POINT.01
人手不足が今後の日本の課題であり、地方はその影響が大きい
リクルートワークス研究所「未来予測2040」には、2030年に341万人余、2040年に1100万人余の労働供給が不足すると予想されています。
人手不足は日本全体の課題であり、特に地方企業にとっては深刻な影響が懸念されます。
帝国データバンクの調査(2024年1月)でも、正社員の人手不足割合は52.6%と年々上昇。建設、物流、医療など、地方の基幹産業で約7割が人手不足に陥っています。
大手企業の賃上げや、都市部からのテレワーク採用の増加など、地方企業の採用環境は一層厳しさを増しそうです。
実際、東京の某上場企業が、地方からのリモート前提&入社祝金100万といった採用を展開しているため、地方の採用は地元の人材が都市部に奪われていくのも今後ペースが増していきそうな状況です。
出典:リクルートワークス研究所「未来予測2040」
https://www.works-i.com/research/works-report/item/forecast2040.pdf
POINT.02
採用活動はタスクではなく、
経営戦略そのもの
ビジネスにおける需要に対して、人材不足によって、本来得られるはずだった売上や利益を逃してしまう、いわゆる機会損失が増えることが予想されます。
一方で、採用マーケットも年々厳しくなっていくでしょう。
そのため、これからの採用活動は「売上が増えてきたので、人を採用しよう」といった、場当たり的なものではなく、未来を見据えた継続的な取り組みが必要不可欠です。
常に未来を見据え、採用活動はさまざまな形で継続的に実施する必要があり、まさに経営戦略の一つとして考えなければいけない状況になっています。
POINT.03
商圏内で専門職の採用を
増やすことは
自社を強め、
他社を弱める経営戦略
ランチェスター戦略でも、人材の数の重要性が説かれています。
「攻撃力=兵力数2×武器性能(質)」という有名な式がありますが、人材の数は企業成長において大事な観点です。
(むやみやたらと社員数を増やせば良い、という意味ではないことは前提でお話します。)
たとえば専門職が必要なビジネスの場合、自社にどれだけその専門職を集められるかで勝負が決まってくるのは間違いないです。
専門職がいないと成り立たないビジネスであれば、企業成長に専門職は必須となりますので、どれだけ専門スキルを持った人材を採用できているかがポイントになります。
逆に、自社で雇用しているということは、その専門職の人材が他社にいないことを意味するので、自社でどれだけ抱えられるかは重要な経営戦略と言えます。
POINT.04
通勤可能範囲内からしか
採用できない
地方でのビジネスは、「通勤可能範囲内」で、いかに競合他社よりも優秀な人材を多く採用できるかが勝負の分かれ目になります。
そもそも対象となる人が少なく、通勤可能範囲内で対象となる職種の人をどれだけ採用できるかにかかっていると言えます。
逆に、人材を獲得し、地域で突出した企業になると確実に目立ちますので、その後、「仕事(新規受注)」も「人(新規採用)」も集まる状態になります。その意味で、常に採用活動を続けておくことが理想的な状態とも言えます。
転職マーケットは流動的なので、優秀な人が動くタイミングで採用活動をしていないと、他社に入社している事実にすら気づけません。
採用すべき人材とは「自走できて会社の利益を創れる人」ですので、それであれば、会社の売上状況や事業計画とは関係無く、採用しておいた方が得策です。実際に、人材紹介会社は手数料が高く取れる都市部への転職を薦めていますので、ギリギリ通勤可能範囲とも言える近隣の都市部の企業に、地元の人材が奪われていきます。
実際に、新卒から20年間、地元で働いてきた人が、年収が合わないことを理由に、人生で初めて40代中盤から片道1時間以上かけて電車通勤するといった状況が生まれています。
これは、その人においても、地元企業においても、ひいては地元経済においても、良いこととは言えないように感じます。
POINT.05
移住採用は今後、
重要なチャネルになる
2014年に「地方創生」という言葉が生まれて以降、地方移住への関心は高まっています。
国内トップの移住相談機関「ふるさと回帰支援センター」の相談件数は、2023年度で5万9276件。毎年10%以上増加しており、移住への関心の高まりがうかがえます。
地域別で見ると、その町への移住者の数自体は少ないのですが、移住採用を狙う会社も少ないので、意外と移住を伴う採用は成立するものです。
なお、移住採用でよく誤解されることとして、引越し手当や社宅の有無を問われますが、実際にはまったく関係ありません。
それよりも、そもそも移住採用を実施しているか、企業の採用ブランディングが十分にできているかの方が大切です。
その他、国や地方自治体で移住支援金も出していますので、それらもうまく活用することで、移住者にとってもメリットがある移住採用を実現することができます。
POINT.06
新卒採用は通勤可能範囲内を
無視できる最適な採用手法
新卒採用は、毎年多くの若者が地元を離れるタイミングであり、それが東京ではなく地方都市に移住する違いなだけで、「地元を離れる」ことには変わりないため、新卒採用時がもっとも移住採用を狙いやすいタイミングになります。
これだけでも、新卒採用を実施するメリットと言えます。
また地域企業が採用を考える場合、隣県までを採用範囲だと捉え、採用活動をしてしまいますが、実際、隣県から採用すると「通勤する」という選択肢が生まれ、いざ入社したものの通勤が大変だと感じて、早期離職の可能性も高まります。
そのため移住採用の場合、会社の近くに転居し入社するケースが多いため、徒歩圏内で住んでくれる移住採用と片道1時間以上かけて通勤する隣県からの採用を比べると、ある意味、「移住採用の方が距離が近い」という考え方も一つです。
POINT.07
求職者は必ず
自社のWebサイトを見ている
統計データでは、95%以上の求職者がWebサイトを閲覧しているという結果がもう何年前からも出ています。
これは統計に頼らずとも、今の時代、当然の動きであることはご理解いただけるかと思います。応募の判断材料にしたり、面接前の企業研究に活用したり、内定後はご家族にも見せたりと、採用活動に欠かせない存在になっています。
特に必要なのが、「採用専用サイト」です。
自社のコーポレートサイトがあれば十分かと言うと、コーポレートサイトはあくまで見込み客向けにコンテンツが組まれているため、求職者にとって必要な情報がすべて載っているわけではありません。
コーポレートサイトに採用コンテンツを増やし過ぎると、逆に見込み客向けの要素が薄まり、マーケティングの観点からは逆効果のコーポレートサイトが出来上がります。
そのため、Webサイトはターゲット別で分けた方が良いため、採用専用サイトを作り、求職者に対して、必要な採用コンテンツを見せることで、自社の採用力がさらに高まる結果となります。
POINT.08
採用ブランディングの重要性
ビジネスモデルでの差別化が無いのが、地方マーケットの特徴です。
明らかに他社とは異なるビジネスモデルで展開している会社は、地方ではとても少ないのが現状です。
そのためビジネスモデルで差別化できていない中で、選ばれる企業になるには、ブランディングが重要な要素になります。
地方だと、なかなかブランディングの重要性が理解されていない印象がありますが、あまり差が無い中で選ばれるようになることがブランディングですので、採用ブランディングは強化しない理由がありません。
自社は誰に対して、何の強みを出せて、入社後に何を約束できる会社なのか。採用ブランディングの方向性を持った上で、採用活動を実施できているかどうかは、自社の採用力に直結します。
ただし、ブランディングで採用できたとしても、会社に儲かる仕組みがないとすぐに辞めてしまいますので、仕組み創りとの順番が大切です。
POINT.09
「採用」で失敗すると、
「教育」では取り戻せない
採用した人材は、会社の未来を大きく左右します。特に、自社の文化やバリューとのマッチング(カルチャーフィット)を見極めることが重要です。
能力に加え、会社のカルチャーに合う人材かどうかは十分に見極めた上で採用しないとあとから大変なことになりますし、そういった経験をされたことがある経営者の方は多いと思います。
実際、パート採用のときに、少ない応募の中で面接一回で採用する会社もありますが、採用活動においては絶対にしない方が良い採用手法だと考えます。カルチャーフィットしていなかった人を、あとから教育でカバーするのは容易ではありません。
弊社では、パート採用の場合でも100人の応募から3回の面接を経て1人を採用するなど、入念な選考を行っています。
後々のことを考えると、十分な応募数を確保し、採用の基準を妥協しない姿勢が何より大切だと実感しています。
POINT.10
組織は上から構成する鉄則
社内で今後必要なポジションがどこかを考える時に、一番わかりやすい考え方は「経営者が日々やっている仕事が、今必要な採用ポジション」です。組織は上から順に固めていくことが鉄則です。 管理職が十分に機能していない企業は下記の状況になっています。
- 若手が定着しない、育たない。故に、若手の新規採用も進まない。
- 生産性が上がらないので給料が上げられない。故に、新規採用においても年収で負けて、応募すらない。
- 経営者もどこかでプレイヤー業務をやってしまっていて、本来の経営に時間を割けていない。故に、未来の種蒔きができてないので、時代の変化に合わせられない。
経営者の仕事を任せられる人材が不足していると、現場の仕事まで抱え込んでしまい、本来の経営に専念できなくなってしまいます。経営者の仕事を任せられる人材の採用は、未来への一番の投資と言っても過言ではありません。
POINT.11
若手が不足しているので、
若手の採用を強化すると失敗する
若手社員の増員がなかなか進まず、20~30代の空洞化が起きている地方企業は少なくありません。
これまで若手採用を十分にしてこなかったために、年々既存社員は年齢を重ね、気づけば20~30代の社員がとても少なく、空洞化の状態になっている会社です。
この時に多くの企業は、20~30代が不足しているので20~30代を採用したいとなりますが、これではうまくいきません。そもそも空洞化されている状況で入社したいと思えないですし、入社しても同年代が少ないのですぐに離職してしまう可能性があります。
20~30代の若手が不足している理由は、今の管理職が十分に機能していないからです。
若手が付いていこうと思える管理職は必須で、魅力ある管理職がいるのでこの人の下で働きたいと思い、若手も入社し、定着してくれるようになります。
POINT.12
管理職クラスの
転職マーケットは
実は活性化している
ここ10年で、スカウト型の転職サービスが増えました。
以前だと、転職活動=転職を決めて本格的に動き出す、といった状況でしたが、今は、「とりあえずスカウト型の転職サイトに登録だけして、情報収集はしておき、よりよい条件があれば転職しよう」といった、「待ちの転職活動」が増えています。そのため、管理職クラスの人材の登録も多く、以前にも増して、管理職クラスの採用可能性が高まっています。
しかし地方の場合、即戦力人材を考えると、同じ商圏の競合企業となるケースが多く、これが狭い地方マーケットだと社長同士が知り合いといったケースも多いため、自社で直接スカウトする難しさもあるため、地方だと、人材紹介エージェントを経由して、あくまでエージェントが声をかけた状態にすることで、競合他社からの人材採用も狙っていく必要があります。
POINT.13
自社の給与水準に
合わせて年収を提示すると
採用できない
管理職クラスの採用を行う場合、現状の自社の給与水準に合わせて提示年収を考えると、採用できる可能性が一気に下がります。
同水準の年収で提示しても、実際には入社時期による賞与計算タイミングで実際の賞与額が下がったり、入社半年は有給休暇が取れないなどを考慮すると、提示年収が現状と同水準の時点で、実は待遇を下げている形になっています。これでは採用が実現しません。
また、全社員の平均年収を上げたいと考える経営者の方は多いと思います。その目標を実現するために外部から優秀な人を採用するので、今の給与水準に合わせて年収提示をする必要もないです。入社後の期待を込めて、求職者の方が希望する年収を提示して、気持ちよく入社していただいた方が入社後の活躍、会社に対するリターンも大きなものになると考えています。
入社後に活躍するかわからないので、という理由から現状の給与水準に合わせる、もしくはさらに提示年収を下げる企業も多いですが、そういった企業は年収レンジが低いメンバークラスの採用が増えていくか、年収を下げてでも入社したいと思ってくれるなかなか出会えない人の採用を待ち続ける状況になり、事業拡大における機会損失が増えていきます。
POINT.14
そもそも、
なぜ、中途採用を行うのか?
中途採用のメリットは、人材のスキルだけでなく、前職までの他社の仕組みやノウハウを吸収できる点にもあります。
会社ごとでさまざまな経営スタイルがあるので、他社の良い部分を自社に採り入れる考え方も大切です。これがまさに、管理職を外部から採用した方が良い理由になります。
メンバークラスばかり採用しても、なかなか他社のノウハウを採り入れることはできませんし、内部昇格だけで管理職を作ってもノウハウは自社のままです。 優秀な人であるほど、競合企業の中心人物となっているため、義理や人情もあって、なかなか自発的に転職活動をするものではありません。そのため、「待ちのスカウト型転職サイト」には登録していて、直接応募するケースはまず考えづらく、スカウト型転職サイトにアプローチができる人材紹介のエージェントを介した採用が必要になります。
またカルチャーフィットする人材の中途採用ができれば、社風を良い意味で一気に変えてくれますので、既存社員にも好影響を与えてくれます。
POINT.15
人材紹介は
成果報酬型なので、
常に網を張るような採用手法
中途の管理職ポジションの採用は、人材紹介やヘッドハンティングではないと、なかなか採用できません。
人材紹介は求人広告と違って、即効性を求める採用手法ではないため、流動的な転職マーケットにおいて、いつ自社に合う人材が転職を検討するか予想もできないため、常に網を張るような採用手法と言えます。
基本的に、人材紹介サービスは採用できた場合の成果報酬型ですので、依頼するだけなら費用はかかりません。
いつ自社に合った優秀な人材と出会えるかわからないのであるならば、人材紹介会社に依頼だけはしておくことは長期的な採用活動において選択肢に加える価値はあるかと思います。
人材紹介は年収の35%の手数料がかかりますので、その採用費が高いと感じられるケースもあります。
たとえ、1名採用するのに200万円の手数料がかかったとしても、その手数料を1年以内に投資回収できない今のビジネスモデルの方が問題とも捉えられますので、仕組み化と並行して、人材紹介を利用し、長期的に優秀な人材を探し続けることも必要です。
POINT.16
「採用」は
専門スキルが必要な業務
多くの会社で、「採用」業務はバックオフィス部門の方が兼務で担当されているケースが多いです。
また採用活動=求人広告に出す、ハローワークに求人を出す、といった業務だと考えられているケースも多いです。
しかし今の採用マーケットの状況からすると、それだけではまったく採用できない状況であるため、採用業務に求められるスキル自体が高度化しています。
そのため、今の人材不足の状況は、人材不足のまま他の仕事と兼務で進めて行く程度では、なかなか解消できない問題であるため、採用活動自体をアウトソーシングする選択肢も出てきます。
都市部では、RPO(Recruitment Process Outsourcing)と言われる採用アウトソーシングが増えていますが、地方企業においても採用活動自体を外部に委託する選択肢はこれから増えていくと考えています。