採用広報とは|広報ゼロの中小企業が始める3つの順番と発信ネタの作り方
「採用にも広報が必要だと言われた。ただ、うちには広報担当なんていない」——採用のご相談でこの話になると、たいてい手が止まります。やることの名前は聞こえてくるのに、誰が何をどの頻度でやるのかが決まっていない状態です。
そのまま見よう見まねで始めると、最初の3本は投稿できて、4本目でネタが尽きます。採用広報とは決めた軸に沿って、求職者に向けた発信を届け続ける「運用」のことです。何を発信するかを決める作業ではなく、決まったものを回し続ける実務を指します。だから、始める前に決めるものと順番があります。
この記事でわかること
- 採用広報とは何か(企業の広報活動・採用ブランディングとの違い)
- 始める前に確認すべき順番(露出 → 受け皿 → 発信)
- どのチャネルで発信するかの選び方
- ネタが尽きない発信の作り方と、兼務でも続く運用の型
採用広報とは|あり方の設計ではなく発信の運用
採用広報とは、自社で働くことの実像を求職者へ継続的に届ける活動です。社員インタビュー、仕事紹介、社内の出来事、募集の告知。媒体は問わず、求職者に向けて情報を出し続けること全般を指します。
ポイントは、これが「運用」だということです。何を伝える会社なのかを決めるのは別の工程で、採用広報はその決まったものを形にして届ける側にあります。ここを混同したまま始めると、毎回ゼロから「今月は何を投稿しよう」と考えることになります。
広報活動との違い|相手が変われば中身も変わる
一般に広報活動とは、会社の情報を社会に向けて発信し、認知や信頼をつくる仕事です。相手は顧客、取引先、地域、メディア。伝えるのは新商品や実績、社会的な取り組みといった内容になります。
採用広報は、この相手を求職者一本に絞ったものだと考えてください。求職者が知りたいのは会社の売上でも新商品でもなく、「どんな人が働いていて」「入社したら何をやることになり」「自分でもやっていけそうか」です。この切り替えができていないと、採用向けの発信が会社案内の焼き直しになります。中小企業でよくあるのが、コーポレートサイトのお知らせ欄に採用の話を混ぜてしまう形です。読む相手が違うものを同じ場所に置くと、どちらにも届きにくくなります。
採用ブランディングとの違い|設計と運用
もうひとつ、混同されやすいのが採用ブランディングです。ここははっきり分けておきます。
- 採用ブランディング=あり方の設計。自社は何者で、誰に来てほしくて、何を約束できるのかを決める。一度決めたら数年単位で使い続ける
- 採用広報=発信の運用。決まった軸に沿って、社員インタビューや投稿、記事を継続的に届ける。日々・毎週動き続ける
つまり、採用広報は採用ブランディングの下流にあります。軸があれば、発信は「軸を伝える具体例を出し続ける」作業に変わります。逆に軸がないまま発信だけを始めると、内容が毎回ぶれ、続けるほど何を伝えたい会社なのか分からなくなります。
人事が広報を兼ねるのが、中小企業の現実
大手のように広報部と人事部が分かれている会社は、地方の中小企業ではまれです。実際には総務や人事の担当者、あるいは社長自身が、本業の合間に発信まで抱えることになります。弊社が接してきた企業でも、採用担当者の約9割は専任ではなく本業との兼務でした。
この前提を無視して「毎日投稿しましょう」という一般論を持ち込むと、まず続きません。採用広報の設計でいちばん大事なのは、実は内容そのものより続けられる分量に落とすことだと考えています。この点は後半で扱います。
始める前に確認する順番|露出 → 受け皿 → 発信
採用広報に手をつける前に、確認してほしいことがあります。自社の詰まりが本当に発信不足なのかという点です。
採用の詰まりは、大きく3つに分かれます。
- 露出:そもそも求人が見つけてもらえていない
- 受け皿:見つけてもらえても、確かめる場所(採用サイト)がない
- 発信:見てもらえているが、中身が薄くて選ばれない
このうち、採用広報が効くのは3です。1で詰まっている会社が発信を頑張っても、そもそも誰にも見られません。2が空いている会社が発信を始めても、投稿を見た人の着地先がなく、興味が持続しません。
順番としては、まず求人の露出を確保し、次に受け皿となる採用サイトを整え、そのうえで発信を回す。この並びが崩れると、労力に対して手応えが返ってこない状態になります。
採用広報の手法とチャネル|どこで発信するかの選び方
順番を確認したうえで、次はどこで発信するかです。チャネルは大きく4つに分かれます。全部に手を出す必要はなく、自社が続けられるものを2つまでに絞るのが現実的です。
1. 自社メディア|続けるほど資産になる
いちばん軸になるのが、自社で持つ場所です。採用サイトの社員紹介、仕事紹介、記事コンテンツがここに当たります。
強みは、書いた内容が自社に残ることです。求人広告は掲載している間だけ露出が増える、いわば掛け捨ての保険のようなものですが、自社メディアの記事は積み上がっていきます。検索から見つけてもらえる可能性も出てきます。
弱みは、立ち上がりが遅いことです。書いてすぐ人が来るわけではありません。だからこそ、露出(求人媒体)と組み合わせて考える必要があります。
2. SNS|届く速さと引き換えに、流れて消える
SNSは投稿がすぐ人の目に触れる可能性がある一方、時間とともに流れて消えます。積み上がらないという性質を理解したうえで使うものです。中小企業が使うなら、採用サイトに載せた内容の入口として使うのが無理のない形になります。ゼロからSNS用のネタを考えるのではなく、すでに作ったコンテンツの一部を切り出して流す。これなら追加の手間が小さく済みます。
新卒と中途で見ている場所が違う点にも注意が必要です。新卒はSNSでの情報収集が習慣になっている層が多い一方、中途採用の求職者は求人検索と社名検索が中心になりがちです。広報の相手が中途なら、SNSより採用サイトと求人原稿の中身に手をかけたほうが効きます。
3. 求人媒体の原稿|いちばん読まれている「広報」
見落とされがちですが、求人票や募集要項の文章も採用広報の一部です。むしろ、自社の発信物の中で最も多くの求職者に読まれているのがここです。社員インタビューを何本も作る前に、求人原稿に仕事の中身と一緒に働く人の情報が書かれているかを確認してください。ここが条件の羅列のままだと、その先の発信まで到達する人がそもそも少なくなります。
4. リアルの接点|説明会・見学・パンフレット
説明会での説明、職場見学での案内、配布するパンフレット。これらも求職者に向けた発信です。ここで効いてくるのが一貫性で、説明会で配るパンフレットのデザインが採用サイトとまったく毛色の違うものだと、求職者は違和感を覚えます。手元で受け取る紙と、ネット上で見たサイト。この間でイメージを継承し、段差をなくすのがセオリーです。
発信ネタが尽きない作り方|社内の日常を型に落とす
採用広報が止まる最大の理由は、ネタ切れです。逆に言えば、ネタの出し方を型にしておけば続きます。
ネタは4つの箱に分けて溜める
発信の材料は、次の4つに分類しておくと枯れにくくなります。
- 人:社員一人ひとりの経歴、入社理由、いま担当していること、失敗談
- 仕事:一日の流れ、繁忙期と閑散期、使っている道具や設備、他部署との関わり
- 環境と制度:研修の中身、評価のしくみ、休みの取り方、実際の残業の実態
- 外からの見え方:お客様からの声、取引先との関わり、地域での役割
このうち、いちばん求職者に効くのは「人」と「仕事」です。制度の説明は他社と似通いがちですが、誰がどんな一日を過ごしているかは、その会社にしかない情報になります。
良い話だけに整えると、かえって信用されない
原稿を確認する段階で「ネガティブに読めるところは削りたい」という話は、決まって出てきます。気持ちは分かるのですが、良い話だけに整えるほどサイト全体が嘘っぽく見えます。「みんな最高です」しか書かれていない、やらせ感の漂う記事に……という状態は、求職者にすぐ見抜かれます。それどころか入社後にギャップが生まれ、早期退職につながります。採用のゴールは内定ではなく定着なので、苦労した話や大変な部分を残す価値は十分にあります。
人選も同じです。「一番活躍しているエースを出したい」という要望はよく出ますが、求職者が知りたいのは武勇伝ではなく「自分でもやっていけるか」です。トップ営業ばかりが並ぶと、かえって引かれます。等身大の若手を混ぜるほうが効きます。
兼務で続けるための運用の型
続けるコツは、頻度を上げないことです。次の3つを決めておけば、兼務でも回せます。
- 頻度を先に決めて、そこから逆算する:月1本と決めたら、月1本ぶんのネタしか集めない
- 在庫を持つ:取材や撮影は数人分をまとめて行い、公開だけを分ける。毎月ゼロから動かない
- 使い回す:採用サイトに載せた記事を、SNS、求人原稿の一節、説明会の資料へ展開する
とくに3は効果が大きいところです。ひとつ作ったものを4か所で使えば、実質的な発信量は4倍になります。新しいものを作り続けるより、作ったものを届け切るほうを優先してください。
弊社が支援先と組むときの段取りも、基本はこの型です。取材と撮影は半日にまとめて数人分を行います。細切れに何度も現場へ入ると、そのたびに先方の業務が止まり、協力してくれる社員の側が先に疲れてしまうからです。聞き手を外部に置くのは、社内の人が相手だと「今さらこんなことを聞けない」「上司が読む前提の答えになる」という2つの縛りがかかるためで、外の人間が入るだけで入社の経緯や苦労した話は出やすくなります。頻度は月1本が目安です。それ以上のペースは専任者のいない体制では必ずどこかで止まり、止まった発信は再開のハードルだけが上がっていくからです。
続かない採用広報に共通する落とし穴
最後に、止まってしまう会社に共通するパターンを挙げておきます。
- 軸を決めずに始めた:毎回ネタを一から考えることになり、担当者の負荷が増えて止まる
- 担当と頻度が決まっていない:「手が空いたら書く」は、手が空かないので永遠に書かれない
- 見る指標がない:応募数だけを見ると、立ち上がりの遅い発信は「効果なし」と判断されて打ち切られる
- 全部を自社で抱えた:企画も取材も執筆も撮影も一人で持つと、本業が忙しくなった月に止まる
とくに3つ目は見落とされがちです。発信の効果は、応募数より応募者の質と、面接での話の通じやすさに先に出ます。「うちのことを調べてから来ました」という応募者が増えたら、それは効いている合図だと考えてください。
採用広報に関するよくある質問
Q1. 採用広報は、何から始めればいいですか
まず自社の詰まりが発信不足なのかを確認してください。求人の閲覧数が出ていないなら露出の問題で、発信より先に手をつけるところがあります。発信不足だと判断できたら、社員インタビューを1本作ることから始めるのが現実的です。ゼロから何本も企画するより、1本を最後まで作り切るほうが、その後の型になります。
Q2. 広報担当がいなくても採用広報はできますか
できます。むしろ地方の中小企業では、専任の広報担当がいる前提の進め方のほうが機能しません。頻度を月1本に落とし、取材と撮影をまとめて行い、作ったものを複数の場所で使い回す。この3つを守れば、兼務でも回せる範囲に収まります。
Q3. 採用広報にSNSは欠かせませんか
必須ではありません。判断の分かれ目は、採りたい相手がどこで情報を集めているかです。新卒や若手のアルバイトが対象ならSNSは効きますが、中途採用が中心なら、求人原稿と採用サイトの中身を厚くするほうが先です。続けられないSNSを始めるくらいなら、やらないという判断も十分にあり得ます。
Q4. 費用はどのくらいかかりますか
自社で書くなら金銭的な費用はかかりませんが、その分だけ時間と人手を使います。取材・撮影・執筆を外に出す場合は、本数と内容によって幅が出ます。どこまでを自社で持ち、どこから外に出すかで変わるので、まず現状の体制をうかがったうえでご相談いただくのが早いと思います。
Q5. 効果はどのくらいで出ますか
発信は立ち上がりが遅い施策です。数か月単位で見る前提にしてください。ただし、応募数より先に「応募者が自社のことを理解している」という変化が出ることが多く、面接の質や辞退率のほうに先に現れます。短期で応募数だけを見て打ち切らないことをおすすめします。
採用広報は、軸を決めた会社だけが続けられる
採用広報とは、決めた軸に沿って求職者へ発信を届け続ける運用です。あり方を決める採用ブランディングが上流にあり、その下でチャネルを選び、ネタを型に落とし、続けられる頻度で回す。この順番で組み立てると、途中で止まる理由がかなり減ります。
そして、発信の前に露出と受け皿があります。見つけてもらえていない会社が発信を始めても届かず、着地先がない会社が発信しても興味は続きません。自社がどこで詰まっているのかを見極めることが、実は最初の一手です。
正直なところ、採用活動を最後までやり切ろうとすると、必須となる作業だけでも40以上あります。求人の掲載、応募者への返信、日程調整、面接、内定後のフォロー。本業を抱えながらそこへ発信まで足すのは、簡単なことではありません。
全部を自社で抱える必要はありません。露出と応募者対応を外に出して発信は自社で持つ、あるいは取材と原稿だけを外に出す、といった分け方もできます。まずは御社の体制と、採りたい相手がどこにいるのかをうかがったうえで、続けられる形からご提案します。
この記事を書いた人

たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。