給与が決まっているのかが説明されていない。金額そのものより、決まり方が分からないことが不信につながる
  2. 直属の上司との関係:会社への不満ではなく、日々関わる一人との関係で辞める。人数の少ない組織ほど、逃げ場がないぶん影響が大きい
  3. 役割と業務量の偏り:できる人に仕事が寄る構造。評価が追いつかないと「割に合わない」という判断になる
  4. 将来像が見えない:この会社で5年後に自分が何をしているか想像できない。とくに20代から30代前半で効いてくる

このうち1・3・4は、社長や管理職の側から見えにくいのが厄介なところです。本人は不満を言わないまま、静かに転職活動を始めます。「突然辞めると言われた」という感覚は、たいてい会社側にだけあります。

早期離職とは、原因の場所が違う

入社1年以内の早期離職は、採用の段階で生まれたギャップと、入社直後の受け入れ体制に原因が集中します。一方、3年目以降に辞める人の理由は、いま挙げた組織側の要因に寄っていきます。

この2つを同じ施策で解こうとすると、どちらにも効きません。入口の設計を直すのか、組織の運用を直すのかを先に決めてください。

離職防止の打ち手を、優先順位で並べる

打ち手には順番があります。費用が小さく効果が早いものから並べると、次のようになります。

1. 辞める前のサインを拾う仕組みをつくる

最優先はここです。制度を作るより先に、話を聞く場を定期的に置くほうが効きます。

大がかりな面談は必要ありません。月に一度、15分でいい。決めておきたいのは3つだけです。

  • 誰が聞くか:直属の上司だけにしない。上司との関係が理由の場合、そこには出てこない
  • 何を聞くか:業務の進捗ではなく、困っていること・変えたいことを聞く場だと最初に宣言する
  • 聞いた後どうするか:出た話のうち何を変え、何は変えられないのかを本人に返す

3つ目が抜けると、逆効果になります。聞くだけ聞いて何も変わらない状態が続くと、「言っても無駄だ」という学習が起きて、次から本音が出てこなくなります。

2. 評価と処遇の「決まり方」を説明する

給与を上げるのは費用がかかりますが、決まり方を説明するのに費用はかかりません。そして不信の多くは、金額そのものではなく決まり方の不透明さから生まれます。

厳密な人事制度を整える必要はありません。「何ができるようになったら、何が変わるのか」を、口頭でいいので本人に伝えるだけでも状況は変わります。中小企業の場合、制度の精緻さより説明の頻度のほうが効きます。

3. 業務量の偏りを可視化する

できる人に仕事が集まるのは自然な流れですが、放置するといちばん辞めてほしくない人から辞めます

誰が何を持っているかを一度書き出して、特定の一人に集中している業務を洗い出してください。そのうえで、任せ方を変えるか、人を増やすか、外に出すかを判断します。ここではじめて採用の話が出てくる、という順番です。

4. キャリアの階段を見せる

「この会社で5年後に何をしているか」が見えないと、人は外を見ます。大企業のような等級制度は要りませんが、先を行く人の実例は示せます。

いま管理職にいる人が、入社時から何を経てそこに至ったのか。その道筋が社内で共有されているだけで、将来像の解像度は上がります。社員に会社への手応えを持ってもらう、いわゆるエンゲージメント向上の取り組みも、この「先が見える状態」を作るところから始まります。

離職防止の取り組みが空回りする典型

一方で、手をつけたのに変わらなかった、というケースにも共通点があります。

制度を作って終わる

面談制度、表彰制度、社内イベント。作った時点で仕事が終わった気になり、運用が形骸化する。制度の有無ではなく、運用の頻度と、そこで出た話が何かに反映されているかが効きます。

全員に同じ施策を打つ

離職率の偏りを見ずに全社一律の施策を打つと、必要のない人には手間が増えるだけになります。中堅層が抜けているのに新人向けの研修を厚くしても、狙ったところには届きません。どの層が抜けているかを特定してから打つのが原則です。

辞めさせないことが目的になる

これがいちばん見落とされます。すべての離職が悪いわけではありません。方向性が合わない人が次の場所へ移るのは、双方にとって健全です。無理に引き止めた結果、本人も周囲も苦しい状態が続くほうが損失は大きくなります。

止めるべきなのは、本来続けられたはずの人が、防げた理由で辞めていくことです。この線引きをしておかないと、離職率という数字だけを追いかけて、施策が引き止めの方向に歪みます。

支援先の静岡県西部で精密板金加工を営む従業員65名ほどの会社では、採用支援のキックオフで過去の退職者を振り返りました。退職者17名のうち29%が1年未満での離職で、1年を超えると一気に定着する。「1年の壁」がはっきり出ていたわけです。

辞めた人と残った人の違いを尋ねると、残っている人は「自分から話せる」「あれをやりたいと自分から言う」タイプでした。逆に「単純に労働だけを純粋に望んでいる人」は、この会社の環境改善活動のやり方と合わずに辞めていく傾向がある、という話も出ています。

離職を1件ずつの事情として見ると打ち手が出ませんが、退職者をまとめて振り返ると、期間と傾向が見えます。 どの時期に集中しているのかが分かれば、手を入れる場所も決まります。

辞める前のサインも、個人の性格ではなく行動の変化として捉えるほうが実務的です。発言が減る、会議で意見を求められても「特にないです」が増える、有給の取り方が変わる、新しい仕事を渡したときの反応が薄くなる。どれか一つなら日常の揺らぎですが、複数が同じ時期に重なったときは、本人の中で天秤が傾き始めていると見るべきです。サインを拾う場としての定期面談は、辞意が固まってから設定する面談とは役割がまったく違います。前者は打ち手が残っている段階の対話で、後者は実質的に条件交渉です。

そして、拾った不満のすべてに応える必要はありません。会社の方向性そのものと合わない不満に処遇で応えると、その場は留まっても、翌年また同じ交渉が始まります。応えるべきは「本来続けられたはずの人の、防げた理由」だけ。この線引きを面談の前に決めておくことが、引き止めの目的化を防ぎます。

離職防止と採用は、一本の線でつながっている

最後に、採用側から見た離職防止の話をします。

辞める理由の一部は、入社前に作られています。求人票と採用サイトで良い面だけを見せて採用すると、入ってから「聞いていた話と違う」というギャップが生まれます。これは受け入れ体制の問題ではなく、伝え方の問題です。

採用の原稿を確認する段階で「ネガティブに読めるところは削りたい」という要望はよく出ます。ただ、良い話だけに整えるほど全体が嘘っぽく見えますし、入社後のギャップを自分で作ることになります。採用のゴールは内定ではなく定着です。だから、大変な部分や苦労した話を残す価値は十分にあります。

もうひとつ。母数が少ないまま採用すると、「この人は少し違うかもしれない」と思っても、他に候補がいないから決めざるを得なくなります。妥協して採った採用は、定着でつまずきやすいというのが実際のところです。その意味で、応募の母数を確保することも離職防止の一部だと言えます。

離職防止に関するよくある質問

Q1. 給与を上げれば離職は減りますか

一定の効果はありますが、費用に対して効きにくい打ち手です。同業他社と比べて明らかに低い場合は是正が必要ですが、そうでなければ、評価と処遇の決まり方を説明するほうが先に効くケースが多くあります。給与への不満として語られる声の中身が、実は「評価されていない感覚」であることは珍しくありません。

Q2. 退職者への面談(退職面談)は意味がありますか

やる価値はありますが、本音が出る前提では設計しないでください。辞めると決めた人は円満に去りたいと考えるので、当たり障りのない理由に整えられます。それよりも、いま在籍している人の状態を定期的に拾うほうが、離職防止としては精度が高くなります。

Q3. 離職率は何%なら問題ですか

一律の基準はありません。業種によって水準が大きく異なるためです。それより、自社の中で部署別・勤続年数別・年代別に分けたときに偏りが出ていないかを見てください。全社の数字が平均並みでも、特定の部署だけが突出していれば、そこが手をつけるべき場所になります。

Q4. 少人数の会社でも、離職防止の取り組みはできますか

できます。むしろ人数が少ないほど、制度を作らずに運用だけで対応できる余地があります。月に一度15分話す時間を取る、評価の決まり方を口頭で伝える、業務の偏りを書き出す。この3つに新たな費用はかかりません。人数の少ない組織ほど一人の離職が痛いので、優先順位としては上がります。

Q5. 早期離職と離職防止は、同じように考えていいですか

分けて考えてください。入社1年以内の早期離職は、採用時のギャップと入社直後の受け入れ体制に原因が集中します。一方、在籍が長い人の離職は、評価・上司との関係・業務量・将来像といった組織側の要因に寄ります。原因の場所が違うので、打つ手も変わります。

穴を塞いでから水を注ぐ会社が、結局いちばん早い

離職防止は、採用の前工程です。辞める理由を構造として特定しないまま募集を増やしても、注いだ水はそのまま抜けていきます。

やることの順番ははっきりしています。まず自社の離職率を部署別・年代別に分けて偏りを見つける。次に、辞める前のサインを拾う場を作る。そのうえで、評価の説明、業務量の偏り、将来像の提示へと進む。給与の見直しは、そこまでやってから検討する打ち手です。

そして、すべての離職を止める必要はありません。止めるべきなのは、本来続けられたはずの人が、防げた理由で辞めていくことだけです。

現実には、これを本業のかたわらで回すのは簡単ではありません。採用担当の多くは専任ではなく本業と兼務していて、募集から応募者対応、面接、入社後のフォローまでを一人で抱えています。定着に手を回す余裕が生まれないまま、また募集をかけることになる。この循環に心当たりがあるなら、抱えている作業を一度棚卸しするところからでも構いません。

まずは御社の離職の偏りがどこにあるのか、そして採用と定着のどちらに人手を割くべきかをうかがったうえで、着手すべき順番からご提案します。

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この記事を書いた人
【保存版】離職防止の打ち手|「辞める理由」の穴を塞ぐ4つの手順 | 選考と定着
たまちゃん

マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。

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